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2009/10/26

花組芝居「ナイルの死神」初日

リアルから遠ざかることで、よりリアルになる。
ゴージャスできらびやかで技巧的な、面白い舞台でした。

花組芝居の新企画KABUKI-ISM。「翻訳劇を歌舞伎で演じる」というもので、今回はアガサ・クリスティの『ナイルの死神』(映画版タイトルは『ナイル殺人事件』)を取り上げています。
初日の加納幸和さんのご挨拶によると「新しいことをやってないと死んじゃう(笑)」とのこと。
確かに新しい。だって、洋装で白塗りですもの(笑)。台詞回しも幕切れなどは歌舞伎的な謳い方をしているところもあって(全編ではない)とても不思議な感覚です。

ナイル川クルーズの船中で繰り広げられる殺人事件の物語ですが、謎解きよりも人間ドラマに目をいきます。
目にも鮮やかな、怪しい(笑)登場人物たちが、キャラクターも色濃く出てくるのが、なんとも面白いのです。特に1幕はいわゆるグランドホテル形式だけれど、歌舞伎の顔見世のよう。きちんと時代性が出せているのも、花組芝居が今まで培ってきたものなのでしょうね。

最近はオールメール(男性のみ)の舞台も増えているけれど、それらは基本的に「女性らしく演じない」「自然に」という演じ方をしているものなので、逆に女形で演じているのが新鮮に映ります。

特に、ケイを演じている八代進一さんの美しいこと! パンフレットでの対談で山田和也さんが「綺麗な女の子が出てきて、美女が殺されてこその芝居なのに、男性がやるなんて無茶ですねえ(笑)」というようなことをおっしゃってるのですが、むしろ、普通にきれいな女優さんがやるより、おそらくずっと美しく「見えて」いると思う。
現実から飛躍した非現実の美しさを目の当たりにできるのは、演劇を見る醍醐味でもあると思うのです。

そして、ジャクリーンの加納幸和さん。こちらは、冴え冴えとした月のような美しさ。(白い細身のドレスがピッタリ)
「暗い感じの人」という説明の台詞もあるけれど、加納さんが演じると嫋嫋としているだけでない、そこにどこか力強さも加わるのですね。ラストにはジャクリーンの悲しさが浮かび上がってきます。

北沢洋さんのいかにも怪しい感じのメイドや、秋葉陽司さんのこってりした風情の老婦人、驚異的に初々しい娘ぶりの大井靖彦さんも含め、花組芝居の多様な女形芸を堪能できる舞台でした。

普通の女性じゃない、より女性性を誇張された女形さんを相手にするのは、きっととても難しいことだと思います(宝塚の男役と組む娘役のように)。普通よりも男性性を前に出してこないといけないと思うし。ケイとジャクリーンから愛されるサイモンは小林大介さん。初日に見たときは二人とのバランスからするとちょっとナチュラルに傾いてるかな? とも思ったのですが、2日目はより押し出し強く、陰影深く演じられているように感じました。きっと日を重ねるごとにさらに素敵になっていくと思うので期待。

桂憲一さんのスミスは若くて青い感じがチャーミング。どこか色っぽい感じがするのが魅力的ですね。ペンファーザー司祭の原川浩明さんは、ジャクリーンとの対決する場面が緊迫感があり、その奥にある懐深い愛情が感じられました。ドクトル・ベスナー「赤っ面」水下きよしさん(医者なのに、アガサなのに赤っ面!)は、舞台に厚みを加えてくれますね。ヌビア人客室係の谷山知宏さんは、もう、全身が可愛い(笑)。肉体表現を駆使しつつ、芝居中にチョコチョコ動き回る姿は良いアクセントになってました。磯村智彦さんはアラビアのロレンスみたいな素敵な衣裳のマクノート。日替わりのアドリブも。何しろ周りの皆さんが強力なので、もう一歩前に出るパワーがほしいところ。

エジプト的なエキゾチックな雰囲気のある音楽(坂本朗さん)。岡田嘉夫さんの宣伝イラストを見事に立体化した衣裳が非常にゴージャスで美しいです。そして小道具のバッグ類もとても工夫があって、たとえばケイのご祝儀袋形バッグ、クリスティーナの蟹形バッグ(なぜ蟹?)、ジャクリーヌの扇形バッグなど、それぞれのキャラに応じて和風だけど意表をついてるところがとても面白い。視覚的にもとても楽しめる舞台です。

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