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2009/11/17

心の翼を広げて……大浦みずきさんご逝去

大浦みずきさんが亡くなりました。ただただ悲しく、呆然としています。
私は今まで3回なつめさん(大浦さん)に取材させていただきました。

1度目は「ベルサイユのばら」特集、宝塚OGの方に聞くという企画で。青山円形劇場で取材したのを覚えています。
「今までコスチュームプレイをあまりやっていなかった花組だから、『ベルばら』をやって合うんだろうか、と心配した。歌舞伎のように型が決まっているものだけれど、その枠に全部はまってしまったら自分としては面白くない。ちょっとはみ出して、手を上げてみようかと…天邪鬼なので(笑)。そうしたら、(大浦さんの個性に合わせて)『踊るフェルゼン』になったんです」

というようなことを話して下さいました。

2度目は『NINE』のとき。
以前からワークショップにも参加していたデヴィッド・ルヴォーの作品で、出たいと念願なさっていたそうで、その希望が叶った喜びがインタビューの弾む口調からも伝わってきました。(今、ブログを書くためにそのときのテープ起こししたものを読み返したら、なつめさんの口調が甦ってきて、涙……)
「稽古が始まってから終わる一瞬まで気を抜きたくない。デヴィッドとできるということ、それをちゃんとお客様にお見せできるというのが最高の喜びなので、一瞬一瞬を大切にやって、チタ(・リヴェラ…ブロードウェイ版でプロデューサー役をやった)を追い越してやる! (笑)くらいのつもりで頑張ります」と本当に意気込みを語って下さいました。

一つ印象に残ることがあって。ベニサンスタジオという稽古場で撮影&取材だったのですが、撮影が終わった後に読者プレゼント用のポラにサインしてもらう段取りになったら、そこにテーブルがなかった。「あ、どうしよう…」と思う間もなく、なつめさんはすぐに床にしゃがんで(床を台にして)サインを書いてくださった。そういうことをてらいもなくやって下さる、(こちらの不手際を反省なのですが)さりげなく優しい人柄にとても感動したのを覚えています。

3度目は『DANCING CRAZY』のとき。
宝塚OGによるダンス公演で、記者会見の後の取材でした。皆さんが一同に集まるのはその日が初めてくらいで、共演の紫吹淳さん、湖月わたるさん、朝海ひかるさんがなつめさんと踊れる喜びを全開にして話してらしたのを聞いて、ニコニコしてらした様子が今も思い出されます。
 

元々私は宝塚ファンから観劇人生をスタートしているので、大浦さんの舞台は数多く見ています。
カリスマ性のあるスターだけれど、演技者としてはとても温かみがあるというか、生きた人間の息吹を感じさせる芝居をされていて、それがとても魅力的でした。劇場中の空気を振るわせるような、見ていてため息が出てしまうような、数々のダンスも思い出されます。

花組トップスターとなった後、決して言葉で諭すのでなく自分の行動で人を引っ張っていける方で、とても人望が厚い方だったそうです。実際、大浦さんの背中を見て育ち、花組からトップスターとなった人は、安寿ミラさん、真矢みきさん、愛華みれさん、真琴つばささん、香寿たつきさん、紫吹淳さん、姿月あさとさん、匠ひびきさん……と枚挙に暇がないのです。

また、今は定番となっている「黒エンビで大階段で男役が逆三角形に並び、そのセンターにトップスターが…」というフォーメーションのダンスの元祖は大浦さんです。宝塚の男役の美学を形にして見せた人、とも言えるのではないでしょうか。

発売中のBEST STAGEで小池修一郎先生のインタビューを担当させていただいたのですが、その取材で小池先生が宝塚とであった頃の話を伺いました。
大学生になって宝塚を見始めた小池先生は、唯一同級生にいた宝塚ファンの女性に連れられて当時研2くらいだったなつめさんと会ったのだそうです。「見た目はデヴィッド・ボウイか佐藤史生さんとかのシュール系の漫画に出てきそうな容姿で、寺山修司にかぶれていて、ちょっとアートなことを言う」という大浦さんに会ってとてもびっくりしたそうで、「こんな面白い人がいるなら、宝塚に入団してみるのもよいかもしれない」と思ったきっかけになったそうです。「でも、後でその話を大浦さんにしたら『あまり覚えてない』って言うんですよ(笑)」と小池先生自身もとても楽しそうに語ってらして。
それこそ、ここで小池先生がなつめさんと出会ってなかったら、小池先生は宝塚に入っていなかった可能性もあるわけで…。人の運命って不思議な(でももしかしたら必然の)巡り会わせがあるな、と思いながら、原稿を書かせてもらいました。

今、思えば、なつめさんに直接取材し、インタビュー記事を書かせていただける機会が持てたこと……、これもまた奇跡のようなめぐり合わせだったのかもしれません。
取材でも誠実に人と向かい合って下さる姿勢がとても素晴らしい方でした。でも、決してまじめくさった感じでなく、ユーモアを交えた感じの語り口調がとても温かいのです。

『テンダーグリーン』の「心の翼」の歌が、頭の中をこだまして離れません。

今、なつめさんはあらゆるくびきから解き放たれ、自由に伸びやかに魂を天に踊らせていらっしゃることと思います。

大浦みずきさん、どうもありがとうございました。
心よりご冥福をお祈りします。

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