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2014/01/26

花組芝居 水下きよしさんの訃報

花組芝居、水下きよしさんが亡くなった。
昨日(日付変わったので一昨日か)、ふと携帯メールの着信に気づいて、水下さんの訃報を知ったときから、心はずっと中空をさまよっている感じがする。

初めて花組芝居を見てから……25年? 長い月日を、寄り添っているという感覚はなくても、でもどこか身近に感じている人であった。

印象に残る舞台といえば、やはり『泉鏡花の夜叉ケ池』。私にとっては水下さんは永遠に『夜叉ケ池』の萩原晃だ。「茨の道はおぶって通る」という潔い男らしさと愛情にあふれる方。

萩原晃は元は伯爵家の出という高貴な身分ながら、お百合さんへの愛のために夜叉ケ池の里の鐘つきになった人。素朴ななりにもどこか気品があり、まっすぐにものが見られる、心根の清い人。何より百合さんを愛する心がとても強くて、「こんな晃さんに守られていたら、百合は幸せ」と思えたのが水下さんの晃だった。

花組芝居5周年記念の写真集の時に水下さんに「やりたい役は?」というような話を伺って「米研ぎがうまい百合かな……(笑)ウソウソ、この次も晃がやりたいね」とおっしゃっていたのがとても印象に残っている。(水下さんはお料理上手なので「米研ぎがうまい」とおっしゃったのだと思う)実際、2009年の『夜叉ケ池』再演のときも水下さんが萩原晃を演じられて、それが見られたのがとても嬉しかった。

もう一つあげるとするならば、昨年のあやめ十八番の『淡仙女』。これが新作公演の出演としては最後になるのだろうか。花組芝居の後輩の堀越涼さんの作・演出公演に出演されていた。概ね堀越さんと同年代の若い世代の出演者に囲まれながら、水下さんの演じる「お父さん」像はやはり、まっすぐで勇ましくて頼りがいがあって。どこか印象は萩原晃に重なっている気もするのだけれど、水下さんのたくましさ、たとえようもない大きさは無類だった。言い方が悪いかもしれないけど、若い世代の人たちの中にいても水下さんの真摯さは決して変わることがない……そんなことを思った。

最後にお会いしたのは、コレドでの『うぶな雲は空で迷う』のとき。MONOの土田英生さんの作品を上演するというユニットMONO-zukiを水下さんが立ち上げて演出なさった第1回公演だった。

いつもすごく近くにいたわけではないけれど、常に水下さんの大きさが私の目の中にあった。

立派な体躯からおおらかな人という印象もあるけれど、実はとても細やかなお心配りがある方で。たとえばロビーで初日乾杯とか終演後懇親会などがある公演のとき、水下さんは必ず出席されている方全員のところに自分から回って、乾杯をしていらした。シャイで自分から前に出ていけないお客様のことまで、一人ひとり心配りができる方なのだ。

そういえば、大浦みずきさんが亡くなった後(水下さんは大浦さんと『リトル・ミー』で共演している)、水下さんと「悲しいですよね、まさかこのお年(53歳)で亡くなるなんて……」という話をしたことを覚えている。ナツメさん(大浦)が亡くなってからわずか4年、その水下さんが……。


ダメだ。言葉にならない。文筆業なのに……。水下さんについて伝えたいことはもっともっといっぱいあるのに。

水下さん、今まで本当にありがとうございました。

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