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2012/12/01

25周年の集大成、でもアグレッシブ! 花組芝居「菅原伝授手習鑑」

花組芝居創立25周年記念公演。ということで集大成として手堅く…ということはまったくなくて、どこまでもアグレッシブにチャレンジを続けるのが花組芝居らしいところ。

記念公演の演目は「菅原伝授手習鑑」。歌舞伎で上演される場合は「車引」「寺子屋」を見取りで、ということが多いけれど、花組版は全段通しで。しかも、たとえば「寺子屋」だったらよく省略されてしまう「寺入り」もカットしないで全部やって、なおかつ2時間40分(休憩時間を除く)というスピーディさ。

脚本はおもだかやさんで脚本・演出を担当されている石川耕士さんの書き下ろし。初日に石川さんにご挨拶させていただいたが、「花組の公演用だからといって意識して何か変えている部分はなくて、歌舞伎のときの台本と同じように書いた」とのこと。「でも、歌舞伎でこの台本をやったら、きっと昼の部夜の部通しになってしまうんでしょうけどね」と微笑まれていました(笑)。
ちなみに、私も台本を読ませていただきましたが「細マッチョ」も石川さんが書いてらした! 意外!(笑)

11月23日の初日と29日マチネを見せていただきました。
話の展開に圧倒され翻弄されながらも、最後に菅丞相の物語に収束していくところに、ストンと落ちるものがあった1回目の観劇。
2回目は斉世親王と苅屋姫の恋を発端に、多くの人が悲劇の波に引きずり込まれていく切なさが非常に際立って感じられました。

しかも、ただの「悲しい物語」一辺倒ではなくて、「程がよい」というか途中途中で様々なギャグとか仕掛けがあって感想が一色にならないのが、花組芝居らしいところかなと思います。

美術では、ファンの方々から贈られたちょうちんが舞台プロセニアムを飾り、装置の多くは「紙」(を模したもの)のイメージで作られているのが面白いです。「車引」の車はロールスロイス! 衣装は、20周年の「KANADEHON忠臣蔵」では大歌舞伎の衣装をそのまま使っていたのが、今回は和装ながら独自のデザインで。音楽も歌舞伎なら義太夫を使うところを洋楽で……と。一見するといわゆる「歌舞伎」に見えると思うのですが、そこからさらに飛躍して発展させて描いているのが今回の舞台です。

若手対ベテラン組と配役もまさに適材適所。
松王丸の小林大介さん、梅王丸の丸川敬之さん、桜丸の美斉津恵友さんと、三つ子を若手の同年代キャストで組んだのが非常に効果的。彼らが会うときの挨拶が「ウィーッス」だったりして(笑)、そこにふと現代感覚が出るところが、とてもいいのです。小林さんの松王、寺子屋のシーンが実に大きさがあってよかったですね。梅王の丸川さんも「三つ子の真ん中」キャラが似合ってる。桜丸の美斉津さん、二枚目ぶりが水際立っていて素敵でした。希世(または、スーパーマレヨ(笑))の谷山知宏さんもキャラが際立っていて、若手といわれる方たちがしっかり育っているのも25年の道のりの証かと思います。

藤原時平の水下きよしさんの「絶対悪」な感覚、覚寿の山下禎啓さん、白太夫の原川浩明さん、そして源蔵の北沢洋さんは非常に確か。年代的には若い組に入るのに、なぜかベテランの風情で(笑)芝居をしっかり支えている、輝国の秋葉陽司さん。

そして、桂憲一さんの菅丞相。流刑となり、流されて最後は……という、まさにサブタイトルの「天神さまの来た道」のとおり、彼の孤独の深まる様を克明に描きだします。

女形が出てくることが花組芝居の大きな特色。歌舞伎の女形はある意味で(男性に対する女性、という意味で)相対的な色合いが強い役柄が多い気がするけど、花組芝居の女形さんはそれよりもも一つ踏み込んだ、生きる姿が現れているな、というのが今回改めて感じたこと。鮮やかな印象を残す苅屋姫の加納幸和さんはいわずもがな、寺子屋での緊密なドラマ性を高めた千代の八代進一さんと戸浪の堀越涼さん。桜丸の妻八重の二瓶拓也さんは現代性がありつつも愛らしく、桜丸に可憐に寄り添っている姿が印象的。

続く30周年、35周年、40周年……と花組芝居のますますのご発展に期待。
パンフレットでは、市川猿之助さん、加納幸和さん、植本潤さんの鼎談の原稿を担当させていただきました。素晴らしい機会をいただけたことに感謝です。


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