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2017/04/04

劇団水中ランナー『つぎはぎ』

どういう芝居を見たら心を動かされるんだろうか。もちろん決まりはないけれども、一つには、目の前にいる人たちが生きていること。脚本にドラマがあること。あとは自分の好みの作風、とか。初めて見た劇団水中ランナー『つぎはぎ』は非常にストレートに胸に迫ってきた。「笑って、泣かせる」というありがちな惹句の範疇を軽々と超えて、素直に作品が持つドラマに身を委ねて、結末までたどり着くことができた。

ドラマに身を委ねられた、というのは、堀之内良太さんの作・演出の巧みさに因るところが大きい。作品の冒頭に、児童養護施設で一緒に育った人たちが大人になって再び、その施設の建物で一緒に住むようになった顛末を語るシーンがあって、何人もがカットバックのように語っていく構成(運び)のうまさと一人一人のキャラクターが浮かび上がってきたので、「ああ、きっとこの芝居、面白い」と始まって5分くらいで思わされた。


元養護施設での共同生活。どこかいびつな……?と思うと、徐々にその理由が明かされてくる。そして、その話とパラレルに同じセットで、実際に養護施設として使っている人たちの話が差し込まれる。その「?」の部分がだんだん解き明かされていき、最後に「ああ、そういうことか…」というところまで惹きつけられた。
実はいわゆる「泣かせる」系の作品は若干ニガテなのだけれど、堀之内さんの巧みな構成力があったおかげで伝えようとするメッセージに私も手が届いた気がする。
命の証を残したい、次の世代に託す思い、思いを受け継いでいく。タイトルになっている「つぎはぎ」というのは、そんな意味が込められているのかと。

キャストの方たちも繊細な心情の部分まで皆さん、丁寧に演じていて、いいなあと思う。元養護施設に皆を呼び戻す男性(実は難病で命に限りがあった)を演じた高橋卓士さんがリアルに心情を立ち上げて、まだ見ぬ子どもへの思いを吐露する場面に心揺さぶられた。その奥さん役の遠山さやかさんも細やかに演じた。画家役の栗栖裕之さんも独自の存在感があった。

いい舞台だった。水中ランナーの、また別の作品も見てみたいと思う。

最後に余談で。劇団員の方がどなたかも存じ上げないまま見ていたので、芝居が終わってカーテンコールであのうざキャラの「あきら」役の方が主宰の堀之内さんと知って、非常にびっくりした(笑)。

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