おおのの「交響曲 月に吠える」拝見しました
昨日(28日)、おおのの「交響曲 月に吠える」拝見しました。
大野裕明さん作・演出の公演をするユニット「おおのの」の文豪シリーズ。第…何弾?かわからないくらいやってらっしゃいますが、今回は詩人・萩原朔太郎を主人公に。
オリジナルのジャズピアノ演奏(保坂修平さん)。丸川敬之(花組芝居)さん、藤澤志帆さん、加藤幸夫さん、鈴木陽代さんの4人の出演者が、萩原朔太郎と彼を取り巻く人物を演じる。丸川さんは萩原朔太郎役でそれ以外の3人は多くの役を兼ねて演じています。
非常に印象的だったのは
(すみません、ネタバレ)
壁面に皆さんが手書きで文字を書かれること。書いてすぐは「墨で壁に書いたの?」と思うのですが、これが時間がたつとだんだん消えていくのですね。ここに、地名を書いたり、あるいは朔太郎の詩を書いたり……。この「書いては消えていく詩」というのに、とても象徴的なものを感じました。しかし、この消える墨字ってすごい発想&効果!
以前の文豪シリーズは夏目漱石、森鴎外などを取り上げたのですが、今回は詩人ということもあって書いた作品がそのまま舞台で取り上げられるので(小説は全部を舞台で読み上げることはできないですからね(笑))、観客的には非常にわかりやすくなってましたね。朔太郎の作品の素晴らしさ、と共に彼の人となりの至らなさというかダメダメな部分が対比的に浮かびあがり。
この作品⇔作者のアンビバレンツという点では、(その日たまたま行きの車の中でミュージカル「モーツァルト!」の曲をかけてたせいか)、朔太郎の姿にモーツァルト(一般的なモーツァルトというよりは、「モーツァルト!」のヴォルフガングというべきか)が重ね合わせて感じられました。ちなみに終演後に大野さんに伺いましたが、全然モーツァルトのことは思ってもいなかったそうですが(笑)。芸術家の中には、書いてる作品の素晴らしさと書いている自分との相克というものは、普遍的にあるものなんでしょうかね…。
でも、そのへんの相克を丸川さんはとてもよく出されていたと思います。詩でしか自分を語れないことと、ヘタレなキャラクターと、でも、彼の中にはどうしても創作しなければいけないという切実な思いがあって……。丸川さんが醸し出す雰囲気と役柄がマッチしていて、とてもよかったですね。
とても達者な加藤さんと鈴木さん。そして、魅力的な女性像を作り上げた藤澤さんと、出演陣も盤石。
おおのさんらしいコミカルな味わいとテンポの良さ。それに、2011年もっとも有名となった詩、金子みすゞの「こだまでしょうか」(あの、ACのコマーシャルの)も出てきたりしてました。
おおのの次回作は金子みすゞ生誕110周年記念公演「金子みすゞちゃん(合唱)」とのこと。
「交響曲 月に吠える」公演は9月2日まで 絵空箱。静岡公演、前橋公演もあり。
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