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2009/11/30

『a Suite』 ドラマティック・カンパニー

ドラマティックカンパニーさんは今回初見。
声優としても有名な中尾隆聖さん、関俊彦さんが率いる劇団で、今回はホテルのスイートルームを舞台にした連作3本(ニール・サイモン作)を日替わりの組み合わせで上演するという趣向。

私が見た回は

『清算』 
出演:中尾隆聖さん、関俊彦さん

この二人芝居がとても面白かった!

実は少人数芝居を観るのはあまり得意ではないのですが、前回ニューヨークで『A Steady Rain』というヒュー・ジャックマンとダニエル・クレイグの二人芝居を見て(英語が難解でよくわからないにも係わらず)、演技の方向性が明確でとても面白く見られたのです。
そのときと同じような「二人芝居の快感」を中尾さん、関さんのお芝居からも感じられました。

横領する管財人と、使い込まれてしまった作家の話なのですが、ただの加害者、被害者という関係でもないのですね。「どちらかが優勢でどちらかが劣勢」という関係が交互に入れ替わっていくそのバランスが絶妙。その間に騙していたほうも騙されていたほうも、どちらもちょっとダメな男の人の哀しさとおかしみが浮かび上がってきます。お二人の力量がとても確かだから、安心して芝居の世界に溶け込んでいけました。

『床の男』
出演:堀本等さん、関根宏次さん、河野智之さん、斉木香さん、井上啓子さん(客演)

床の男って何だろ…?と思ったら、文字どおり床の男でした(笑)。
こちらも達者な皆さんの芝居で、ドタバタしそうなところをきちんと洒落たテイストに仕上げられてましたね(演出は水下きよしさん)。
堀本等さんと斉木香さんの夫婦の会話がコミカルな中にリアルな響きがあり、井上啓子さんの副支配人も面白いキャラでした。

大人で粋な芝居、楽しいですね。

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『トーマの心臓』『訪問者』製作発表会見&取材

スタジオライフ創立25周年記念公演第一弾『トーマの心臓』『訪問者』連鎖公演
そして、
原作者の萩尾望都先生のデビュー40周年記念原画展
の製作発表会見に伺いました。

会場は
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という感じで、まさに『トーマの心臓』の雰囲気にぴったりなところでしたね。

製作発表は、まずスタジオライフ作・演出を務める倉田淳さんと萩尾先生のトークショー。
『トーマの心臓』の製作当時の秘話(そのころ萩尾先生は東京から埼玉の緑の豊かな場所に引っ越した頃で、美しい光景がドイツを描くのに役立ったところもあるかも)や、倉田さんの作られた舞台を見た感想(通常の舞台化は、演出家と作者が別の人だから、演出家が新たな視点で解釈した舞台を作るものだが、倉田さんの場合は原作の世界観を徹底的に追求して下さる。そういう演出家さんはなかなかいらっしゃらないだろう)など、興味深い話が伺えました。

続いて、今年12月池袋西武ギャラリーで開催される原画展の概要の発表と、スタジオライフのメインキャストの皆さんによるご挨拶、写真撮影に。
劇団の代表作でもあり、とても大事にしている作品の上演にあたり、やはり皆さん、やや緊張気味な感じ。言葉の端々に強い意気込みを感じました。

会見終了後、個別取材に。
担当の編集さんはずっと萩尾先生の取材を熱望していて、ついに念願叶って取材ができる…ということで「この仕事が終わったら、もう編集としての夢がなくなってしまうかも…」などと言ってまして(笑)。
実は私も大変年季が入った『トーマの心臓』&萩尾作品マニアで(15歳の誕生日を迎えたとき、「あー、エーリクやユーリより年上になってしまった…。でもオスカーと同い年だからいいや」と思った記憶がある(笑)。15歳くらいからそんな人間でした…)、個人的には非常に感慨深いものがありました。

『トーマの心臓』のリアル・ユーリ、オスカー、エーリクと萩尾先生の4人取材をする日がくるとは……!

取材が始まればそんな感慨に耽る暇もないのですが、限られた時間の中でも、とても充実したお話が伺えました。しなやかで茶目っ気もあって、どこか可愛らしい萩尾先生は本当に素敵な方でした。そして、萩尾先生の言葉を受け止めようと真剣に耳を傾けていらっしゃる、山本芳樹さん、曽世海司さん、松本慎也さんの真摯な姿も印象的です。和やかで笑いもある、楽しい座談会になりました。

雑誌が出るのは来年のかなり先な時期なのですが、発売の頃にあらためてご紹介したいと思いますので、どうぞお楽しみに!

そうそう、編集さんは念願の取材を終えた後、「萩尾先生のロングインタビューがしたい!」と新たな仕事の野望が生まれたようです(笑)。

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2009/11/20

陰影深い「十二夜」スタジオライフ

観劇してからちょっと時間がたっちゃってますが、スタジオライフ「十二夜」ダブルキャストの両チーム観劇しました。

スタジオライフのシェイクスピア劇としては3作目、音楽劇テイストの喜劇としては「夏の夜の夢」に次ぐ2作目。
従来の「十二夜」とは異なる、上演台本・演出の倉田淳さんらしい視点が伺える舞台です。

一つは、「光と影」を前面に打ち出した演出。音楽劇として冒頭から歌っている「人生は雨と風の日があっても、いつか晴れる日が来る」というような内容の歌詞の曲のとおり。
道化フェステを片手が不自由という設定にして、負の部分を強調しています。また、従来はチャリ場の登場人物的に描かれることが多いサー・アンドリュー(青木隆敏)やマルヴォーリオ(坂本岳大)、そしてアントーニオ(牧島進一)の喪失感や悲しみを打ち出してきたことで、喜びに輝く恋人たちとの対照が際立ち、陰影深い作品となりました。
特に印象に残るのは、倉本徹さんのフェステがオリヴィアとマルヴォーリオとのやりとりで凹まされた後に深く沈みこむ一瞬。彼の持つ闇の部分が浮かび上がり、オリヴィアの心理を動かすことになる、その一瞬がとても鮮烈な印象を覚えます。

もう一つは、女性の恋する様をイキイキと描いたこと。利発で強い女性のように見えるマライアがサー・トービーに乙女のような恋心を寄せています。また、前半のオリヴィアは自分の恋心とは裏腹な行動を取っているのですが、内面の心理を歌や踊りで表現することで、恋する女性のパワーを表現。
ヒロインのヴァイオラ/シザーリオは山本芳樹さんと松本慎也さんのダブルキャスト。ナチュラルに可愛らしい松本さんと、心のひだを繊細に描き出す山本さんと、それぞれに違ったアプローチを見せました。オーシーノー(曽世海司)とヴァイオラの二人の場面のロマンチックで切ない表現は、スタジオライフならではですね。

初のオリジナル曲(作曲・林有三)ということで多彩なイメージの曲が使われてます。ミュージカル劇団ではないので、もちろんうまい方ばかりではないけれど、「役者歌」で味があるという感じでしょうか。中ではテーマ曲というべき冒頭の曲や鳥たちが歌う爽やかな感じの曲が記憶に残ります。

上記以外で印象に残った人を上げるとすると、華やかな存在感があるサー・トービーの笠原浩夫さん。恋するオリヴィアの浮き立つ気持ちを鮮やかに演じた及川健さん(←やはり、水を得た魚のようでした)。オリヴィア邸の鳥の皆さんも、ダブルキャストで違うキャラになっていて、なかなか面白かったです。

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2009/11/17

心の翼を広げて……大浦みずきさんご逝去

大浦みずきさんが亡くなりました。ただただ悲しく、呆然としています。
私は今まで3回なつめさん(大浦さん)に取材させていただきました。

1度目は「ベルサイユのばら」特集、宝塚OGの方に聞くという企画で。青山円形劇場で取材したのを覚えています。
「今までコスチュームプレイをあまりやっていなかった花組だから、『ベルばら』をやって合うんだろうか、と心配した。歌舞伎のように型が決まっているものだけれど、その枠に全部はまってしまったら自分としては面白くない。ちょっとはみ出して、手を上げてみようかと…天邪鬼なので(笑)。そうしたら、(大浦さんの個性に合わせて)『踊るフェルゼン』になったんです」

というようなことを話して下さいました。

2度目は『NINE』のとき。
以前からワークショップにも参加していたデヴィッド・ルヴォーの作品で、出たいと念願なさっていたそうで、その希望が叶った喜びがインタビューの弾む口調からも伝わってきました。(今、ブログを書くためにそのときのテープ起こししたものを読み返したら、なつめさんの口調が甦ってきて、涙……)
「稽古が始まってから終わる一瞬まで気を抜きたくない。デヴィッドとできるということ、それをちゃんとお客様にお見せできるというのが最高の喜びなので、一瞬一瞬を大切にやって、チタ(・リヴェラ…ブロードウェイ版でプロデューサー役をやった)を追い越してやる! (笑)くらいのつもりで頑張ります」と本当に意気込みを語って下さいました。

一つ印象に残ることがあって。ベニサンスタジオという稽古場で撮影&取材だったのですが、撮影が終わった後に読者プレゼント用のポラにサインしてもらう段取りになったら、そこにテーブルがなかった。「あ、どうしよう…」と思う間もなく、なつめさんはすぐに床にしゃがんで(床を台にして)サインを書いてくださった。そういうことをてらいもなくやって下さる、(こちらの不手際を反省なのですが)さりげなく優しい人柄にとても感動したのを覚えています。

3度目は『DANCING CRAZY』のとき。
宝塚OGによるダンス公演で、記者会見の後の取材でした。皆さんが一同に集まるのはその日が初めてくらいで、共演の紫吹淳さん、湖月わたるさん、朝海ひかるさんがなつめさんと踊れる喜びを全開にして話してらしたのを聞いて、ニコニコしてらした様子が今も思い出されます。
 

元々私は宝塚ファンから観劇人生をスタートしているので、大浦さんの舞台は数多く見ています。
カリスマ性のあるスターだけれど、演技者としてはとても温かみがあるというか、生きた人間の息吹を感じさせる芝居をされていて、それがとても魅力的でした。劇場中の空気を振るわせるような、見ていてため息が出てしまうような、数々のダンスも思い出されます。

花組トップスターとなった後、決して言葉で諭すのでなく自分の行動で人を引っ張っていける方で、とても人望が厚い方だったそうです。実際、大浦さんの背中を見て育ち、花組からトップスターとなった人は、安寿ミラさん、真矢みきさん、愛華みれさん、真琴つばささん、香寿たつきさん、紫吹淳さん、姿月あさとさん、匠ひびきさん……と枚挙に暇がないのです。

また、今は定番となっている「黒エンビで大階段で男役が逆三角形に並び、そのセンターにトップスターが…」というフォーメーションのダンスの元祖は大浦さんです。宝塚の男役の美学を形にして見せた人、とも言えるのではないでしょうか。

発売中のBEST STAGEで小池修一郎先生のインタビューを担当させていただいたのですが、その取材で小池先生が宝塚とであった頃の話を伺いました。
大学生になって宝塚を見始めた小池先生は、唯一同級生にいた宝塚ファンの女性に連れられて当時研2くらいだったなつめさんと会ったのだそうです。「見た目はデヴィッド・ボウイか佐藤史生さんとかのシュール系の漫画に出てきそうな容姿で、寺山修司にかぶれていて、ちょっとアートなことを言う」という大浦さんに会ってとてもびっくりしたそうで、「こんな面白い人がいるなら、宝塚に入団してみるのもよいかもしれない」と思ったきっかけになったそうです。「でも、後でその話を大浦さんにしたら『あまり覚えてない』って言うんですよ(笑)」と小池先生自身もとても楽しそうに語ってらして。
それこそ、ここで小池先生がなつめさんと出会ってなかったら、小池先生は宝塚に入っていなかった可能性もあるわけで…。人の運命って不思議な(でももしかしたら必然の)巡り会わせがあるな、と思いながら、原稿を書かせてもらいました。

今、思えば、なつめさんに直接取材し、インタビュー記事を書かせていただける機会が持てたこと……、これもまた奇跡のようなめぐり合わせだったのかもしれません。
取材でも誠実に人と向かい合って下さる姿勢がとても素晴らしい方でした。でも、決してまじめくさった感じでなく、ユーモアを交えた感じの語り口調がとても温かいのです。

『テンダーグリーン』の「心の翼」の歌が、頭の中をこだまして離れません。

今、なつめさんはあらゆるくびきから解き放たれ、自由に伸びやかに魂を天に踊らせていらっしゃることと思います。

大浦みずきさん、どうもありがとうございました。
心よりご冥福をお祈りします。

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2009/11/09

サボテンとバントライン

青山円形劇場で観劇。
ちょっと残念でトホホな感じの高校生時代と、気づけば何物もつかめていない苛立ちを持った30代を行き来する物語。
大体実年齢30代くらい(なのかな?)の役者さんたちが、リアルな高校生を演じるのが面白い。ちゃんと力技で高校生に見えるのですね。
「今、悩んでいることの答えの殆どは映画の中にある」というような言葉も。

たとえば突然始まる冒頭や、エロ本を破きながら円形劇場いっぱいに走り回る役者さんたちに、演出・福原充則さんの演劇的なパワーを感じる。やむにやまれぬエネルギーというのかな。

ラストシーンはどう解釈すればいいのか。やっていることを額面通り受け止めると犯罪(^^;ゞだけど、何かにぶつけざるを得ない衝動を表現したものと思えばいいのでしょうか。

どう見てもカッコイイ要潤さんが映画オタクな高校生→イケテナイ30代を演じて、これがなかなか面白い。
小野健太郎さんは「ちょっとカッコイイ」役(笑)(劇中言)。少年性が前面に出ていて、芝居をよりイキイキしたものにさせていたように思う。
いじめられっ子役の今野浩喜さん(お笑いの方だったんですね……すみません、お笑いとかにうとくて存じ上げず)の得意な存在感も印象的。

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2009/11/01

組曲虐殺

銀河劇場で観劇。
井上ひさしさんの新作で、プロレタリア文学『蟹工船』で有名な、小林多喜二を描く。
登場人物は6人だけ。ジャズ・ピアニストの小曽根真さんが作曲、ナマ演奏がとても魅力的。

官憲によって虐殺された多喜二の生涯…というと、重い作品を想像するけれど、当時に生きる庶民のささやかな日々を丁寧に、軽やかに描き出していた。そこから逆に、自由を求めてやまない人たちの切実な思いが浮かび上がってくる。3時間15分。胸に迫ってくる芝居でした。

井上芳雄さんは、ひょうひょうとした風情の中に心の奥にある強い芯を感じさせる。1幕ラスト近くの長い独唱に思いがこもり印象的。演技者としてまた一つ成長されたのではないかと思います。
地に足がついている高畑淳子さん。プロレタリアの同志として多喜二と寄り添って生きる女性を演じた神野三鈴さん、女心が切々と伝わってきる。石原さとみさんが演じる婚約者も初々しく清らか。
山本龍二さん、山崎一さんが演じた特高警察も、ただの悪役でなく、当時に生きる庶民の一人として描いていたのも井上ひさしさんらしい視点。

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