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2015/08/02

雑感『雑種 晴姿』(あやめ十八番)(付・アフタートークにお邪魔しました)

先月末はあやめ十八番の番外公演『雑種 晴姿』。(22日初日公演と、25日は途中から拝見)25日の主宰堀越涼さんのアフタートークにも登壇させていただいたので、その話もちょっと。

劇場に入ると神棚を模したセットが舞台いっぱいに。オムニバス作品ということだが、全体的には大きい流れがあって、神社の参道にあるお団子屋さんを営む母親と三姉妹(父親は入院中で不在)の一家が過ごす四季折々を軸に、不登校になった三女と男子高校生との淡い恋? や神社の境内にいる占い師や剣道場、近くの喫茶店のマスターの話、などが絡む全15話の連作。

アフタートークに登壇したときに神棚のセット上に上がらせていただいたのだけれど、神棚の中に入るというのは(形式上でも)何か大きいものに守られているという感覚があるなあ、と思う。そういう「神様の氏子」という意識がここにいる人たちの大ざっぱな共通項か。

堀越さんはパンフレットのインタビューでも「変わらない日々を書きたい」という話をされていたけど、変わらない日常に見えてもやっぱりちょっとずつの変化があって。それは、場面緘黙症だった少年時代の自分に向かい合おうとする青年の心の変化だったり、あるいは三女と高校生との恋だったり。大波が襲いかかるのでなくさざなみのような変化であっても 「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」と感じられる、人間の営みがそこにはある。

変わらない日々、といっても(全然作中には出て来ないけど)おばあちゃんとかおじいちゃんとかのからの代替わりがあって今のこの日々があるはずで。変わらぬ日々の中での最大の変化は、やはりそこにいる大事な人の不在、死だと改めて思う。

作中のエピソードに、「マスターが喫茶店を始めたきっかけが、亡くなった奥さんが夢枕に立ったことだった……」というのがあって、初日に片桐はづきさん演じる奥さんが泣いてらしたのを拝見して「夢の中だったら奥さんは泣かないんじゃない?」と思って、終演後に打ち合わせ兼で話をしているときその理由はお聞きしたところ、「僕が泣いてるところが見たかったから、そうして、と演出した」とのことだった。
まあ、確かに、これが夢であったなら奥さんは泣かないで話すだろうけど、もし夢じゃなくて本当に奥さんがあの世から出て来て旦那さんと話してたら、そら泣くよね……とも思う。
非常に大ざっぱに言うと、無神論的に考えれば死=永遠の別れ、だけど、神様の氏子として集う人々たちには生と死の境目さえも曖昧で、亡くなった方とも今もつながり合うことができる。だから、『雑種 晴姿』で描かれている人たちのそれぞれのつながり具合が、愛しい。

もう一つそう感じるのは、入院中のお父さんの存在だ。劇中では出てこないが、芝居の最後の方では仮退院が認められたところまで描かれる。前に『淡仙女』でやはりお団子屋さんの一家の話を取り上げたときのお父さん役は水下きよしさんだった。水下さんとよく一緒に芝居をされていた井上啓子さんがお母さん役を演じているということもあり、頭の中に思い浮かぶ「お父さん」のイメージは水下さんだ。(アフタートークでこの話も伺ったけれど、水下さんお一人をイメージしているのでなく、水下さん含め何人かからインスパイアされてこの人物を作っているとのこと)水下さんは昨年他界されたから、今、直接お会いすることはできないけれど、でも、こういう形ででも存在に触れられるのは不思議でもあり、嬉しいことでもある。


さて、アフタートークで「堀越さんの手がきれい」エピソード(笑)を聞いたけれど、女性を描くにしても男性には珍しい繊細な手つきで扱われているのも特徴的だ。ものの大きさのたとえで「化粧ポーチくらい」……ってなかなか男性は言わないよね(笑)とも思うし。「髪をすく」とか私の日常語にはないのでいちいちハッとするのだけれど、井上さん演じるお母さんを軸として、長女=金子侑加さん、次女=大森茉利子さん、三女=小口ふみかさんのキャラクターが明確で、しかも家族的なつながりが感じられるのがいい。

前回は振付を担当していたミヤタユーヤさんが今回は俳優として登場。場面緘黙症だった自分に向かい合って「(仲間に)入れてー!」と叫ぶシーンが、必死で演じてらっしゃる(であろう)ミヤタさんご自身と重なって感じられる。そういう俳優専門でない方しか出せない色合いを引き出すのが、堀越さんはお上手だなあ、とも思う。熊野善啓さんの愛情深い佇まいと大塚尚吾さんの深みのある演技、岡本篤さんの芝居の集中力など、際立った方々が揃ってらした。以前も書いたと思うけど、堀越さんが描く「男の人のダンディズム」を体現するのが笹木皓太さんはお上手だなあ、と。笹木さんと、金子さんが構成員として加わったことで、また作品の彩りはより色濃いものになるのだろうか。

あ、もう一つ。狐娘とか、夢枕の奥さんとか「この世ならぬ」存在をそう見せる照明も秀逸で、スタッフワーク含めて継続して作品を作っている力は発揮されるなあ、と思った。

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