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2013/05/26

シェイクスピア劇の新たな発見~座・高円寺『リア』

舞台上に広がるのは荒涼とした荒野。リア王は娘・コーディリアをなくし、悲しみの内に彷徨する……。

座・高円寺で上演中の『リア』は、シェイクスピアの『リア王』を渡辺美佐子さん(リア)、植本潤さん(男)、田中壮太郎さん(道化)の3人で、90分で演じるというもの。といっても、ダイジェスト上演ではなく、原作のテキストを再構成して見せるというものだ。
構成・演出の佐藤信さん(と、構成協力の生田萬さん)が新たに紡ぐ言葉から、何度も見ている『リア王』から新たに心に響く言葉が生まれてくる。たとえば、(引用不正確ですが)実際には必要がないものを持っていることで、人間は人間らしく心豊かにいられる……ということ。今まで通りすぎていた台詞にも、新たな実感がこもった。

そして、今回観劇していて胸に深く突き刺さったのが、リアの「まだ、希望がある」(これも引用不正確)という台詞。今まで、『リア王』からは救いのなさ、やりきれなさ、切なさばかりを感じていたけれど、渡辺美佐子さんのリア王の口から「希望」という言葉があふれたとたん、何か納得できるものを感じて。
それは、リア王の役柄設定と同じ80歳でいらっしゃる渡辺さんが、そのお年にしてもなお初のリア王役、初の男性役という新たな挑戦をなさる姿に「希望」という言葉が重なって感じられたのだろうか。
人は皆、老いて死に向かっていく。人生における選択は必ずしも正しいものばかりではなくて、後悔することも多々ある。でも、人生の荒野の中でもわずかな「希望」といえるものがあれば……と、初めてリア王の姿に一筋の光を感じたのだった。

そして、「男」の植本潤さん。役名上は「男」だが、リア王に関わる人たち、娘のゴネリル、リーガン、コーディリア、そして男性のギリシャ学者など複数の役を演じる。この「男」という役を演じられる人を私は他に知らない。逆に言うと、この三人で演じる『リア』を成立させていたのは、植本さんなのだと思う。演じ「分ける」というレベルでなく、リア王との相対的な関係を含みながらそれぞれの人物になるということ。男性の植本さんが一人で三姉妹を演じることによって、私は初めて自分の中にゴネリルもリーガンもコーディリアも存在していることに気づくのだ。

(なお、植本さんは前のブログで書いた、アキレス腱断裂後の初めての舞台。見事にご復帰なさって、お怪我の影響を感じさせない舞台姿にホッとしました)

観劇は5月25日。公演は26日までだが、早くも来年の再演が決定しているとのこと。

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