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2013/08/29

ニューヨークで一番感動したのはPIPPIN祖母の代役Tovah Feldshuhさん

16日~25日までニューヨークに行ってきました。自分の備忘録を兼ねてツイッター(https://twitter.com/theresonlyhere)では簡単な感想を早めにアップしましたが、ブログにも。

滞在中は10本を観劇。最終的には9作品10本ということで、唯一リピートして見たのが『PIPPIN』です。

PIPPIN王子の彷徨の物語を、サーカス小屋の劇中劇スタイルで見せる作品。華やかなサーカス技をミュージカル俳優さんたちが挑戦するのが見ものであり、その華やかな輝きの後に見せる、すべての虚飾をはぎとるような静けさ。そして、それでもマジックは続く……という終わり方。まさに「一夜の夢」というにふさわしい舞台でした。

今年のトニー主演女優賞を取ったPatina Millerさんがとても魅力的。このLeading Playerという役は狂言回し的な役で、もともとは男性がやっていた役だそうです。Patinaさんはマニッシュなスタイルで、しかも空中ブランコ技などを軽々とこなしながらとても表現力豊かに見せてくれました。日本だったら宝塚の男役だった方がやったらいいんでないかと(笑)いうようなカッコよさです。体型がアスリートのようになっていましたが、前作のSister Act(天使にラブソングを)のときから肉体改造をされたようです。

しかし、一番心に残ったのは、PippinのおばあさんBerthe役の方。本来は今年のトニー賞助演女優賞を取ったAndrea Martinさんが演じている役なのですが、私の滞在時期はAndreaさんの夏休み時期に当たり、Tovah Feldshuhさんが代役でした。

劇場に入って代役の紙を見つけてがっかりしたのは正直なところ。でも、実際のTovahさんの演技を見て気持ちが変わりました。Tovahさんは本当に役を演じることを楽しんで、役に生きることを楽しんでいることが伝わってきたので。
実際、Bertheという役はPippinに人生の楽しさを教える役どころでもあるのですが。

しかも、今回の演出ではBertheのソロシーンは命綱なしの空中ブランコを演じて、支え手になる男性はいるものの、逆さ吊りになるほどの難易度が高い技に挑戦しているのです。

Tovahさんは今までトニー賞に4回ノミネートされたほどのベテランで、失礼だけど年齢を調べたら60歳。鍛え上げた肉体というよりもどちらかというとぽっちゃりした体型をしてらっしゃる方。

空中ブランコの技を体得するまでには相当な日数がかかるはず。それも、命綱なしの演技なので、万一事故があったら生死にかかわることになります。さらには代役の出演日数がわずか9日間と決まっていて。もし自分だったら、これにチャレンジしようという勇気が持てるだろうか……と思うと、本当にTovahさんのすごさを感じました。

実際に見たTovahさんはそんな大変さを微塵も感じさせないで、とてもチャーミングに余裕しゃくしゃくで「見て! 私を!!」というオーラを前面に放ってお客様を楽しませることを最優先させていた。空中ブランコ技をしながらでも、歌の音程はまったくブレない。

実際、2回目に見たときはTovahさんの場面が終わった後はショーの途中なのにスタンディングオベーションがかかり、まさに「ショーストップ」状態になりました。(Tovahさん自身も「今日もお客様は最高ね! でも芝居を続けさせて」と言ってましたが(笑)) 私も長年舞台を見てますが、こんなのは初めて。

日本でもアクロバティック的な動きが入る舞台はかなりあります。でも、アクロバティックな技をしている一生懸命さを見せているものが大半な気がするのです。ブロードウェイでは、一生懸命さを見せるんではなく、演じている人の「芸」を見せるものなんですね。歌舞伎の世界に通じるような芸のあり方を改めて感じた、今回のブロードウェイ観劇旅行でした。

ちなみにAndreaさんは昨日からBerthe役に復帰されたとか。まさにShow must go onですね。

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2013/08/09

キリキリした切迫感と希望~american IDIOT(アメリカン・イディオット)来日公演を観劇しました

アメリカン・イディオットamerican IDIOT来日公演を観劇しました。
ニューヨークで見た大好きな作品で、ニューヨークでは3度観劇して今日で4度目(今日終演後のトークショーに出た柿澤勇人さんも「大好きで、ニューヨークで3度見て、今日で4度目」と言っていたから、同じ(笑))。

GREEN DAYのコンセプトアルバム「AMERICAN IDIOT」と「21世紀のブレイクダウン」の曲を使った、90分のショー仕立ての作品。

作品としての感想はブロードウェイで見たときのものと基本的には一緒なので、そちらを見ていただくとして→(AMERICAN IDIOT (ニューヨーク)
それ以外のところで。

ブロードウェイ版のオリジナルキャストは春のめざめSpring Awakeningでトニー賞を受賞したJohn Gallagher Jrや今年のトニー賞を総なめしたKinky Bootsで主演しているStark Sands、めちゃくちゃインパクトがあったTony Vincent(We will rock you主演)などが出演していた超強力布陣だっただけに、来日キャストはやや小粒感があるのは否めない。だけど、その分、閉塞した田舎を出ていこうとする3人のアメリカのバカ者たち(american idiot)の心の旅や葛藤がよりリアルに伝わってきた気がします。柿澤さんもトークショーで「今日4回目を見て、なんだか偉そうな言い方ですが、作品って進化するんだなと思った」とおっしゃってたけど、若者の生きる姿が浮き彫りになっていたのが、今回の来日公演の特徴かな。
とくにブロードウェイ版ではやや影に隠れていた感があるWill(恋人の妊娠で町を出られない人)の苦悩が、この公演ではダイレクトに伝わってきました。St.JimmyーとJohnnieの重なり具合も、ブロードウェイ公演よりもわかりやすいものになっていたと思う。

このミュージカルから伝わってくるのはどうしようもない焦燥感や切迫感、なんだけどそれが決して辛いだけに終わらないのは(ブロードウェイ版の感想でも書いたけど)マイケル・メイヤーのあたたかい視点があるからだということを、改めて強く感じました。アメリカのバカ者だちの話だけど、決してメイヤーはバカにしていないというか。田舎町を出ていって挫折する三人の若者たちの姿を見ながら、それでもラストに残るものが希望である気がします。

普段観劇するときって(仕事柄か)、「あまり作品に励まされた、勇気づけられた」という感じ方はしないのです。でも、彼らの軌跡を追っていって、最後のカーテンコールで出演者全員がギターを弾きながら歌う「Good Riddance (Time of Your Life) 」の曲を聴いて、Japanese Idiot(日本のバカ者)である私としては(笑)すごく元気をもらえた気がします。
ちなみに、Good RiddanceはGreen Day5枚目のアルバム、"ニムロッド"に収録している曲。


それにしても、ミュージカルの場面の表現として、本当にかっこいいところが多いなあ。「HOLIDAY」の曲で大きな櫓がこちら向きに倒れかかって、それがバスに見立てられるところ、疾走感とか振りとか表現とか、たまらなく好きです。「若者の衝動」「パワー」をナマな形で舞台に上げるのでなく、ちゃんとして作品として昇華してカッコよく仕立てているところが、AMERICAN IDIOTの大きな魅力ですね。マイケル・メイヤーら大人の作り手がいて、ちゃんと若い世代と向き合って、共感のもとに作っている。出演者と作り手側がとても素晴らしい関係性を作った成果がこの作品なんでしょうね。
などということも、観劇しながら感じました。

そう、それからブロードウェイ版の装置・美術は完全再現されてます! モニターを使った多角的な表現だけでも十分に見る価値があると思いますよ。
 
公演は18日まで。

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