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2013/07/01

西瓜糖「鉄瓶」観劇しました

文学座の松本祐子さん奥山美代子さん山像かおりさんによるユニット西瓜糖の公演『鉄瓶』を観劇しました(29日ソワレ)。

……と言っても、心の中では、鉄瓶の中のお湯がブクブクブクブク音を立てて沸騰しているような感じなのに、そのお湯をどこかに注ぐことができないような解放しきれない思いがあって。心の中でこれほど反芻して考えてしまう芝居は久しぶりです。というわけで、レビューとかじゃなく断片的な感想。

戦時中の防空壕から話は始まる。防空壕の中でジャズのレコードを聴く兄・清(加納幸和さん)と弟・勇(寺十吾さん)と弟の妻・雪絵(奥山美代子さん)。そこに空襲警報が。というところで舞台は暗転。戦後に変わる。清と雪絵は勇が空襲で亡くなったと思い、結婚。そこに勇が生きて帰ってきたところから話が始まる。

戦時中の防空壕から戦後の清の家への鮮やかな転換! 戦争が終わったのだということ、しかも非常に短期間に価値観も何もかも変わってしまったのだということを象徴するような転換の素早さがまず見事。

戦争が悪い、と言ってしまえばそれだけだけれど、あるいは平時は人間の心の奥に隠しているものを、戦争が露わにしただけ、とも思えて、なんとも切なく、身に迫って来る。
というのも、そこに登場する人物が非常にリアルに気持ちを描きだしているからでしょうね。
ボロボロで帰ってきた勇が頑なに体を洗おうとしないのは、昔の自分を持ち続けていたいから、そうしているのか…とか。
あるいは、清の引っ越し先の田舎に住む安島トシ(村中玲子さん)の悪気なく喋っている中にゆらめいて見える、「自分が優位」という感情とか。そして、閉塞した田舎でも米兵が訪れて価値観が変わっていき、清の兄・進(佐々木勝彦さん)が連れてきた映画俳優にトシが恋してタガが外れていく様子の浮き足立ち方とか……。

話が後半に進むにつれて、高校教師だった清が戦時中にしてきたことが暴かれるという顛末になるけれど、それにしてもある意味、生きていくためには仕方がなかったのだろうし。でもその結果を思うと……と考えると、自分の心の中がめっちゃモヤモヤしてしまうわけです。

多分、自分でも矛盾に気づき割り切れない思いを抱えながら、それを押し込めようとする清がとてもリアルで、悲しい。彼にシンパシーを持てるのは、清が持っている雪絵に対する思いだけは嘘でないと思えるからなのかな。この複雑さを描き出せたのも、加納さんだから、と思う。

雪絵役の奥山美代子さんは心が空疎になってしまっている様子がとてもリアル。なんだろう、ガラスに爪を立ててる音が聞こえてきそうな感じ? それだけに、最後の激しい感情の発露が胸に迫って来る。進が連れてきた女優役の山像かおりさんの色鮮やかさ、そしてたくましさもとても印象的です。

そうそう、劇中に出てくる女性たちの衣裳、着物を洋服に仕立て直したという設定なのですが、どれもモダンレトロで可愛かった! ワンピースもそうだけど、トシが最初に着替えて出てくるところのスカートとか可愛くて、着てみたいと思いました(笑)。このあたりのセンスも、女性によるユニットらしいところ。

余談ですが。
終演後、少し山像さん(=作者の秋之桜子さん)とお話しする時間があって。お互いよくニューヨークに観劇に行くという話になって、山像さんが「Spring Awakeningが好きで、Spring Awakeningの曲を聴きながら『鉄瓶』の脚本を書いた」と伺い、非常に盛り上がりました(笑)。私が大好きなSpring Awakening(春のめざめ)!(2007年に観劇したときの興奮のまま飛ばして書いたのがコチラ) 私の中ではSpring Awakeningが好きな人同士というだけで仲間というか(笑)、心から分かり合えそうな気がするんです。あの作品も社会の束縛を受けながら、心の中でまさに鉄瓶のお湯のようにふつふつとわき上がるものを持っている若者たちの話だから。というわけで、帰り道は私もSpring Awakeningの曲を聞きながら帰りました。

公演は2日までですが、全席完売とのこと。当日券が出るかどうかは、西瓜糖さんまでお問い合わせ下さい。

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