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2015/02/06

スタジオライフの決定版『夏の夜の夢』

スタジオライフ劇団創立30周年記念公演『夏の夜の夢』を劇団本拠地であるウェストエンドスタジオで観劇しました。
(2月5日ソワレ ダブルキャストのうちのold fashionedバージョン)

劇団で再演を重ねている作品だけれど、ある意味今回が決定版というか、シェイクスピアの『夏の夜の夢』に対する一つの確固たる解答を見た思い。

作品的なこととしては
2006年公演のときのレビュー「新解釈の『夏の夜の夢』」
2011年公演のときのレビュー「恋する女性たちへの賛歌~『夏の夜の夢』『十二夜』」

に書いたものもご参照いただくとして。

今回特徴的なのは、ウェストエンドスタジオの空間の使い方。地下にある四角い劇場空間を斜めに区切って、地上から下りる階段もアクティングエリアにしたこと。その上、4本の天井から足元までつながっているポールを使って、滑り降りたりよじ登ったり(皆さん、上までよじ登れるんですよ! すごい身体能力!)。通常の舞台空間だと上手下手しか登退場口はないけれど、さまざまな方向から登退場できるようにしたことと、足元から上まで本当に立体的に空間を使っていたことに驚かされた。ここまで使えるのは、劇団本拠地だからということもあると思うけれど、この空間の使い方によって、「いろいろ不思議なことが起きる、魔法の森」ということに実感が持てた。この効果はすごいと思いました。


男性の肉体を持って演じるからこそ、女性たちの恋するパワーがよりイキイキと描けているのだということを改めて感じた。昨日の公演はハーミアが松本慎也さんとヘレナが関戸博一さんで、浮気草の魔法で男性たちが心変わりした後に繰り広げるバトルは本当に激しいものだけれど、ただぶつかっているだけではなくて、そこに全身で恋する女たちのまっすぐな心根が表れているのがよく伝わってきた。
(後、ぶつかり合ったとしても、もともとは幼馴染で仲良く育ってきた二人、というのが醸し出されているのもよかった。ここは劇団同期の二人の信頼関係がうまく役に反映してたと思う)

スタジオライフ版で非常に特徴的なのはヒポリタの描き方で、それは上記2006年版のレビューを参照していあだきたいのだが(シーシアスの「害を加えて手に入れた」という台詞から、ヒポリタは征服者である男性と結婚することになる女性である……という解釈)、なかなかの難役であるとも思う。久保優二さんはとてもお美しかったけれど、もう少し、ご自分の足にはめた足かせの重みを実感しながら演じていただけたらよりよろしかったかと。

今回新配役で妖精の女王ティターニアは山崎康一さんが演じる。男性が演じる女性役だからこそのキャンプな役作りに迫力があるだけでなく、ティターニアとしての心情を細かく見せていて、それゆえに妖精王オーベロン石飛幸治さんのティターニアへの愛情もより深くなったように感じた。(なので、ティターニアの魔法が解けた後の二人のデュエットの「Loving you」の歌も非常に感動的)

同じく新配役の笠原浩夫さんのパックも、今までの笠原さんにはない演技で目を惹いた。こういう一面をお持ちだったのか、とちょっと感心する。

なお、この日は妖精役の藤波瞬平さんと八木澤元気さんが体調不良のため休演になり、同じく妖精役の原田洋二郎さんが3人分を一人で演じることに。急なことで大変だったと思うけれど(普段は言っていないせりふとか歌とかもあったわけだし)休演の穴を感じさせない演技で堂々と演じてらしたことも印象に残った。こういうことがすぐにできるのも、劇団のよさかなと思う。(とはいえ、皆さんお体に気をつけて!)

ウェストエンドの身近な空間で、音楽を使うことによってシェイクスピアが描いたものがよりストレートに自分の中に落ちてくる。倉田淳さんの女性としての視点を男性劇団員が体現することで、女性が演じるよりもさらにイキイキと恋する女性の心情が見えてくる。ヒポリタに関する解釈や最後の(いつもは蛇足に感じてしまう……)村人たちの芝居のシーンの密度といい、再演を重ねてさらに洗練されて『夏の夜の夢』の一つの答えを確立されたな、と思った。

会場の狭さもあっておそらく客席はスタジオライフのファンの方が大半かな……と思うのだけれど(もちろん、スタジオライフのファンの方にも見ていただきたいけど)もっといろんな方に広く見ていただきたい、それだけの価値がある舞台かなと思う。

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