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2012/02/21

新たなトートを創造したジュンス~韓国版『エリザベート』見てきました

韓国ソウルで『エリザベート』を観劇してきました(16、18、19日)。

先日、東宝エリザベートでトートを演じるマテ・カマラスさんのポスター撮影現場レポート取材に伺い(近日雑誌で公開! インタビュー記事もさらに後日。お楽しみに)、また新たなトートが誕生する予感を覚えたばかりだったのだけれど、韓国版でもキム・ジュンスさんというまったく新しい造形のトートに出会うことができとても心震わされた。

オーストリア最後の皇后エリザベートとハプスブルグ帝国の崩壊を描いたストーリーに、彼女を黄泉の世界へと誘う「死」(トート、韓国版では「チュグム(韓国語の『死』」と呼んでいる)という架空の存在を組み合わせたウィーン発の大作ミュージカル。日本での宝塚歌劇団での初演版から東宝での上演版、ウィーン来日公演版とすべてのバージョンを観劇。宝塚版歴代7人と東宝版歴代5人のトートは当たり前だけどすべて見てきて、私個人としても大事な作品の一つ。今回このブログを書くにあたり、私が雑誌で担当させていただいた日本版演出の小池修一郎さんやトート役武田真治さんのインタビュー記事を読み返してみたのだけれど、内容的に非常に深いものがあり、また多彩な解釈が可能な作品ということを改めて感じた。(武田さんのトートの解釈は非常に興味深かった)

それはエリザベートや皇帝フランツ・ヨーゼフ、皇太子ルドルフなどは実在の人物だからある程度役の輪郭は決まっているけれど、トートは架空の存在なので解釈の幅が広く、如何様にも演じることができるということ。そのことがこのミュージカルをさらに奥深い魅力があるものにしているのだと思う。

そして、韓国版『エリザベート』で一番見てみたいと思ってのは、キム・ジュンスさんのトート。前回『モーツァルト!』を韓国で見てとても素晴らしかったので、ぜひトートも見たいと思ったのだった。ただ、キャラクター的にヴォルフガングとトートは全然違うし(日本ではヴォルフガングとトートの両方を演じた人はいないことでもわかるように)、ご本人の素地と思われる明るいキャラクターが生かせるヴォルフガングがハマったとしても、神秘的な存在のトートはどうだろうか? という心配もなくはなかった。

しかし、『エリザベート』の舞台が始まり冒頭で登場するときから、ジュンスさんのトートは見事な存在感を示した。まさに劇場中の色が変わったというか。登場した瞬間から、その歩き方や漂う気配に「人間でない、異形なもの」ということが表されたのだ。(ブロードウェイミュージカル『AMERICAN IDIOT』のST.JIMMY役TONY VINCENTを彷彿させるような圧倒的な存在感!=TONYのST.JIMMYとジュンス・トート、ちょっとメイクも似てる……余談)

また、冒頭のシーンでエリザベートの肖像画を長いこと後ろ向きになって見つめていたのだが、これはその前に見たソン・チャンウィさんのトートはやっていなかった演技と思う。そこでトートのエリザベートに対する強い思いが初めからはっきり示されていた。おそらくご自分で考えた演技と思うが、ジュンスさんはとても的確な演技プランを立てられる人だと思う。

この世のものではない、妖しさ。そして、エリザベートをひたすらに思い続ける愛情。
この二つを共に有するトートを、ジュンスさんはとても魅力的に表現した。客席の気持ちを掌握する力の強さは日頃JYJのコンサートなどで培っている賜物かと思うけれども、そういう大胆さとは裏腹の繊細な解釈と表現ができていることにも驚かされた。指先の微妙な動きまで神経が行き届いているのだ(『闇は広がる』でルドルフを誘い込む指先など)。

氷と炎。
静と動。
相反するものを持つトートの存在は圧倒的だ。
やはり圧巻は「最後のダンス」。カッコいいダンスをまじえての歌は迫力があり、客席も大いに湧いた。


作品のことに話を移すと、韓国ミュージカルの歌唱力の魅力が十分に出た作品だった。
特に「カフェ」や結婚式の場面のコーラスの厚みと迫力、難曲を難なく歌いこなす実力が見事で、歌声を堪能できた。

エリザベート役のオク・ジュヒョンさんとキム・ソニョンさん。お二人ともとにかく歌唱力が高く、パワーのあるエリザベートだった。「私だけに」はいうまでもなくドラマチックな歌声を響かせる。特にオク・ジュヒョンさんのシシィが精神病院で歌う「あなたの方が自由」はエリザベートの孤独と苦しみが浮かび上がり、名唱。

特に素晴らしかったのがルキーニのチェ・ミンチョルさん。あまりに素晴らしくてどうしてもミンチョルさんがもう1回見たくなり、16日に見た後18日の観劇を追加したほど(笑)。闊達で自由自在な演技で客席の心を掴み、「ミルク」はほぼショーストップ状態の大迫力。
他のルキーニ役、パク・ウンテさんは青い炎という趣、また、キム・スヨンさんは熱いルキーニで三者三様。それぞれの個性が出たルキーニを見られたのも、今回の韓国の観劇での大きな収穫だった。
ルドルフ役は、チョン・ドンソクさんがウィーン版のルカス・ペルマン王子を連想させる繊細な王子ぶりでひときわ目を惹いた。

演出はアメリカ人演出家のロバート・ヨハンソンさん。アメリカ人らしい大胆な作品の掴み方が身上の方と思う。ただ、場面数と転換が多いミュージカルではあるけれど、暗転が多いのが気になった。

また、歌詞で表現されていることを具体的に形にして見せる演出が多かった。ウィーンや日本版ではないことだが、フランツ・ヨーゼフの執務室で一人の母親が息子の無実を訴える場面で実際に息子がトートと共に出てきたり、エリザベートがミルク風呂に入って美貌を保っていると歌う場面で、エリザベート(を模した人形)がお風呂に入ってる後ろ姿が出てきたり(!←これはちょっといただけない…、だって、人形だから微動だにしないし)。外国人観劇者が多いことを想定しているためか、わかりやすさのためもしれないが……。

一つ、どうしても疑問なのが、エリザベートが子供を産んでゾフィーに取られたというくだりからハンガリー訪問までの場面が、なぜかルキーニがエリザベート、フランツ・ヨーゼフ、ゾフィを操る人形劇仕立てになっていたこと。エリザベートが自分の美貌が武器になることを知ったという大事な歌詞もあるところなのに、これでは歌詞がお客様の耳に届かないのではないか。何より劇構造からいって、ルキーニは狂言回しではあるけれど、物語世界をすべてを操っている人ではないと思う。なので、ルキーニがエリザベートやフランツ・ヨーゼフらを操っているような印象を与える「人形振り」は疑問を持った。

小池修一郎さんの作り上げた『エリザベート』がどれほど周到に用意され、作品世界を広げていたか、ということも改めて感じた。

ともあれ、韓国版の上演は始ったばかり。長い公演期間を経てさらによい作品に成長していくことと思う。私としては素晴らしい演者たち、特にジュンス・トートとミンチョル・ルキーニに出会えたことを素直に喜びたい。

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コメント

>千樹さん
ありがとうございます!

>cardasさん
ブログで公開していただいて構わないですよ。よろしければcardasさんのブログのアドレスを教えていただけるとありがたいです。
よろしくお願いします。

投稿: おおはら | 2012/02/26 21:23

はじめまして。ツイッターで知ってお邪魔しました。ジュンスのトートのレポ、ありがとうございます。ブログにリンクを貼らせてください。よろしくお願いいたします。

投稿: cardas | 2012/02/26 14:51

私もJYJが好きで、ツイッターでこちらの記事が紹介されていた為お邪魔しました。

読ませて頂いて、想像するだけで心が震えるようでした。

貴重なレポートありがとうございました。

投稿: 千樹 | 2012/02/25 00:43

>ine49さん
はじめまして。コメントありがとうございます。
ブログで公開していただいて構わないですよ。ine49さんのアドレスを教えていただけるとありがたいです。
よろしくお願いします。

投稿: おおはら | 2012/02/24 01:25

JYJファンです。何度も読ませて頂きました。自分のブログにも紹介させていただいていいでしょうか?(全文引用)

投稿: ine49 | 2012/02/23 23:55

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