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2013/06/01

今も変わらずリアル!~ブロードウェイミュージカル『HAIR(ヘアー)』

ブロードウェイミュージカル『HAIR』(ヘアー)来日公演初日を観劇しました。

1967年のベトナム戦争とヒッピームーブメントに揺れる時代をリアルタイムで描いたのが『HAIR』。改めて、これがリアルタイムで作られたということに驚きがありました。(日本で言えば『飛龍伝』か?)でも、それを懐古趣味で描くのでなく、今の自分たちの問題としてつきつめて作ったものが今回の『HAIR』だと思います。

今回のHAIR上演の流れとしては、セントラルパークの夏の無料公演(←私は、NY旅行中朝早くから並んだのに、チケット取れなくて見られなったという思い出が(苦笑))、そして、ブロードウェイに移っての劇場公演にという過程。劇場版は見ることができましたが、たまたま私が見たときが出演者全員が代役さんという非常にレアな公演で。でも、それこそ宝塚の新人公演のような「1回限りのチャンスにかける」という熱い思いが舞台から伝わってきたのを思い出します。
今回の日本公演もそのときと同じように、出演者たちの熱い思いがひしひしと伝わってくる公演でした。

客席を巻き込んで盛り上げるのが多い公演なので、翻訳上演はどうかな…と思いましたが、冒頭、リーダー格のバーガーが日本語を交えながら(フライング・ゲットとかね(笑))チャーミングに盛り上げ、その後も客席通路を多く使って、上手に客席の心を盛りたてていっていたと思います。ブロードウェイの劇場よりはずっと大きいシアターオーブも、舞台と客席がうまく一体化していたのではないかと。

出演者たちにとってはベトナム戦争とかヒッピーとか、決してリアルタイムのものではないはず。でも、それをちゃんと自分たちの実感に落とし込んでいるのがよく伝わってきて。特に終幕、徴兵されて悩んでいたクロードの結末が現れるあたりの登場人物たちにたぎる思いの強さに圧倒されました。アメリカで上演されている作品を見てよく思うのですが、「戦争」というものに対する感じ方が「現実」なんですよね。「アメリカン・イディオット」を見たときも、戦争シーンが作りごとじゃないリアルさがあって、日本で演じられている舞台の戦争シーンとはまったく違うところに息をのみました。身近なところに(たとえば自分の家族やら、お友達のお兄さんが兵士だとかで)戦争がある人たちの受け止め方は、ある意味戦争などの問題をリアルでは受け止めきれない日本人の私たちとは違うな……と。(それがいいか悪いかは別問題として)

というシリアスな側面と、もう一つはショーとしての楽しさと。当時の息吹を十分に伝えるショー的表現の楽しさもあって、そのシリアスとエンターテインメントと両方をつかめているところが、HAIRなんだなと改めて思います。
特にカーテンコールは、ブロードウェイの時と同様に、舞台にも大勢お客様が上がって全員で盛り上がるという。一体感のあるラストが心地よい興奮を残します。

結構きわどい台詞もたくさん出てくるのですが、それを翻訳字幕にもちゃんと入れていたこと、そして1幕最後の「BE IN」のシーンで全員がベトナム戦争、徴兵制に反対するという意味で全裸になるシーンがあるのですが、「日本ではどうかな、やるかな」と思っていたのですが(アメリカでも、州の法律によって全裸にはなれないところもあったとのこと)、それも(ブロードウェイ上演時よりは照明を暗くしてはいたものの)きちんと全裸になってくれたこと。これは、ただの下世話な意味でなく、ベトナム戦争への抗議の思い、そして、自分たちが持っている虚飾をすべて脱ぎ捨てたいという内面の欲求(がヒッピームーブメントにつながるのだと思う)が全裸になることによって具体的に表されている大事なところだと思うので、そこをちゃんと表現してくれたこともよかったと思います。日本での上演の主催はキョードー東京ですが、作品をきちんと取り上げる姿勢は高く評価したいです。(さすが、ビートルズを呼んだ会社というか(笑))

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