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2011/11/15

松本潤さん主演「あゝ、荒野」

虚無をまとった青年の、存在感の大きさに圧倒されそうになる。
混沌とした「架空の昭和」の新宿の町にトラックに乗って(荷台に立って)現れたのが、新宿新次役の松本潤さん。
言葉を発さなくてもひりひりと感じる、痛みと虚しさ。
冒頭の登場から、人の目を惹きつける力の強さにすごい……と正直、思わされる。

寺山修司さん原作の小説を初めて戯曲化したという「あゝ、荒野」。蜷川幸雄さん演出で、嵐の松本潤さん、小出恵介さんが出演し、ボクサーを目指す青年二人の相克を描く。

ボクサー役ということもあって、松本さんは研ぎ澄まされた肉体を見せる。思わず「特権的肉体」という言葉が浮かんでしまったほど。(特権的肉体論は寺山さんじゃなくて、唐十郎さんだけれど)

吃音でモノローグでしか自分の思いをすらすらと語ることができない、バリカン建二役の小出恵介さん。コンプレックスの中で、輝かしく美しい新宿新次にあこがれの気持ちを抱くが、「愛するために愛されたい」建二は新次との対戦を求めるように……。

新次と建二、二人の思いが交わるジャングルジムのシーンが切なく美しい。場面が終わった後暗転になるのだが、その暗闇の中で、新次がポンポンと建二の肩を叩いていたのが目に付いた(新次が、じゃなくて、松本さんが、というべきか?)。与えられた場面だけを演じるのではない。新次の建二に寄せる温かい思いがそんな些細な仕草からも伝わってくる。

圧巻なのは、終幕近く。多くの登場人物に激しく詰め寄られながらも、自分の思いを吐露する新次。
アイドルとして今頂点にいる中で、そこに埋没せずある種の「乾き」を持って前に進もうとする松本さん自身と、日常に堕せず戦って栄光を得ようとする新次が見事に交錯する。その思いの強さに打たれるのだ。

対するバリカン建二の小出さんはナイーブな思いを見せる。私が前回に小出さんを拝見したのは「シダの群れ」で、そのときの強気なヤクザの姿とはまったく別人のよう。役者魂を感じさせる変容ぶりだ。

最後のボクシング対決のシーンの迫力はすごい。特に後半のスローモーションでは二人の体から汗が滴り落ちる。客席で息を呑んで見つめるのみ。


石井愃一さんが演じるスーパーの社長が語る、新次の輝く美しさと自分自身を対比して描く長いモノローグに非常に共感できるものがあった。ネオン輝く新宿の夜景、大胆に現れては消えていく装置もスペクタクルだ。

公演は12月2日まで、青山劇場にて。(前売りは完売。当日券は前日電話予約で受け付け。詳細は文化村ホームページでご確認を)

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