
16年ぶりにブロードウェイに帰って来た『A CHORUS LINE』。実は日本初演版から見てる私としては(汗)これを外せるはずもなく、プレビュー公演を見に行ってきました。
NY観光を終えて普通の観劇のつもりでのんびりと劇場に現れた私は、まずお客さんのテンションの高さにまずビックリしたのでした。いつものブロードウェイの劇場と違う! ブロードウェイの劇場って観光客率も高いので、割といい加減な服装の人が多いのですが、スーツ姿の男性やワンピースでオシャレしてる女性とかきちんとした身なりの人が多く、本場の舞台ファンが期待を持って劇場に来ているのを肌で感じました。
開幕してからも、一曲一曲終わるごとの拍手がものすごくて、ショーストップ状態。一番最後のオーディション結果が出るところで驚きの反応がなかったので、多分『コーラスライン』を一度は見たことがあるお客さんが多かったのだと思います(まあ、映画版もありますしね)。名作をブロードウェイに再び迎えるという喜びに満ちた客席でした。
ちなみに、私の後ろの男の人は一緒に歌を口ずさんでいた(^^;ゞ(日本ではたまにいるけど、海外で「口ずさみオヤジ」に会うのは初めてです……)。
私が取れたチケットは前方の下手端。結構見切れもある席でしたが、見てる間中本当にワクワク感がずっと続きました。
内容はというと(私の記憶の範囲ですが)ほぼ改変はないと思います。もしかして冒頭の人数が絞られる前のオーディションシーンの尺がちょっと長い気もしましたが、確信は持てないです(※実は変わってないようです)。衣装はきっちり70年代テイストで、たとえばボビー(ご指摘により名前訂正。シーラと仲が良い男性です)の衣装が体にピッタリしたセーター。振り付け、台詞も大きな変更はなく、初演演出を踏襲する形の舞台になってたと思います。
ニューヨークの劇場でのオーディションという設定なので、「ブロンクス」という台詞が出ればブロンクス在住の人(?)から「イエ~~」と声が上がったりします。「ブロンクスがどこかって? だから、劇場を出て右に行って…」という台詞がリアル感があるのですね、当然。
でも、たとえば、ポールの独白中に「えっ、7歳で42丁目の映画館に行ってたの?」とザックが突っ込みを入れるところを聞くと、時代の変化は如実に感じるのですね。70年代当時は本当に悪場所だった42丁目ですが、今の42丁目は7歳が一人出歩いても平気な感じの健全な娯楽の街になってるので。
「Hello twelve,Hello thirteen,Hello love」のところなどは今見るとちょっと古めかしいというか懐かしいテイストに感じる部分もあります。
だから、今の「ACL」で変わったものは、ブロードウェイとアメリカを取り巻く社会状況。そして、変わらないものは現地のリアル感と、「一人一人が特別な人」というテーマなのだと思います。
日本版しか見てない私としては、東洋人やユダヤ人、黒人、白人と様々な人種が並んでいることにまず驚いてしまうのですが。本当にすべての人が個性的なのですね。「俺にボール回せ」の歌の人が、ファンキーな黒人だったりして、「ああ、なるほどね~」と思ったり。舞台に立ちたいという思い、恐れ、希望などをすべてさらけ出して、舞台に向き合っている様子が一人一人から伺えました。
中でも特に印象的なのは、「私、強いの」のシーラ役の方。見事なスタイルのブラック・ビューティで、オーディションに落ちて去っていくときの思いが残っている様子は忘れがたいです。
今のアメリカの状況だからこそ、(人種の違いを超えて)「一人一人がスペシャルな人」というテーマの舞台を創りたい、という制作側の主張はとても明確。そして、それを受け入れようとするアメリカ人のお客さんの意思があって、これだけの盛り上がりを見せているのだなということを肌で感じました。
オーディションに落ちた人も受かった人もカーテンコールで一列になって踊るところを見ると涙が出ますね、やっぱり。
名作と言われている作品が持つ普遍的な生命力を、今回の『コーラスライン』で改めて感じました。
余談ですが「ダンス10、ルックス3」(見た目が悪くてオーディションに落ちまくる女性が整形したというエピソード)の歌では、男の人がヒューヒュー言って大ウケでした(^^;ゞ。カーテンコールでもその人が出てくるときは男性大騒ぎ(笑)。日本であり得ない反応なので妙におかしかったです。
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