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2011/11/04

恋する女性たちへの讃歌~『夏の夜の夢』&『十二夜』 スタジオライフ

スタジオライフのシェイクスピアを音楽劇で上演するシリーズLif"e with Shakespeareで『夏の夜の夢』をダブルキャストで、そして『十二夜』の3パターンの公演を連続上演する舞台。
ライフにとっては『夏夜』は3度目(ただし、Lif"e with~のサブタイトルがついての上演は初めてと記憶する)で『十二夜』は2度目の上演。

初演時に私が書いたレビューは、ご参考までにコチラ→新解釈の「夏の夜の夢」(2006/9/9)
陰影深い「十二夜」(2009/11/20)

宇野亜喜良さんを美術・衣裳に迎えての公演で、ビジュアルイメージは一新。特に『夏夜』は色合いの美しさが際立つ衣装である。「芝居の衣裳とは、ただの洋服のデザインではなく、キャラクターを創ること」(別の衣裳家さんに取材したときに伺った言葉)だそうで、宇野さんの新ビジュアルにより新たなキャラクターが生まれたようだ。
セットは同じ原形を使いながらもまったく違うイメージのものとなっていて、これは同時上演の2作品としてはとても珍しいこと。同日に『夏夜』『十二夜』上演するときもあり、劇団ならではのスタッフワークの確かさも感じさせられる。


私は『十二夜』と5日ほど後に『夏夜』Bonbonチームを観劇したのだが、連続上演することによって新たに浮かび上がってくるものがあった。
それは両作品に共通する、恋する女性たちへの倉田淳さん(上演台本・演出)の温かな視線であり、応援のメッセージだ。
たとえば、『夏夜』で信じられないほどの運動量で恋のバトルを繰り広げるハーミアとヘレナに大笑いしながらも、その奥にある倉田さんの「もっと能動的に恋せよ乙女」という思いがひしひしと伝わってくるのである。
そして、ヒポリタがシーシアスへの恋心を解放していく心の変遷にも、倉田さんの熱い思いが伺えるのだ(これについては、2006年レビューをご参照のこと)。


また、2作品の中にある不思議な共通性も見えてくる。
妖精たちの不思議なキャラクターが出てくる『夏夜』と、現実的な登場人物のみの『十二夜』。設定は違うけれども、共に混乱の後に「あるべきものがあるべき姿になっていく」物語であるということだ。
『夏夜』と同時上演されることで、『十二夜』のラストシーンの祝祭性はさらに高まったように思える。

(混乱、といえば、『夏夜』で浮気草の魔法にかかったくだりの場面で、ライサンダー、ハーミア、ディミートリアス、ヘレナの白い衣裳が泥だらけのものに変わっている。これは初演からそうなのだが、私が今まで何作品も見てきた他のプロダクションの『夏夜』で、4人の恋人たちの衣裳が途中で変わっているのを見たことはない。スタジオライフ版で泥だらけに変更しているのは、彼らの心の内にある混乱をそのままビジュアルイメージに落とし込もうというものだと推察する。倉田淳さんがいかに深く、いかに繊細に『夏夜』の登場人物たちの内面をとらえているかということの表れでもあると思う)

男装しているためにオーシーノ公爵への恋を進められない『十二夜』のヴァイオラは、自分の恋敵であるオリヴィアの恋を取り持とうとするが、それは、恋するディミートリアスのためにライサンダーとハーミアの駆け落ちを教えてしまう健気なヘレナの恋が重なって見えてくるのだ(※文末に注記)。

また、ディミートリアスは浮気草の魔法によってヘレナに恋するが、その魔法は解けないまま。兄の死に沈んでいたオリヴィアは、ヴァイオラの男装という偽りの姿に恋をしたおかげで、生きる勇気を取り戻す……というふうに、共に誤りをスタートとしながらも、最後は「あるべき姿」に収束していく、という共通点もあるのだ、と思う。


ハーミア、ヘレナ、ヒポリタ、ティターニア、ヴァイオラ、オリヴィア、マライア……。それぞれの女性キャラクターがここまで個性豊かに、力強く、生き生きと描かれているのは、男優たちが役に注ぎ込む情熱であり肉体のパワーによるものだ。ここにスタジオライフがシェイクスピアを上演する意義があると感じる。

(書いてて、今気づいたけれど、女性キャラは全員ハッピーエンドなのに、男性キャラはサー・アンドルーとかマルヴォーリオとかアントーニオとか不遇で終わってる人もいるんですね。「あるべき姿」からはじき出されるのは、男性のみか……(笑)。どういうことだ、シェイクスピア…)


さて、両作品とも音楽劇の形式を取ることで、テンポよく楽しく物語が進んでいく。オリジナル楽曲での『十二夜』ではアホウドリチーム(奥田努さん・冨士亮太さん、原田洋二郎さん、鈴木智久さん)が歌いながら、舞台装置もどんどん転換させていてこれは大健闘。
『夏の夜の夢』では懐かしいテイストの洋楽。オーベロン役の石飛幸治さんが『レ・ミゼラブル』グランテール役を経て、さらに豊かな歌唱力となって聞かせてくれた。前回公演にはあったライサンダーとハーミア、ディミートリアスの歌がなくなったのはちょっと残念。

印象に残った方を触れると『十二夜』で、前回公演よりさらに瑞々しく乙女心を描き出したヴァイオラの松本慎也さん。マルヴォーリオの坂本岳大さんは(髪型がスキンブルシャンクス風……余談)慇懃無礼な滑稽さが際立ち、最後の演歌(?)も聞かせてくれた。セバスチャンの関戸博一さんは恋に盲目となりひた走る様子を爽やかに表現。歌声が伸びやかでした。オーシーノ公爵の曽世海司さんはキャラクターの際立たせ方が群を抜く。オリヴィアの及川健さんは、恋をして変わっていく様子がキラキラと美しい。マライアの林勇輔さんは前回公演に比べると、利発な女性より恋する女性に傾斜している役作りか。

『夏夜』ヘレナの切ない女心を描くのは青木隆敏さんの独壇場。ハーミアの及川さんはまさに体当たりの演技で恋するパワーを表現する。お怪我ありませんように…。ライサンダーの関戸博一さん、ディミートリアスの緒方和也さんも共に初役で、好対照な役作り。坂本さんのクウィンスは、最後の村人芝居に『ロミオとジュリエット』を重ねる導入を非常に丁寧に描き出していたと思う。シーシアスの牧島進一さんは台詞の説得力が素晴らしい。


『十二夜』『夏夜』共に恋する女性たちへの讃歌であると同時に、シーシアスの言葉にある「すべての芝居は影」も体現するものでもある。
『夏夜』の終幕、パックの倉本徹さんが「どなた様もご機嫌よろしゅう」というと、ふっと目の前の世界が揺らいで消えるような不思議な感覚にとらわれる。現は夢、夜の闇こそまこと。そんな表裏一体の切なさが漂うのも、男優だけが演じるスタジオライフならではだろう。


(※注記)「ヴァイオラとヘレナが重なって…」という話を、終演後にご挨拶した松本慎也さんにしたら「ヘレナですか!?」とビックリされたので、この解釈間違ってるのかも……(苦笑)。間近に拝見した、宇野亜喜良メイクの松本さんは大変お美しかったです。


公演は11月8日まで、紀伊国屋ホールにて。その後、大阪、新潟、韓国ソウル、かめあり公演も。

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