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2010/05/26

花組芝居 花組ヌーベル『ハイ・ライフ』竜組初日

花組芝居主宰の加納幸和さんが花組の本公演ではやれないことをやる!という企画「花組ヌーベル」、第1回公演(←すみません、訂正。花組ヌーベルは2006年の『恐怖時代』からで、2005年の『ハイ・ライフ』は「花組芝居OFFシアター」名義でした)2005年『ハイ・ライフ』の再演。ダブルキャスト公演で、基本的に前回公演の演出を踏襲する…ということなのだが、

これがまた、2005年版とはまったく別物に見えるのだ。

同じ演出をしていても、演じ手によってまったく違うということか。ならば、ダブルキャストもう一方の虎組はまた全然違うのだろうな、とそちらにも期待が膨らむ。(虎組は公演後半に観劇するので、また改めて書きたいと思う)
※2005年版のときの私の観劇記録はコチラ

カナダ人作家のリー・マクドゥーガルの戯曲で96年の作品。刑務所から出所してきたジャンキーたちの犯罪計画とその崩壊を描くものだけれど、冒頭の4人がゆっくりと歩みを進める登場シーンからまずハッとさせられる。暴力とか血とか、そういうイメージでない、シンプルで洗練された感覚。
花組版の『ハイ・ライフ』は暴力的なテンションとか勢いだけとかで見せるものでない。一つ一つの台詞の意味をちゃんと汲み取り、各場面で男たちの関係性を積み上げていく。それらが折り重なることで、ダメ男たちの気持ちや生き方が見えてくる。1枚1枚本のページをめくるように、男たちのことがわかってくるのがなんともスリリングで、私も前のめりな気持ちで舞台に集中できたのだった。

実は暴力が多いタイプの芝居は苦手なのだけれど、粗野な単語やら暴力のシーンがあったとしても受け入れられたのは、加納さんの演出が持つ力(表面的な暴力描写に流れない、真意をつかんで見せる)だからだと思う。

というか、花組芝居の役者さんって皆さん芝居がお上手だ(なんかシンプルな感想で申し訳ない)。4人全員に、リアルな息遣いが感じられるのだもの。そんなことにも感心してしまう。花組というと様式的な美しさが注目されがちだけれど、リアルに落としこめる演技力の確かさはもっと評価されてしかるべきだと思う。

暴力的でキレがちなバグ(水下きよしさん)と犯罪計画を立てて男たちを巻き込んでいくディック(桂憲一さん)との不思議な「友情」…という言葉では表現しきれない、妙な紐帯のようなものが印象的。そのあたりがうまく表現できてるのもお二人ならではか。
桂さんのディックは皆を引きずりこめるような魅力と不思議な説得力があるようだ。前回ディックを演じた水下さんが今回はバグ。水下さんの存在で芝居のスケール感が大きくなったようだ。

二枚目で女をたらしこむ色気を持っているビリーは美斉津恵友さん。前回公演の各務立基さんが見せた生き急いでる感の嫌な感じとはまた違ったタイプの、刹那的で空虚な面を覗かせるところが面白い。体が弱く弱気なドニーは堀越涼さん。弱いだけでなく、どこか小ずるくしたたかな面も見せる。ビリーがドニーに迫る(?)場面も、心理面が非常に緊密に作られていて、記憶に残る。

それにしても…と思う。人を殺した後も、彼らの非常に特殊な感じの「日常」は続いていく。ヤクをやっているということは、自分の死と隣り合わせ(たとえば、自分が打つヤクの量を間違えたらすぐ死んでしまうし)であるから、人の死に対しても不感症なところがあるのかしら。バグとディックの変わらなさ加減を見て、白々とした寒さも感じるラストシーンだった。

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