« お知らせ | トップページ | 心の奥に響くミュージカル『サイド・ショウ』 »

2010/04/11

世田谷シルク『春の海』

世田谷シルクを見るのは『グッバイ・マイ・ダーリン』に続き2作目。作・演出を担当する(そして、世田谷シルクただ一人の劇団員の)堀川炎さんにとって、初めての完全オリジナルストーリーだそう。それまではいくつかの戯曲・小説をコラージュして新しい世界を生み出すスタイルを取っていました。

『春の海』というのはとても綺麗なタイトルです。
そのタイトルのイメージのとおり、不思議なゆらめきのある作品でした。

芝居のおおまかな展開を書くと……
ある小さい町にある実験教室に集う子供たちと先生の様子が描かれ、そこに、それとは違う年代であろう、その実験教室の様子、そしてテレビ番組のナレーション撮りがカットインの方式で入ってくる。
バラバラのように見えた3つのピースが、後半に一つのつながりを持っていることが明らかになる。

ダム建設によってその町が水の中に沈むことが決まり、フリーのディレクターがドキュメンタリー映像を撮りに来ていたのだ…。実験教室に通っていた子供たちも大きくなり、ディレクターもその一人だった。反対運動をしていたが建設が決まるやすぐ引っ越していった男性や、田舎を嫌って東京に出ていった人もいる。彼らが子供のころの実験教室での様子とダム建設が決まった現在の姿を、一つのドキュメンタリーにまとめようとするうちに…。

こういうあらすじの書き方をすると「八ツ場ダム問題に発想を得た社会派的作品?」と誤解されそうですが、そういう気配のものでなく。

ドキュメンタリーでインタビューに答える一人が「ダムになったと思うのでなく、海になったと思うと気が楽になるでしょ」と答える場面があるのを見て、冒頭や途中(と、ラスト)にあった全員のなんともいえない感じのダンスシーンは海の中のイメージであることに気づくのです。
行動に問題があるらしい「山田君」の姿だけは実際に見せず透明人間形式で演じられたり、沖縄にしかいないはずのヤドカリが頻繁に見つかったり、ちょっとずつのずれや軋みが舞台上に存在します。それが、見る側の心のひっかかりになる。

舞台後半は、過去と現在を細かくコラージュし並列に見せることで、人間の変化というものをつぶさに感じさせます。途中で1.5倍速くらいで演じて見せる、つなぎの場面が何度もあって、それもなんだか面白い。

現実的な内容の話を核として、そこから様々にイメージを広げ、いろんな角度から多面的に描いていく、堀川さんの才気と豊かな感性を感じる舞台です。なんていうんだろう、堀川さんって(どんな方なのかパーソナリティは知らないけど)物事の本質にある美しさにきちんと向き合える人なのかな、と思います、勝手に。

今、自分で書いていて「なんだか」とか「なんともいえない」とか、説明になってない文章が多いことに気づきますが(笑)。言葉にまとめきれない、広がりがあるところが面白い感覚ですね。

装置は、舞台を囲む三方が海の中のようなイメージのイラストで囲まれるもの。
ただ、山田君の言葉が装置に投影されるんですが、装置の絵に混じって非常に見にくい、というのはちょっと気になった。

役者さんでは、堀越涼さんが図抜けている印象。小学校3年生のときの姿と対照的に、ディレクターになってからの内面に持っているであろう葛藤が目線やちょっとした表情に表れてました。後半の現在と過去のコラージュが連続する場面では、目が釘付けになった。(細かいところですが。過去→現在→過去→現在…と繰り返されていくんですが、ディレクターだけが過去に戻ったときの初めの方、現在の自分をちょっと引きずってるんですよね。他の人は完全に過去になってるのに、周りとズレてるの。それが彼自身を表してるようで、とても面白かった)
役者としてはこれからどんどん花開いていく時期になると思うのですが、これからも貪欲に、さらに先を切り開いていっていただきたいです。

他、『グッバイ・マイ・ダーリン』にも出てらした守美樹さんはダンスの動きも魅力的で、どこか静かさがある個性。堀川炎さんは、役者としての出番は少しなのですが、独特の雰囲気をお持ちなので、いつかもっとちゃんと見せていただきたいと思います。

4月10日20時の回を観劇(この日は一日3ステージ! ジャニーズなみ? お疲れ様でした)。前回はなかった紙チケットが今回はあってちょっと嬉しかった(笑)。公演は4月11日まで。

|

« お知らせ | トップページ | 心の奥に響くミュージカル『サイド・ショウ』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/34077/48057165

この記事へのトラックバック一覧です: 世田谷シルク『春の海』:

« お知らせ | トップページ | 心の奥に響くミュージカル『サイド・ショウ』 »