« 2012年8月 | トップページ | 2012年10月 »

2012/09/19

スタジオライフ『PHANTOM』製作発表会見レポートがomoshiiに掲載になりました!

『オペラ座の怪人』の知られざる過去を描く、スーザン・ケイの小説をスタジオライフが日本初舞台化。
2011年6月に『PHANTOM THE UNTOLD STORY 語られざりし物語』として物語の前半部分を上演、絶賛を博しました。

それに続き、物語の後半部分を描く2012年10月に『PHANTOM 語られざりし物語~The Kiss of Christine~』が上演されます。

先日行われた製作発表会見のレポートを担当したものが、omoshiiにて掲載になりましたので、よかったらご覧下さいませ。

演劇&エンタメ系webマガジンomoshii

ちなみに質疑応答の質問は私から(笑)。
既に稽古も始まっているとあって皆さん語りたいことがたくさんあるようで、会見時間もオーバーしてしまうほどの熱意のこもった会見でした。公演も楽しみです!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/09/18

2012年7月NYで見た舞台その2~ONCE,NEWSIES,EVITA,RENT

2012年7月、NYで見た舞台、続きです。

『ONCE(ワンス)』
今年のトニー賞受賞作品。これは串田和美さんテイストというか、始まる前から役者が舞台に出て生演奏をしていたり、幕間には舞台上で役者さんたちが飲み物売ったり(前、串田さんの舞台でもありましたよね)、というオンブロードウェイらしからぬ演出がウリの舞台。装置の転換も全部役者さんがして、テンポよく話は進んでいて、演出的にはとても面白いなと思うのですが、肝心のストーリー部分はあまり私の好みではなかったかも……。主演のSTEVE KAZEEはトニー賞受賞のスピーチがとても感動的で印象に残ってますが、たまたま彼の楽屋出に遭遇したらファンの人への対応もとても素晴らしかったので、さらに好印象に(笑)。

『NEWSIES(ニュージーズ)』
今は『MORMON』を除く人気作品は『ONCE』『NEWSIES』のようで、席も満席でした。新聞少年たちが新聞社の横暴に対抗するためにストライキを起こすという、いかにもディズニー映画原作らしいまっとうなストーリー。イケメン多数が踊りまくる「男祭り」という評判でしたが(笑)、跳躍と回転が多く(まさに宣伝ビジュアルと同じポーズで跳んでるダンス)、ダンスというよりは体操寄りかな~。でも、アメリカ人の観客には大受けで、1幕の大ダンスナンバーのショーストップはすごかったです。というわけで、作品としてはそんなに惹かれなかったんですが、主役のジェレミー・ジョーダンJEREMY JORDANが非常に魅力的でした。線が太くてちょっと野性的で、意志が強そうでやんちゃな感じがする彼が演じているからこそ、あまりにまっとうなストーリーがちゃんと生きたものになった気がします。(これが優等生タイプの人が主役だったら、見てられなかったかも…)JEREMYは『BONNIE & CLYDE』のクライド役だったんですよね。日本版の田代万里生さんとは正反対といっていいタイプなので、彼がどうCLYDEを演じていたかが気になりました(もう終わっちゃってるから、確認しようもありませんが)。

『EVITA(エビータ)』
リッキー・マーティンのチェがカッコ良かった!(笑) 存在感があり、セクシーで素敵でしたね。ただ、主役のエビータ役ELENA ROGERは個人的には苦手なタイプで……すみません。お好きな方もいらっしゃると思いますが、シャンソンのように、歌を台詞にして語るような歌い方をされるのが私は苦手だったのです…。

『RENT(レント)』
ONからOFF BROADWAYに移って再上演になったRENT。残念ながら私の観劇後、9月にクローズしてしまいました。到着日に見たのと、その後にLOTTERYに挑戦して1番前で見たのと2回観劇。
1回目は、実は自分の中で新演出版をうまく受け止められなくて……。映像を使い、立体的な装置という「現代化」で今の人たちにも見やすくしようというのが演出意図でしょうか? おそらく、JONATHAN LARSONがOFFのプレビュー初日に亡くなってしまったために演出が未整理のままで上演されていたものがあって、今回はそれをいろいろ整理して具体的に見せているのだな、と思います。ただ、逆に未整理だからよかったのか? と思うところもあって、ちょっとフクザツでした…。(私は、ロジャーって「ONE SONG GLORY」を歌うときに、台の上に登って手を広げて「GLORY~~!」と歌う人じゃない気がするんですけどね……)

しかし、何か自分の中で受け止めきれなかったことに納得いかず、もう1度見ることを決めて。2度目に見たときは、1番前でパフォーマーの熱を肌で感じられたせいもあってか、そして、感動屋さん?のロジャー役のANTHONY FEDOROV(この方、「ヨセフ・アンド・ザ・アメイジング・テクニカラー・ドリームコート」来日公演の主演の方だったんですね。私はちょうど東日本大震災で公演中止になった日程のチケットを取っていたため、見られなかったんですが)のこぼれおちる涙を見て心動かされ(私の隣の席の男性ももらい泣き)、客席の反応もよかったので、「ああ、RENTはやっぱりいいな」と思って納得して帰ることができました。
冷静に考えると、MARK役の方の演技がイマイチだったのも1回目にすっきりした印象を持てなかった原因の一つだったかもしれません。(「ME? I'M HERE …NOWHERE」の台詞が流れちゃうんだもの。1回目に見たときなんて、私はこの台詞聞き逃してしまった。役どころの重要なポイントを逃してた気がするのです、この方)


******
というわけで、2010年『AMERICAN IDIOT』、2007年『SPRING AWAKENING』、2007年のANTHONY RAPP、ADAM PASCALの『RENT』復帰公演のように「これが好き!」「これが見られてよかった!」と思うほどの作品には残念ながら出会えなかったのですが、『WAR HORSE』など、それぞれには心動かされるものがある舞台はありました。やはり、いろいろなタイプの作品に出会えるのがニューヨーク、ブロードウェイの魅力ですよね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年7月NYで見た舞台その1~PETER AND THE STARCATCHER,MEMPHIS,WAR HORSE

すごーい時間がたってしまったのですが、自分の覚書のためにも7月ニューヨーク滞在中に見た舞台を記録しておきますね。

ちなみに今ニューヨークで一番人気の『THE BOOK OF MORMON』はLOTTERYに抽選するもまったく当たらず、見られませんでした…。


『PETER AND THE STARCATHER(ピーターと星の守護団)』
これはストレートプレイですが、PLAY WITH MUSICというかパフォーマンスも入っている形式のもの。ピーターパンがピーターパンになるまでに何があったかを綴るお話。劇中劇形式で、役者が「PETER AND THE STARCATHER」を演じているという形で、大がかりな装置や小道具はなく役者さんたちのパントマイムで演じられる。たとえばト書きの台詞をそのまま語ったり、人間がドアになったり→…ということで、「これ、ひげ太夫?」と思ってしまった私でした(笑)。パントマイムの技としてはひげ太夫のが上かも。ということは、ひげ太夫はブロードウェイで通用する?(笑)


『MEMPHIS(メンフィス)』
これは前回NYで見ているのですが、アダム・パスカルADAM PASCALが主役のヒューイで出演していたので再見。最初にADAMをブロードウェイで見たのは、2000年の『AIDA』でした。2007年の『RENT』復帰公演も見て、それ以来にADAMをブロードウェイで見られたことに感激。見る前はちょっとADAMのキャラと違うかなと思ったけれど、意外と早口で行動的なキャラも似合ってました。相変わらず、「この人、歌声で空飛べる?」と思うくらいの力強い歌声。主演のモンテゴさんMONTEGO GLOVERさんも素晴らしい。しかし、MONTEGOさんは背中の筋肉とか見ると、完璧アスリートの体してますね。作品的にも、人種を超えて良い音楽を伝えたいと思うヒューイに感情移入できたし、とても感動できました。

『WAR HORSE(戦火の馬)』
今回のニューヨーク滞在で最も感動した作品です。スピルバーグが舞台版を見て感動して映画を作ったことでも有名な作品。
戦争に駆り出されてしまった馬を追って戦場に行く少年の物語ですが、まず「馬」が素晴らしい。文楽人形のような形で3人の人が動かしているのですが、本当に生きているようなのです。
2番手格の馬のトプソーンは途中で死んでしまいます。これが3人の使い手が馬の体を置いて、3人が同時にすっと馬から離れることで表すのですね。「ああ、今、まさに魂が離れたんだ」ということが如実に表されていて、この演劇的な表現にもとてもはっとさせられました。

映像と舞台を融合させる演出で、手書きの絵を映像に使ってとても素朴に見せているのですね。その映像を突出させない使い方がとても見事で、観客の想像力をかきたてました。(私は今まで、舞台で映像を使うのがあまり好きではなかったのですが、こんな使い方もあるのか、と目から鱗です)
軍馬としていろいろな軍に参加するということで、戦い合う各国の、それぞれの兵士たちの様子が描かれます。声高に反戦を叫ぶのでなく、それぞれの軍にも人が生きているのだな…ということを感じさせました。
もうね、最後は泣きました……本当に。
演劇はこんなにも豊かなのか、と改めて感じさせてくれた舞台でした。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2012/09/17

ミリオンダラー・カルテット

先日取材させていただいたリーヴァイ・クライスさん(LEVI KREIS)出演のブロードウェイ・ミュージカル、MDQこと『ミリオンダラー・カルテット(MILLION DOLLA QUARTET)』を観劇。
エルビス・プレスリー、ジョニー・キャッシュ、ジェリー・リー・ルイス、カール・パーキンス。4人ノロックンロールスターが、古巣のサンスタジオに集まり、一夜限りのセッションを行うという話。
…という前情報だったのだけれど、ストーリーラインは意外と苦みがあるもので。彼らを育てたのはサン・レコードのサム・フィリップス。けれど、彼らはサムの元を離れ、大レコード社に移籍しようとする…。そうであっても、田舎の小さいレコード会社がロックを生み出したのは間違いもない事実。そこに目を向けている視点があるところが、この作品の魅力につながる。成功したスター(エルビス、ジョニー、カール)とこれから成功することになるスター(ジェリー)との対比も面白い。

やはり、役者さんの魅力がそのまま作品のパワーに直結する。いわゆるエルビス歌唱で聞かせてくれたエディー・クレンディニングさん。そして何よりやはりリーヴァイさんが素晴らしいのだ! 「僕のピアノ最高」キャラが際立っていて、愛嬌があって。客席を巻き込み盛り上げる力があって、とても魅力的だった。

役者さんによる生演奏と歌は迫力があり、ロックンロール世代の方たちにはおなじみの曲が展開。ラストはキラキラの衣装に着替えた彼らのライブで、客席もスタンディングに。楽しい一晩でした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ドラマティック・カンパニー20周年記念公演『阿呆浪士』は、加納幸和さんの『忠臣蔵』三部作の最終章!

『阿呆浪士』を昨日(15日)観劇。
ドラマティック・カンパニーさんは『アンパンマン』のばいきんまんの声でおなじみ中尾隆聖さんと、『忍たま乱太郎』土井先生の声の関俊彦さんが主宰する演劇集団。声優さんが多く所属している劇団で、今年で20周年とのこと。私はアトリエ公演の『A Suite』を以前拝見してます。
上演するのは鈴木聡さん作の『阿呆浪士』。元はラッパ屋の公演として上演されたもの。タイトルからおわかりのように赤穂浪士…忠臣蔵をモチーフとした芝居で、ラッパ屋公演のときは、案内役として講談師の国本武春さんが語ったという趣向があった。

今回は講談部分をミュージカル仕立てに。それも、欧米ミュージカルじゃなくて、エノケン以来の日本の伝統的和物ミュージカルの形式を取っているのが、まさしく加納さんが作る『忠臣蔵』物らしいところ。曲の雰囲気からすると、宝塚の日本物(?)という感じも。この、ミュージカル仕立てにしたところが20周年らしい祝祭の華やぎを感じさせる。(ミュージカル部分の歌の歌詞は加納さんが書いているとのこと)
終幕近くでドラマティック・カンパニーのメンバー全員が揃っての「記念公演口上挨拶」があったのも、より祝祭感を高めます。

さて、演出の加納幸和さんは花組芝居公演で過去にも『忠臣蔵もの』を上演している。『いろは四谷怪談』では『忠臣蔵』外伝である『東海道四谷怪談』と『忠臣蔵』をないまぜにし、夏はお岩さん、冬は討ち入り、と季節毎に移り変わる日本人を風刺して描く面もあった。そして、『KANADEHON忠臣蔵』は歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』全18段を2時間あまりで一気に圧縮上演してしまうというもの。

そして、今回の『阿呆浪士』が加納さん演出『忠臣蔵もの』の三作品目。三部作と考えれば、『阿呆浪士』がまさに最終章。同じ題材をこのように様々な形で取り上げ続けるのも、とても珍しいことなのでは? と思う。

前2作品は歌舞伎の『忠臣蔵』の登場人物をそのまま描いていたのに対して、今回の『阿呆浪士』は、大石内蔵助など史実に残る赤穂浪士の面々と共に、その時代の町人たちや赤穂浪士関連の人々など架空の人を描く。
赤穂浪士の話で持ちきりの江戸、「俺も赤穂浪士だったらモテモテなのに…」と思っていた魚屋の八(関俊彦さん)がひょんなことから赤穂浪士の連名状を手に入れてしまい、赤穂浪士と間違われて…からの討ち入りまでのてんやわんやの物語。

大石内蔵助(中尾隆聖さん)がなぜか風車売りに化けて…とか、シークエンスも相当おかしい。ネタバレですが、大石が風車売りに化けるとき、なぜか「宝塚のトップスターの背負い羽根型」の風車を背負ってるんですよね(見てない方にはまったくわからない説明文章ですが…)。どうして「宝塚のトップスターの背負い羽根型の風車」なの? 中尾さんがDCのトップスターだから??(笑) わからないけど、でも面白いから、よし!

そんなくすくす笑いのところもありつつ、歌舞伎的にきちっと型を決めるところは決めて見せて(嶋倉雷象さん指導による殺陣も本格)。日本の『忠臣蔵』上演の伝統の中にこの作品があるということもきちんと提示している。そして、根本には普通の人たちの生き方をあたたかく見つめる鈴木聡さんの視点に加納さんの演出も寄り添って、八や、八の妻(波岡晶子さん)と片思いの長屋小町の娘(本美奈子さん)たちの馬鹿で、切なく、でも清々しい生き方を明るく、そして力強く描いてエールを送る。

これだけの要素を入れ込みながら、最後のカタルシスまで持っていき、一つの『阿呆浪士』の世界を仕立て上げた加納さんの手腕には感嘆するばかりだし、三部作最終章に相応しい舞台になったと思う。

関俊彦さんの魚屋の八っちゃんは実に生き生きとしていて、もしかして馬鹿な選択かもしれないけれど自分なりの誇りを見つけて立っていく幕切れには正直ぐっと来た。そして、中尾さんの大石内蔵助は上述のコミカルなシーンなどもありつつ、人間としての弱さを見せ、そしてもう一度討ち入りの意義を見出す場面の芝居が非常に印象的。お二人が力強く芝居を引っ張る。『いろは四谷怪談』では大星由良之助(大石内蔵助にあたる役)、『KANADEHON忠臣蔵』では吉良上野介を演じた原川浩明さんは大石家の家臣の大野黒兵衛を演じる御趣向。なんと、大石内蔵助の娘、すず(沢城みゆきさん)への密かな恋心もある役でびっくり。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/09/10

遅ればせながら、お知らせなど

ご案内が遅くなりましたが、各誌掲載になっています。

TV TARO
 「魔法のオルゴール」上山竜司さん

BEST STAGE
「RENT」賀来賢人さん・中村倫也さん対談
「ミリオンダラー・カルテット」リーヴァイ・クライスさん
「星めぐりのうた」中川晃教さん・山崎育三郎さん対談
楽屋へようこそ 竹内寿さん

ミュージカル
「ディートリッヒ」荻野目慶子さん・吉川徹さん
「ダディ・ロング・レッグス」井上芳雄さん・坂本真綾さん

それぞれ、インタビュー担当させていただきました。
よろしかったらお読み下さいませ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/09/09

「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」を2階席から見る

ヘドウィグが好きなのです、私は。
どこがどうとはうまく言えないけれど、きれいで尊大で、そして自分の片割れを求めてやまない切なさを持っている彼に非常に惹かれます。
ということで、このブログでヘドウィグについて書いたもののをもう一度まとめたら…結構いっぱい見てますね、さすがに。

「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」7月16日 三上博史さん主演版
http://kaoru-web.air-nifty.com/blog/2005/07/post_70d1.html

「ヘドウィグ」(韓国・ソウル・大学路ライブ劇場)オ・マンソクさん主演版
http://kaoru-web.air-nifty.com/blog/2005/05/post_a4ed.html

以下の三つは、ジョン・キャメロン・ミッチェルがヘドウィグ役としてゲスト出演した韓国の「ヘドウィグコンサート」についてのブログ↓
韓国・Hedwig コンサートから帰って
http://kaoru-web.air-nifty.com/blog/2007/06/hedwig_9d36.html

韓国のヘドウィグコンサート最終日!
http://kaoru-web.air-nifty.com/blog/2007/05/post_bc20.html

韓国のヘドウィグ・コンサートwithジョン・キャメロン・ミッチェル見てきました!
http://kaoru-web.air-nifty.com/blog/2007/05/post_13c1.html

山本耕史さんとスズカツさんによる『ヘドウィグ』を見る
http://kaoru-web.air-nifty.com/blog/2007/02/post_544d.html

韓国版『ヘドウィグ』 キム・ジェウクさん主演版&チョ・ジョンソクさん主演版
http://kaoru-web.air-nifty.com/blog/2011/06/post-aa57.html

ブログには書いてませんが、三上博史さん版の再演、山本耕史さん版の再演、ジョンが出た山本さんのコンサート版も見てます。それぞれにすごかったけど、やっぱりジョンのヘドウィグが見られたことは自分の中でも大きかったですね。

そして、森山未來さん主演版の「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」を見てまいりました。
スタンディングの自信がなかったため、2階指定席で。森山ヘドからは「アナタたち、いつもそうやって人を見下ろしてるわけ? 高みの見物をしてればいいのよ!」と言われた(笑)席です。たしかに全体を俯瞰してみると、なんだかヘドウィグの映画版に出てくる、ヘドのライブにわけもわからず行ってしまった田舎のおばあちゃんみたいな感覚にちょっとなりますね(笑)。

内容としてはかなり大胆に翻案し、舞台の設定を日本の近未来に変えてあります。原発事故で立ち入り禁止になった区域の壁の中に、流れ者や犯罪者が集まるスラムができ上がって、ヘドウィグは立ち入り禁止区域内に生まれた子供、という設定です。

急に話が変わりますが。
私は1989年にシベリア鉄道横断→ヨーロッパ横断という旅行をして、ベルリンの壁崩壊直前の東西ベルリンにも行きました。最初東ベルリンから入ったのですが、東側はベルリンの壁の30メートル以内にさえ市民は近づくことができません。しかも、壁を背にして銃を構えた兵士がこっちに向かって立ってるんですよね…。そして、壁の向こう側からは西ベルリンでやっている野外コンサートの音楽が聞こえてくるという、もうなんともいえない体験をしました。音も鳥も自由に飛んでくるのに、決してそれを超えられない東側の人の気持ちを思うと…。で、その後西側に地下鉄で移動して(ベルリンの壁、旅行者は地下鉄で超えられるのです)今度は西側のベルリンの壁に。たくさん落書きしてある中の一つに「あなたたちの心の壁がなくなれば、この壁もなくなる」という落書きがあって、そのときは「本当にそうだな」と思ったのですが…。

実際、ベルリンの壁がなくなった今も、私たちの心の壁はまったくなくなってもいないことに気付くのです。

そう、だから、ヘドウィグが「I'M A NEW BERLIN WALL」(私は新しいベルリンの壁)と言っているのは、まさにこの意味かと思います。人と人との心の超えられない壁があっても、どうしても自分の片割れを求めざるを得ない人間の存在の悲しみ、それが「新しいベルリンの壁」であるヘドウィグの存在自体が象徴しているのではないかと。


余談が長くなりましたが、ベルリンの壁設定と、今回の舞台版の自分たちが選んで入っていった壁とは意味合いが違うと思うのですよね。
もちろん、(私みたいにリアルにベルリンの壁体験してる人もそんなにいないかもしれませんが)ベルリンの壁がリアルでない世代の人たちにとっては、もっと身近に思える設定にしたい、という気持ちもわかるのですが。この設定を変えながらも、元のストーリーラインに従って話が進むので、うまくかみ合わない部分があることが気になりました。
まあ、このあたりは作品の受け止め方で、私と、森山さんや演出の大根仁さんとは作品に対する解釈が違うということなのかな、とも思いますが…。
(イツァークとヘドウィグの関係性も、今回上演版と元のバージョンとは違いますが、今回のはよく読み取れなかった)

ただ、森山さんのパフォーマンスはとても迫力があり、(私が思う)ヘドウィグのエッセンスにあふれていたものだと思います。私が韓国で見た「ヘドウィグ・コンサート」でのジョン・キャメロン・ミッチェルのヘドウィグに通じるパワーを感じましたね。
ヘドウィグと一体化したパフォーマンスには非常に感動したのも確かなのです。

ちなみに演じ方としてジョンから一番遠かったヘドウィグは、キム・ジェウクだったと思います。でも、演じ方は違ってもヘドウィグのエッセンスをすごく感じられたのも不思議。それほどに、幅が広い作品だともいえるのでしょうね。オフブロードウェ上演時はヘドウィグを女性が演じてるバージョンもあったということなので。

ともあれ、ヘドウィグの生き方を体現したい、そして、想いを客席と共有したい、という気持ちは痛いほどに伝わってきた、森山ヘドウィグでした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2012年8月 | トップページ | 2012年10月 »