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2011/08/08

岸家の夏/東京モダンガールズ

女性がテーマの2作品を続けて見る。

劇団鹿殺し『岸家の夏』
九州の柔道場に育ったアラフォー・アラサー三姉妹の話。父親が作った借金のカタに、亡母との思い出の実家兼柔道場を取られそうになり、なんとか借金を返すべく奔走するが…。

とにかくパワーのある舞台だった。
それは何よりゲストの姉妹役、千葉雅子さん、峯村リエさんによるものが大きくて。
それぞれ自分たちの劇団(猫のホテル・ナイロン100℃)でしっかりやってらっしゃるお二人が、若手の勢いある劇団ですべてをさらけ出して演じきっている様が、本当にすがすがしい。
千葉さんと峯村さんの力強い芝居が、そのまま、作品のテーマである「もがいて、もがいて、一生懸命に生きてる女性」(←陳腐な表現で申し訳ない)にそのままリンクしていて、非常に感動的だった。

千葉さん、峯村さんのパワーに呼応する呼応するように、末娘役菜月チョビさんはじめ鹿殺しの皆さんも大車輪で演じる。早変わりの連続。歌と踊りもたくさん。
途中、千葉さんの役が借金返済のお金を作るためパチンコ屋に行くシーンで、出演者がパチンコ玉になり(!)、コマ付きのイスを舞台上で猛スピードで滑らすダンスが、鹿殺しらしく個性的でとても面白かったのだった。

トルコ人のケバブ屋イルハンの谷山知宏さんもずるい男だけど憎めないキャラがいい感じ。もちろん(パチンコ玉含め)ダンスでも活躍。

劇中、亡くなったお母さんがしばしば三姉妹の前に現れて話をする(あるいは、彼女たちの背中を押す)場面では、一人、涙が出て仕方がなかった。
生きている人は、亡くなった人の思いを背負って、それに力を得て生きていく(生きていかなければならない)…。『赤とうがらし帝国』にもこういう設定があったけれど、丸尾丸一郎さんの脚本の根底にある思いに、心揺さぶられる。

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おおのの『東京モダンガールズ』

実際の観劇の順番はこちらが先(3日の初日公演を観劇)。
夏目漱石、太宰治など文豪シリーズをポップに描いてきた大野裕明さん。今までは大野さんの作・演出だったものが、今回は吉田麻起子さん(双数姉妹)が脚本を担当(出演も)。
平塚らいてう青鞜創刊百周年記念で、平塚らいてう(仲坪由紀子さん)や伊藤野絵(山口奈緒子さん)など大正期の女性思想家の黎明期を描く。

チラシにある「乗り越えられない不幸は乗りかかってはこないのよ! 全ての女性に送るパワフル大正浪漫」
という言葉を想像していくと、違うイメージの舞台になっていた気がする。
やや湿度が高いというか。
「元始女性は太陽であった」という新しい女性の主張を持っていたはずのらいてうや野枝が、男性との関わりの中で、やがては男性との相対性の中に帰っていってしまうというような……。
吉田さんはチラシの文句を、逆説的に描きたかったのかな? ご本人に聞いたわけでないのでわからないけれど。

(実際のらいてうは、この舞台で描かれた時期の後、第2次大戦後も反戦・平和運動を続けている)

演出は大野さんらしいポップなイメージ。

この舞台で描かれている女性思想家たちには残念ながらあまり共感できなかったのだけれど、でも、らいてうや野枝を巡る男性陣が皆さん素敵で、そちらに注目して見てました(笑)。

野枝を巡る二人の男性。野枝の夫、辻潤役の江戸川卍丸さんと、フリーラブを訴え複数女性と不倫関係を持つ大杉栄役の三村聡さん。
女性の立場からしたらめっちゃムカつく(笑)ご都合主義なフリーラブ理論を唱えていても、それを許したくなってしまうような不思議な魅力がある男性像を実感を持って演じてくれた三村さん。
そして、今までどちらかというと「怪演」ポジションを拝見することが多かった卍丸さんが、これほど端正で落ち着いた佇まいで、抑えた色気が出せるとは……と、新たな魅力を発見。
この二人が酒を酌み交わすシーンが見どころ。

らいてうを巡る二人の男性。らいてうと心中未遂事件を起こす、実は妻など三股かけてる森田草平(この心中未遂事件をきっかけに、らいてうは女性問題に目覚めるようになる)。そして、青鞜創刊後に知り合う、らいてうより5歳下で画家で俳優の病弱な奥村博史。この二役は堀越涼さんが演じる。
らいてうを巡る男性を堀越さん一人で演じるのは、森田と奥村との幅があればあるほど、らいてうの男性による変化を浮き彫りにさせる効果もあり。
心中をやめて帰ろうとする森田のずるさ。後に心中未遂事件を小説に書くと告げるとき、そこにずるさだけでなくて「苦み」がほの見えるのが、堀越さんたるところ。奥村は純真な愛を貫く人で、繊細かつ素朴さがちょっと珍しい、かな。

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