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2011/06/22

韓国版『モーツァルト!』

先週末、ミュージカルを見に韓国にひとっ飛びしてまいりました。
観劇してきたのは『モーツァルト!』『ヘドウィグ』『春のめざめ』。各作品ともとても素晴らしくて、行った甲斐がありました。韓国ミュージカルの勢いを感じさせる旅となりました。ということで、3作品についてブログアップしようと思います。まずは『モーツァルト!』から。

きっかけは…
昨年、日本での『モーツァルト!』上演の際、井上芳雄さん、山崎育三郎さんに取材して(そういえば、ポスター撮影の時の取材で、ヴォルフガング姿のお二人をお近くで拝見して感動したのでした)、井上さんから韓国でキム・ジュンスさんの『モーツァルト!』を観劇した話を伺って、興味を惹かれたのでした。そのとき井上さんは、韓国でこれだけ『モーツァルト!』が受け入れられているのを見て身内のように嬉しかったこと、また、同じヴォルフガング役者としてジュンスさんと話をしてとても共感したことをおっしゃってました。日本ではダブルキャストで1日2回公演はほとんどないのに、ジュンスさんは1日2回公演をやってらっしゃって、大変だなと思ったとか。

そして、この春『キム・ジュンス ミュージカルコンサート』のDVDを拝見してその素晴らしさにびっくりして、「ぜひ韓国で『モーツァルト!』を見たい!」と思ったのです。

見たいと思っても簡単にチケットが取れるようなものではもちろんなく、あっという間にジュンスさんの回のチケットは売り切れになってました。でも、チケット販売サイトのinterparkにしつこく(笑)アクセスして(夜中にアクセスすると、戻りチケットがポツポツ出てきたりするんです)キャンセルチケットをゲットできました。

ということで本題。
『モーツァルト!』はキム・ジュンスさん(=JYJのシア・ジュンスさん、舞台出演のときはご本名で登場されてるみたいですね)主演の回とパク・ウンテさん主演の回を観劇。

日本版の『モーツァルト!』とは趣が違う舞台ですが、高い歌唱力で作品世界を押し広げて見せてくるのが韓国版の魅力。特に終盤の「モーツァルト! モーツァルト!」の多重に折り重なるコーラスの迫力は素晴らしかった。

音楽の天才に恵まれた一人の青年、モーツァルトが、妨害や無理解に会いながらも自分の音楽を追求しようとし続ける物語で、モーツァルトはデニムにシャツのような現代の若者の姿で登場。音楽の教科書にあるようなモーツァルトでなく、笑い、葛藤し、自分の理想を貫こうとする「生きるモーツァルト」として描こうとするところが特徴の舞台です。

ジュンスさんのモーツァルトの何が素晴らしかったかというと、役に生きているということ。

ジュンスさんは前回の『モーツァルト!』初演までまったく演技経験がなかったという話を一緒に見てた韓流に詳しい友人から観劇後に聞いてびっくりしましたが、逆に演技経験があまりないからこそ、リアルな心情を役柄に落とし込むことができたのかなと思います。

また、一般的に言ってクラシック系出身のミュージカル出演者の方って、重厚な演技はお得意でも軽さを表現するのがあまりお得意でない方もいらっしゃると思うのですが、ジュンスさんはモーツァルトの持つ軽さ(友人に振り回されて、つい遊びに行ってしまうような部分)とか、コミカルな表現がとてもお上手なのですね。これは役柄の表現としてとても大事なところと思います。

何より魅力的なのは、妨害や困難に遭っても自分の音楽に向かっていこうというモーツァルトに対して、深い共感を持っているのを感じさせること。特に「僕こそミュージック」は、この歌詞に込められたメッセージを丁寧に伝えようとして歌っていることが(韓国語がわからない私にも)非常に良くわかりました。

あと、普通ミュージカル歌唱では聞かないタイプの(ロックっぽい)シャウトを入れてたので、「のど大丈夫かなあ」とか勝手な心配をしたのですが(笑)、このシャウトは普段の音楽活動のコンサートでもずっとやっていても喉を傷めないことで有名と友人に聞いて、「へぇ~」と思ったりしました。このあたりの歌唱法もモーツァルトのロックな魂を表現するにはふさわしかったんじゃないかなと思います。

もうお一人拝見したヴォルフのパク・ウンテさんは非常に優れた歌唱力の持ち主で、特に1幕最後の「影から逃れて」は素晴らしかったです。最後の高音張り上げのすごさは鳥肌モノ。
ご本人の持ち味としては、ミュージカルコンサートDVDで見た『エリザベート』ルキーニが合ってるかもしれません。

韓国語が理解できるわけでなく、日本版の台詞・歌詞の記憶で補完しながら見てるので理解違いもあるかもしれませんが、アマデとヴォルフの関係性は日本版とは違う解釈をされてるみたいですね。小池修一郎先生演出版では自分自身の才能の象徴であるアマデとモーツァルトとの葛藤が色濃く描かれているのですが、韓国版はそうでもないような…? あと、モーツァルトの音楽の源泉の象徴として描かれてる、ヴァルトシュテッテン男爵夫人からもらったオルゴールを、父親にあげようとするシーンは「そんな大事なものを、たとえ親との関係を取り戻すためとはいえ、あげようとしちゃうかしら?」というのが疑問として残りました。このあたりはどう解釈されて演出しているのか、韓国版の演出家の方の意図が知りたいですね。

コンスタンツェのキャラは日韓では全然違いますね。日本版だとウェーバー家の最初の登場シーンでは、奔放な一家の中でも一人清純系なコンスタンツェなのに、韓国版では一家の中でも輪をかけて奔放系なんです。「ダンスはやめられない」の徹底した「悪女」ぶりと、そのラストに見せる女心が対照的で、いやー、チョン・ソナさん本当にすごいと思った。パンフに載ってる経歴を見ると、『マンマ・ミーア!』『アイーダ』『ドリームガールズ』と大作ミュージカルに次々出演している方なんですね。
また、コロレド大司教は2キャストで拝見しましたが、お二人とも豊かな歌声に強い圧倒感があって、「神よ、なぜ許される」は2回ともショーストップに近い状態になってました。

韓国ではウィーンミュージカルとしては初めての作品となった『モーツァルト!』。歌唱表現力に優れているお国柄には向いている作品だなと思いましたし、作品が持つ新たな一面を見せてもらえたと感じています。2012年に上演予定されている『エリザベート』もとても楽しみです。

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コメント

大原さん、初めまして。私も韓国版「モーツァルト」に大きな衝撃と感動を貰ったひとりです。
元々ミュージカルに興味が無かった私ですが…JYJのジュンスFANということで韓国に去年「モーツァルト」を観に行ってきました。そしてそれがきっかけで日本のモーツァルトも観ました。大原さんが言っておられる通り日本と韓国とではモーツの捕らえ方(解釈)が大きく違うと感じました。そして今年もチケット入手困難な中でも韓国の知人にチケットを取ってもらい観覧出来ました。FANだから贔屓目になっちゃうのかも知れませんが本当にジュンスのヴォルフは素晴らしいです。去年も凄いと思いましたが今年は更に凄くなってました。何度感動して泣いたことでしょう!ジュンスは本当に感情表現が素晴らしいです。歌も彼にしか出せない独特の声を活かしてて良かったです。そして何よりも大原さんがジュンスのモーツを取り上げて感想を下さったことにも感謝です。

投稿: amin | 2011/06/26 23:52

こんにちは大原さん、ジュンスのファンです
韓国版モーツァルトを取り上げてくださって、ありがとうございます

ミュージカルには興味が無かったんですが、韓国まで観に行きます

言葉が分からなくても、ジュンスの歌の力に感動します

大原さんが、ジュンスの1番いいところをすぐに見つけてくださってうれしいです
(コミカルな演技ができるとこや、モーツァルトに深い共感を持っていると感じられたところ)

来年のエリザベートにも出演予定なので、そのときもぜひ観て下さいね

投稿: ゆうこ | 2011/06/23 14:08

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ライター大原さん のブログにて 今回のジュンスのXiahzartを閲覧された感想をお書きになってます。 素敵な事を書いていただいてますので、一部引用します。 ジュンスさんのモーツァルトの何が素晴らしかったかというと、役に生きているということ... [続きを読む]

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