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2016/01/17

新しい切り口で見たwits『マクベスThe Tragedy of Mr.&Mrs.Macbeth』

成河さんが旧名の「チョウソンハ」名義で出演するwitsの初公演でシェイクスピアの『マクベス』を演じる。池田有希子さんとの二人芝居で、演出は10年ぶりという西悟志さん。(観劇は1月16日マチネ)

上演時間1時間40分。素舞台、衣装も黒スーツと黒ドレスというシンプルなもの。客席から登場し語り出すのは、漫才スタイルで客席とやり取りしてクイズ(シェイクスピアの生年没年とか、四大悲劇は、とか)や解説など入れながら、マクベスとマクベス夫人(と他バンクォー、マクダフ、マクダフの妻子などいくつかの役を兼ねて)を演じる趣向。
冒頭の漫才スタイルでの(素に近い)トークから、芝居へとふっと一線を越えていく姿に、まずはっとさせられる(←この「落語の枕」的なスタイルは、あやめ十八番の一連の冒頭シーンと通じるものではあるが)。

ダイジェスト的な展開になるか、と思いきや、『マクベス』のドラマが凝縮し、マクベスの生き様がそこにあった。特に終幕。「バーナムの森が動いている~(いわゆる)トゥモロー・スピーチ」がすさまじいほどに真に迫った。

『スポケーンの左手』を見たときも思ったのだけれど、成河さんの舞台を拝見すると、芝居でそこにいるのでなく、「その(役柄の)人物が目の前に立っている」「その人に会っている」という気持ちにさせられる。芝居をしているのでなくて、例えばご飯を食べたり普通の話をしたりする、生きている人物そのものが目の前にいる、と感じさせられる。「リアル」という表現をするのは簡単だけれど、もっと具体的な、生きた人間に会った、とでもいうような感覚。

成河さんのマクベスは、台詞を口で語るのでなく、全身から言葉が出てきているような。

語り口調が「~~じゃん」などの現代語を取り入れているせいもあり(翻訳は松岡和子さん版)、一つの考えにとらわれてしまって心が次第に混迷してしまう人間のあり様に初めて「ああ、人間ってそういうこともあるな……」とシンパシーと切なさを感じたのだった。今までマクベスを何度となく見ているけれど、自分から遠い物語のように感じていたので、自分の身に近い感覚としてとらえられたことは今までなかった。これは、成河さんのマクベスだからこそ、見えてきたものだ。

池田有希子さんも成河さんとは2か月前に会ったばかりというが、やりとりの息も合い、マクベス夫人が王殺害を勧める様子も今まで見たことがない造形だった。
(一つ気になったのは、ダンカン王を演じたとき女性的に演じていたこと。成河さんがマクダフ夫人を演じたときに、男性声のままで女性を演じて違和感はなかった。ダンカン王も無理に男性声にする必要はないけれど、男性として演じた方が効果的だった気がする)

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話が飛ぶが、3年前か、『ロックオペラ ハムレット』公演前に成河さんに取材したときに「これからやってみたいこと」というのを伺った。そのとき
「一人シェイクスピア。シェイクスピアの物語は全体的にみると矛盾があって、矛盾に整合性を取ろうとして作品作りすることが多い。でも、心理を見せる側面とは別に、引いた表現でやれたら面白いのではないか。落語好きとしては、自分なりの落語観とシェイクスピアが合う気がする。だから、シェイクスピアを構成で見せていけたら。シェイクスピアは演じるべき物語でなく、語るべき物語かもしれない」
というようなことをおっしゃっていた。今回の舞台は、西さんの演出ともあいまって、成河さんのシェイクスピアが結実したものでもあったと思う。

そして、この漫才スタイルの『マクベス』が実現できたのも、理屈を通すのでなく、一瞬にしてリアルな人物を舞台上に出現させうる成河さんだからこそ、ともいえる。

漫才スタイルで演じる成河さんのシェイクスピア。今後も続けていって、私の心を揺さぶり続けてほしいと願う。

最後に、もう一つ。気にかかっていること。
作品の冒頭、4幕2場のマクダフ夫人と息子のやりとりから殺害までのシーンを最初に演じ、そこからは1幕~5幕まで演じられていた。この巻き戻るところは構成としてとても効果的だったが、どうしてこういう形にしたのか、私の中では確たる解釈はできていない。(うーん、強いていえば「誓っておいて嘘をつく人は正直な人に吊るされる」→マクベスのこれからたどる運命の予言に当たるとか?)
でも、冒頭から演じないで4幕2場→1幕→2幕……という「構成」にしたところに、今回の上演の肝(?)が隠されている気もする。どこかで機会があったら(あるか?)、ここの解釈をどなたかにお聞きしたい。

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