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2010/10/26

Anthony Rapp(アンソニー・ラップ)の一人ミュージカル「without you」 (韓国・ソウル公演)

ミュージカル「RENT」のマーク役オリジナルキャストであるAnthony Rapp(アンソニー・ラップ)の一人ミュージカル「without you」の来韓公演があったので、ソウルまで見に行ってきました。

2008年にピッツバーグで公演されたものを見に行って非常に感銘を受けたので、もう一度見たいなと思ったのです。
ピッツバーグでも非常に感動しましたが、今回で合計3回見て、さらに感動は深まりました。

内容は、「Without you」というアンソニーが書いた自伝的エッセイを元に、RENTのオーディションから、RENT作者のジョナサン・ラーソンの死と、その後の初日の模様、そして、アンソニーのガンで亡くなったお母様とのふれあいの模様を、RENTの曲とアンソニーが作った曲でつづっていく、一人舞台です。

そのとき書いたレビューはコチラ→Anthony Rappの一人ミュージカル「without you」(ピッツバーグ)作品としての感想は基本的にはピッツバーグ版と同じなので、そちらもご参照下さい。

「RENT」のバックステージ物としての興味はもちろん、突然亡くなったジョナサン・ラーソン、そして徐々に死に近づいていく病(ガン)で亡くなったアンソニーのお母様という二人の死に接して、生きているアンソニーはどう向かい合っていったのか……。真摯に綴られていることが、本当に胸を打ちます。
私の母も血液のガンで亡くなっているので、アンソニーの一言ひとことが「そうだ、そうだよね…」と思い当たることがあって、涙なくしては見られなかったです。

これはアンソニーの個人的な体験だけれど、同時に、「身近な人の死」ということで考えるととても普遍性が高い内容になっていて、なおかつ、作品としてもクオリティの高いものになっています。
ちょっと「ヘドウィグ」を思わせるような一人語りミュージカルで、違和感なく「RENT」の曲とオリジナルの曲を入れ込む構成も見事。こういうシリアスな内容でも、音楽的な楽しさや巧まざるユーモアとウィットがあり、くすっと笑ってしまうようなところもあって、重苦しくなく、むしろ爽やかな印象です。

そして、役者として、作者としてのアンソニーの実力と魅力が素晴らしい!

2007年のブロードウェイ「RENT」のAdam PascalとAnthonyのカムバック公演で、Anthonyの舞台を初めてみたのですが、そのときはお客様の意識を惹きつけるパワーのすごさに本当に感動しました。
今回の「without you」では一人芝居にありがちな「くどさ」がなく、程の良さがちゃんとあるのがとても良かった。
こういう内容だと、下手なやり方をすると「僕にはこんな悲劇が!」的なズブズブのドロドロになっちゃう危険性もあると思うのですが、そうならなかったのはアンソニーがちゃんと客観性を持って作品を作り、演じていたからだと思う。

一例をあげると、「RENT」のゲネプロの後、(その晩に急死する運命の)ジョナサン・ラーソンに、「僕をもう一度舞台に立たせてくれてありがとう、何より僕の友達でいてくれてありがとう」ということを言いたかったけれど、記者の人に囲まれていて話しかけられなかったので、「明日言えばいいか」と思って帰ってしまった…というエピソード。ソウルでの1回目を見たときは、そのときのアンソニーの心中を思って私の涙は止まらなったんですが、2回目に見たときは、アンソニーが(ラーソンと最後に話したかったのに!という悲劇口調でなく)この場面をその当時の感情のままフラットに演じているのに気づきました。

現在から照らし合わせた過去でなく、そのときどきをきちんと生きて演じているから、このミュージカルは非常に生きたものになっているんだな、と改めて感じます。

アンソニーは劇中いろんなキャラクターを演じる(ジョナサン・ラーソンやアダム・パスカルなど)のですが、個人的には、やはりお母様との会話の部分が印象に残ります。
「ハーイ、トニオ」と語りかける口調の優しさで、どれくらい愛情に溢れたお母様だったのか、というのがまざまざと伝わってきます。

身近な人の死はとても悲しいことだけれど、その人たちの思いをちゃんと受け止めて、今を生きよう……という「without you」Antyony Rappのメッセージ、深く胸に届きました。(そして、そのメッセージは「RENT」の「NO DAY BOT TODAY」もしくは「I CAN CONTROL MY DESTINY」というメッセージにつながるものの気がします)


韓国のお客様も非常に集中して見ているのを感じました。翻訳上演物は字幕を見ながら舞台を見る分、舞台には集中しにくいものなのですが、客席から物音すら聞こえないくらい、本当に真剣に見てらして、泣いている方も多かったです。

(私はハングルが多少読める程度で韓国語はわかりませんが、アンソニーのお母様からの手紙のところは、手書きっぽい字体に文字を変えていたりして、きっと丁寧に繊細に翻訳されているのだな、というのが伺えました)


作品としても非常に魅力的に仕上がっているので、勝手に個人的に「(欧米ではできないかなと思うけど)日本とか韓国のマーク役者の人が主演で、この作品を翻訳上演したらいいんじゃないかな」なんていうことも想像しました。
そして、何より、「without you」をぜひ日本でも上演してほしい! 切に願います。

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