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2009/08/30

RENT The Broadway Tour千秋楽

何度か劇場に足を運んできたRENT The Broadway Tour、千秋楽も見てきました。

舞台も素晴らしい出来で、お客様のテンションも高く、まさに舞台と客席と一体になったような感動的な千秋楽でした。
最後のカーテンコールでは、特別にSeasons of Loveをアンソニー・ラップと高良結香さんのソロで歌ってくれました。

見ている間にもいろいろ感じることがあって…。
「Over the moon」の前の「Christmas Bells」で様々な人間を音楽と動きで完璧に描き出した、Jonathan Larsonの才能に改めて感服し。
「What You Own」を歌う、アダム・パスカル(as ロジャー)とアンソニー・ラップ(asマーク)の内面の全てを出し尽くすような歌唱に圧倒され。7ヶ月のアメリカ公演のあと、気候も何もかも違う日本に来て、地震も台風も(笑)経験して、これだけのパフォーマンスを見せられる2人の実力と精神力にノックアウトされました。

RENTは観劇したという感じじゃなく、体験してきた、というふうに思っちゃうのですよね。
エンターテイメントという範囲を超えて、人間がどう生きるべきか、自分自身に突きつけられている気持ちになるのです。作者、ジョナサン・ラーソンが訴えたかった今しかない、今を精一杯に生きなければ、というメッセージを、出演者が体現しているから、自分の問題として考えてしまうのかも。
「No day But Today」この言葉を深くとらえて、自分の生き方に生かしたい、と思います。真面目に。

日本のミュージカル俳優の方も何人かお見かけしましたが、この舞台から何かを受け取って、日本のミュージカルをより豊かなものにしていただければな…なんて思います。

余談ですが、今日劇場でお会いした私のNY友のmさん。1996年にニューヨークのイーストヴィレッジ、アベニューCに滞在していたそうで(@_@)。(そのころ、日本のお嬢さんであのあたりに滞在した人は結構珍しいはず)当時はジャンキーの人が大勢いて、「麻薬を買うお金をねだりに来る人が家に来ても、ドアを開けちゃだめ」と言われていたとか。(でも危害を加えるような人はいなくて、危ない思いはしなかったそうです)「その頃、ジョナサン・ラーソンが近くにいて、この作品を作ってたんだなと思うと…」なんて言っていて、偶然に千秋楽に貴重な話が聞けました。

舞台にあるクリスマスツリーのオブジェ、あれのモデルになったものって、mさんが滞在していたあたりにあったという話を聞き、それもびっくり。アルファベットシティ滞在当時、毎日それを見てたんだそうで。調べるとどうやら今もあるらしいので、次回ニューヨークに行くときにはぜひ見てきたいと思います。

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2009/08/26

世田谷パブリックシアター『ドリアン・グレイの肖像』

『ドリアン・グレイの肖像』を観劇。
ぐるぐると廻る装置の、ゆがんだ、不安定な形を見るうちに、自分の心の不安も煽られているような気持ちに。

「自分が年を取り醜くなる代わりに、肖像画が醜くなればいいのに」という言葉が実現してしまった青年ドリアン・グレイ……という、寓意的な物語。
ドリアン・グレイと彼を快楽・悪徳の世界に導くヘンリー卿、そして美しいドリアンをどこかで崇めているバジルとの、いわば三角関係のようなところもあって。

原作小説は未読で、以前宝塚版とスタジオライフ版は観劇したことがあるが、予想よりもヘンリー卿の比重が多いという印象。山本耕史さんのドリアン・グレイと、加納幸和さんのヘンリー卿との台詞のやりとりの緊密さに思わず引き込まれる。演技的に引き合うものが多いのか、今までに見たことがない山本さんの芝居をヘンリー卿加納さんが引き出しているようにも見受けられる。(1幕の最後とか、はっとさせられる瞬間も)
2幕のラストも衝撃的。

「美しい人」を飾って演じたらちょっと気持ち悪いけど、シンプルに大胆に演じることで、より本質に近づけるのかな。
肖像画の変化を観客の想像力に委ねる演出は、お見事でした。(でも、わからない人もいるかも…)

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2009/08/23

劇団四季『春のめざめ』2度目の観劇

9月5日に終幕が決まってしまったので、慌てて2度目の観劇に向かった『春のめざめ』。

ブロードウェイ2007年版の観劇の感想はコチラ。ブロードウェイ2008年版の短い感想はコチラ
劇団四季版1回目の感想はコチラ
全般的な話は上記参照していただくということで、今回感じたことを。

いや~、芝居は生きてますね。初日が開いてから約3ヶ月、回数を重ねることによって、本当に良いカンパニーになってました。
初回観劇のときに、「前半にもっと衝動がほしい」ということを書いたのですが、「ブチきれそう」の曲でも若い人のパッションがほとばしってるのをひたひたと感じて、「おおっ、変わった!」と思いました。

そして、メルヒオールとモリッツとヴェンドラの物語(あと、ハンシェンくらい?)のように思っていた作品が、男子学生6人全員のキャラがキラキラしてるのが伝わってきて、群像劇的なところも感じられたのも発見でした。一和洋輔さんのハンシェンのクールに大人びた雰囲気を装っているところとか、白瀬英典さんのゲオルグの豊かな歌声と「ブチきれそう」で女教師の胸を歌うときの嬉しそうな(笑)ところとか、加藤迪さんのオットーの「女の子にモテたい」みたいな素朴な男の子らしさとか、伊藤綾祐さんのエルンストのナイーブさとか、きっちり役柄を見せてくれたことで、男の子たちの生きる姿を描く作品の奥深さがより明確になったと思います。

三雲肇さんのモリッツは初見で、結構繊細に作られている印象です。最後の場面ですーっとバックしていくところの、無表情な中に(表情変えられない設定なので)迫る思いを感じて印象的でした。

今回初めて気づいたんですが、この作品中で上着を脱ぐ=何か脱皮するというか、精神的にも脱ぎ捨てる、という意味がありそうですね。メルヒオールが真情を吐露する場面の前に上着を脱いでたり。その中で、(おそらく…私が気づいた範囲で)一度も上着を脱げなかったモリッツに気づいて、切なくなりました。

ハンドマイクを胸から取り出して歌うことによって、内面に隠された気持ちを吐露することを象徴するという演出がされてます。でも、ラストの「パープルサマー」では、皆さんハンドマイクなしで歌ってるのですね。彼らがしてきた経験によって、一歩大人になって前に向かっていけたのだ、というのもハンドマイクなしで表しているのかな…と。

そういう部分まで細やかに、繊細に作られている作品なのだなということも改めて感じたし、心情の部分をしっかりと突き詰めて(勢いだけでなく)演じた劇団四季版も個人的には好きだな、と思います。
(もちろん、Jonathan Groff版も好きだけど!(笑))

そして、やっぱり柿澤勇人さんのメルヒオールは良い! 先日のフジテレビ「どーも☆キニナル」で柿澤さんメインで『春のめざめ』を特集されていたのを見たのですが、人間国宝・清元志寿太夫のひ孫だったのですね。
(確かに「柿澤」さんだ) そういわれてみると、志寿太夫のカンの高い声と通じるものがある…かも……。
何かを求める気持ちがとても強い、内にパッションがあるメルヒオールでした。

9月5日に自由劇場での公演が終わってしまうのは残念ですが、この作品を劇団四季でやったことに意味があると思うし、ぜひまた東京以外ででも『春のめざめ』の世界を広げていってほしいと思います。

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2009/08/22

ロフトがある楽屋

昨日、『ワンダーガーデン』公演中の花組芝居・植本潤さんの楽屋に雑誌の取材でお邪魔してきました。
劇場のシアター711は元映画館だったそうで、席数80くらいのコンパクトな劇場。楽屋も通常の楽屋とは違って、中にロフトがあったりしてちょっと不思議な空間でした。
「大原さん、(冷房)寒くない?」、取材中にも途中で空調の温度を変えてくれたりして、いつも細やかなお気遣いがある植本さんでした。大ざっぱな私としては見習わなければと思いました(笑)。
聞けば、シアター711を選んだのも植本さんだとのこと。「皆、この劇場が大好きになってくれた」そうで、『ワンダーガーデン』の世界と劇場の雰囲気と合ってたんでしょうね。

取材の後、(元々その日にチケットを手配していたので)『ワンダーガーデン』を観劇。
2度目の観劇はさらにいろんなエピソードが自分に染み込んできて、良い芝居だなとしみじみ。

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2009/08/19

20年です

『ワンダーガーデン』花組四獣の皆さんの20周年記念、ということで、パンフレットに50人からのお祝いコメントを…というのに、私も書かせていただきました。
思えば、彼らが初舞台を踏んだころから花組芝居を見ているので、私も花組観劇歴20周年ですか(ビックリ)。

桂さんと終演後、「この20年の間にお互い飼っていた猫(ウチは犬)も天国に行っちゃったけど、今は新しい子がいるよね~」なんて親バカ話をしてて、その後に、ふと思ったのですが。

パンフレットに載っている20年前の同期の写真、というのは、花組芝居が最初に出した写真集に元々載っていた写真で、その写真集で加納幸和さんと篠井英介さんと対談なさっていた中島梓さんもこの6月に他界されましたね。
私がかつてよく一緒に花組芝居を観劇していた方も、昨年他界しました。帝劇『好色一代女』を一緒に観に行って、植本さんのパンフ写真を見て「花組芝居にも女優がいるのね」と言った(笑)ウチの母も、今は天国にいます。

4人の女性の生きる姿を描く作品だから、生きるってなんだろう、と生と死の狭間にあることを考えさせられもします。
うまく言えないけれど、命あって20年芝居を見せ続けて下さった四獣の皆さんにも感謝。なんとか20年生きて舞台を見ることができた自分にもエール(笑)。
そして、いろんなご縁でつながっている方々にも感謝です。改めて。
人様の20周年に便乗して、振り返ってみました。

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ワンダーな四人芝居~花組四獣『ワンダーガーデン』

花組芝居の同期4人、植本潤さん、大井靖彦さん、桂憲一さん、八代進一さんが花組入座して20年を記念しての公演。
でも、記念公演であってもいわゆる「ぬるい」ところはまったくなく、演劇的にもとても刺激的な芝居だった。作・演出はわかぎゑふさん。

4人が演じるのは、大正末から昭和初期にかけての20年を生きる四姉妹の物語。(正確に言うと、3姉妹+兄が結婚することによって義妹になった人の話)
なのだけれど、その4姉妹の恋人や夫を一人二役で演じるという趣向。
芝居は彼らの家の庭が舞台で描かれている。この庭の装置がちょっとパウル・クレーの絵みたいな感じで、抽象画の世界にいるようで面白い。衣裳も、時代がかった衣裳ではなく、白のシャツとスカートの組み合わせで、男女の早替わりも見せる。

昭和デモクラシーが盛んになっていく時代、女性の生き方を描くが、それがウェットなものにならないのは、男性の肉体で演じられているから。役に対して客観性が生まれるから、逆に女性の私としては共感を持って見られるのだ。
20年かけていろんな経験を経て、いろんな傷を負って、でも伸びやかに生きていく様子がとても好ましく素敵だなと思う。

また、時代がかった衣裳や装置に頼らなくても、ある種クラシックな、「その時代に生きた人」感が出せるのは彼らが花組芝居で長年培ってきた経験によるものだろう。

とても普遍的な魅力のある戯曲だけれど、では、他に誰が演じられるか……と思うと、男女を難なく演じられて、しかもリアルに落とし込めるこの4名以外はなかなか思い当たらない。そう思うと、大変贅沢な作りの公演だし、そこは「記念公演」ならではのことと思う。

四人姉妹のキャラも際立っている。植本さんの義妹・桜がぼーっとした少女から鮮やかに変わっていく変遷、大井さんの三女・葉月の職業夫人としてつややかに生きる力強さ、八代さんの次女・薫子の庭を守り、秘めた思いを貫く切なさ、桂さんの長女・千草の、軍人の夫にただ従うだけではない、一生懸命夫を愛するいじらしさと可愛さ……。全部の役についていろいろ書きたくなるくらい、素敵な芝居を見せてもらった。

冒頭に「演劇として刺激的な」と書いたけれど、役者の技量を問われる芝居でもあるのに、いわゆる「ガチンコ勝負」的な感じ(私がうまいのよ、的な?)にならないのも、とても良いなと思う。それぞれが役として緊密に、密接に作り上げられているのも、4人の絆を感じられて面白い。

最後の趣向は、花組を長年見ているお客さんにとっては「あっ」と驚くものだが、これもやはり20周年ならでは。最後の挨拶で「公演が終わるまで、ラストはブログとかに書かないで下さい!」と八代さんがおっしゃってたので(笑)、どんな内容かは千秋楽26日以降に書き足します。ここで一気に4人の役者としての20年間も振り返れて、感動的な終幕でした。

8月17日の初日を観劇。公演は26日まで。下北沢・シアター711。売り切れで当日券が出ない日もあるようですが、興味を持たれた方はぜひ。

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2009/08/17

劇団鹿殺し「赤とうがらし帝国」

お盆の最中に鹿殺し「赤とうがらし帝国」を見る。
お盆の最中だから、ということもないんだろうけど、なんだか「魂鎮め」の芝居のような気がしてしまう。

裸の男性4人が並んでいるチラシにも意味があったのだな。
自分の身近な人が亡くなったら、自分の骨になり、自分を後押ししてくれる…という話。チラシの4人の男性は、主人公タエの周りにいた、骨になった男性たち。

亡くなった人の魂を鎮め、そしてそれを自分に取り入れて前に進む……うーん、なんだか切ない。
けれど、それが実感に落ちるところもあるというか。
劇中に地震、そしてインフルエンザで多数死亡し…という設定が出てくるけれど、やはり(関西出身の劇団だから)阪神淡路大震災での体験も影響しているところがあるように思う。

このテーマでありながら、劇中には「ミュージカルごっこ」のシーンとか歌う場面も多く、音楽劇的な面も。骨を鳴らす音楽シーンは面白い。
どこかマイナーな陰りを持ちつつ、でも、勝とうとする(自分に?)パワーを持つ菜月チョビさんのタエ。歌声が魅力的だ。
タエの五番目の骨になってしまう息子アユムを演じる谷山知宏さん。ああいう子供をさせたら、ピカイチ。ラストの骨ダンスがカッコイイです。そして、数えられないくらいたくさんの役をやってらっしゃる(プロレス技も)。

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2009/08/14

スタジオライフ「フルーツバスケット」稽古場に

昨日、Studio Lifeの第7期、ジュニア7の皆さん(荒木健太朗さん、大沼亮吉さん、関戸博一さん、松本慎也さん、三上俊さん、吉田隆太さん)の取材に稽古場まで伺いました。
ライフの次回公演「十二夜」の話を中心に、「雪月花」という音楽ユニットをスタートするということで、その話を交えつつ、いろいろと本音(?)を語っていただきました。暑い中、外で撮影させていただいたのですが、ちょっと「スタンド・バイ・ミー」みたいな感じのカッコイイ写真が撮れたんじゃないかと思います。
この6人で取材というと……、4年くらい前「ジュニア7が初めて雑誌登場!」というのを私が担当していたことを思い出し、取材前に昔の原稿を読み返しました。(そのときは7人いらっしゃいましたが、一人退団されて現在6人)いい意味でそのときと変わらない、良い関係性を6人で築いてらっしゃるなと感じます。

終わった後、「(後でテープ起こしするときに)6人の声、聞き分けられますか!?」と心配して下さった松本さん、ありがとうございます(笑)。聞き分けられます……ステレオで録音してるので(←と言って、ボケておきました)。


引き続き、名古屋公演「フルーツバスケット」の稽古場にお邪魔させていただきました。
スタジオライフの稽古場は何度かお邪魔したことがあるのですが、通し稽古などが多くて、倉田淳さんが直接演出しているらっしゃる様子は拝見するのは、今回が初めて。
1幕後半の数場面を通して演じるところからスタート。「気持ちを大事にしてやって下さい」と倉田さんがおっしゃって始まりました。舞台上では0コンマ何秒の一語一語が、すべて気持ちから発声している、心情とリンクして動きや口調があるのだ、ということがよくわかる演出でした。そして、役者さんに優しい演出家さんだなあ……ということも感じます。

「気持ちが大事」それは私の仕事もそうだな、と思って。自分にとっても刺激をいただいてきた、稽古場でした。

どこの稽古場に行くときも、「芝居と関係ない、テンションが違う人間がいて、申し訳ないな」と若干恐縮した気持ちになるのですが、舟見和利さんや篠田仁志さんなどが「おはようございます」と声をかけてくれて、緊張をほぐして下さいました。優しい心遣いにも感謝です。

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2009/08/12

二宮和也さん主演「見知らぬ乗客」

とっても貴重なチケットの公演『見知らぬ乗客』(東京グローブ座)を、先週観劇。

原作は『リプリー(太陽がいっぱい)』のパトリシア・ハイスミス。ヒッチコックが映画化もしている原作を1995年にクレイグ・ワーナーが戯曲化したものを上演。演出はロバート・アラン・アッカーマン。

列車の中で偶然出会ったブルーノ(二宮和也)とガイ(内田滋)。ガイが悪妻に愛想をつかしていることを知ったブルーノは自分が憎んでいる実の父との交換殺人を申し出る。ある種ストーカーのようにガイを追い続けるブルーノ。そこには「交換殺人を果たしたい」という気持ち以上のものもあって…。

場面展開の多い芝居だが、盆回しで舞台装置を回しながらスピーディに展開する。しかし、それは舞台転換だけではなく、ブルーノ自身の内面が陥っている迷宮も表現しているのだと思う。
(途中メリーゴーラウンドに乗るシーンも出てきて、その音楽がラスト近くにも使われているのも象徴的だ)

二宮和也さんのブルーノ。アル中でいっちゃってる感じももちろん、それ以上に母親に「飲まなければ生きていけないほど繊細」と言われるように、ナイーブでデリケートな感覚がダイレクトに伝わってくる。痛いくらい。盆が回っていき見切れようとする瞬間に見せる表情の変化にハッとしたところも。

この人の心の闇は死をもってしか決着がつかないほど深いのか、と思わせる結末。なぜそこまで実の父親を憎むのか、そしてガイに対する思いは何だったのか…? と観終わった後にもいつまでも後を引いて考えさせられる芝居だった。

ブルーノを恋人のように扱う母親役の秋吉久美子さんは鮮やかな存在感を見せ、内田滋さんはブルーノが執着するだけの魅力を感じさせた。ブルーノとガイの関係は、同じ作者の『リプリー』の男性二人の関係とちょっと似てる気がする。この二人の精神がギリギリまで追い詰められている様を克明に見せる演出は、アッカーマンならでは。

セットや衣裳はモノトーン。本来は色がついているであろう花のレイも黒。ヒッチコックの白黒映画のイメージでもあるが、主人公の目から見た世界はこんなふうにモノトーンに映っていたのだろうか、とも思う。

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2009/08/10

世田谷シルク「グッバイ マイ ダーリン」

花組芝居の堀越涼さんが出演するという世田谷シルク「グッバイ マイ ダーリン ~セクキャバに通うお母さんのお話~」へ。

世田谷シルクは今回初観劇。サイトを見ると、劇団員としては作・演出・出演をされる堀川炎さん一人のようです(以前は劇団員さんが何人かいらしたようですが)。

劇場は下北沢・楽園。階段を下りて地下に行って、密室感のある小屋でセクキャバの話を見る…というのは、なかなか相応しい気がします。

「楽園の形状から(客席が左右に分かれている)能狂言舞台を連想し…」という堀川さんの言葉を今サイトで読みました(汗)が、見てる間はあまり能・狂言舞台からの発想はあまり気がつかなかったです…。しいていえば(今思えば)、橋懸かり的に下手通路から登退場するところとか?

寺山修司の「アダムとイブ、私の犯罪学」を下敷きに、親子4人が住む2階と、その真下にあるセクキャバ(セクシーキャバクラ)とが行き来し、時に絡み合う話。両方を貫くキーになるのは「リンゴ」なのかな。アダムとイブが食べて楽園(!)を追放されるきっかけとなったのがリンゴ。この舞台ではセクキャバに通う男性たちがリンゴをキャバ嬢にプレゼントし、キャバ嬢たちの着るドレスもリンゴの赤色で、ときにはキャバ嬢たちがリンゴそのものにもなる。

寺山原作を解体し、イメージを膨らませて、コラージュしている作品なので、言いたいことがつかめているかどうかは分からない(多分分からなくてもいい…かな…? ある種の混沌を見せるものだと思ったので)けど、演劇的にハッとする瞬間が何度かあって、なかなか面白かったです。

セクキャバに通うお父さんと、その妻でリンゴを盗んでくるお母さんを堀越さんが演じてます。冴えない系のお父さんから、目深にかぶった帽子を脱ぐとお母さんに替わる瞬間、歌舞伎のぶっかえりのような鮮やかさに驚きました。
台詞回しにちょっと誇張があり、ある種の時代感・クラシックさもあり、もちろん男性が演じているということで、寺山特有のいっちゃってる感じのお母さんも、客観的に見られるようになるんだな、というのは改めて感じたことで。「私はこんなところで終わる女じゃない!」(引用不正確)と言うところで、私のそばで見てた、お母さん世代の女性が笑ってらしたんですが、多分リアルだと受け止めがたいところも男性の肉体が演じることで、笑えるくらい客観的になれるんだなあ、なんてことも思いました。

この役を20代の女優さんが演じられるか…と思うとなかなか成立し得ないと思います。そういう意味では「妖艶な」女性を圧倒的に演じてみせた堀越さんの力量も感じる公演でした。

振り付けは独特のセンスがあって、狭い楽園の舞台をダイナミックに見せる手腕は目を見張るものがあります。小刻みな動きも、なんだかカワイイ。
2階の一家の場面で、リンゴになったキャバ嬢たちが、ト書きや擬音を口で言う手法が面白く(電車の音を「デンシャデンシャ」と言うのとか)、後半になるにつれて、それが効果的に使われていて、ちょっとぞくっとさせられました。

2階の一家のドラマチックさに比べると、階下のセクキャバの世界は対照的にわりとゆるやか。原作の設定ではトルコ風呂だったそうですが、そのへんの生々しさがないのは、女性演出だからかもしれないし、それがいまどきの女性像なのかもしれません。個人的にはもうちょっと色濃く描いてくれたほうが好みですが。

今回は堀川さんの出演時間が短かったのですが、普段は一人芝居などをされているようなので、次回は演じてらっしゃるところもちゃんと見てみたいかなと思いました。

やや余談ですが。エコのため配布チラシをやめる、という決断は良いと思いますが、チケットは作ってほしかったかな(笑)。そこは省かない方が良い部分の気がします。

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2009/08/09

RENT The Broadway Tour 初日 観劇しました

ブロードウェイのオリジナルキャストであり、映画版「RENT」にも同じ役で出ているアダム・パスカルAdam Pascal、アンソニー・ラップAnthony Rappが出演する「RENT」。赤坂ACTシアター公演の初日に行ってきました。

…すごい公演でした。
「No Day But Today」今このときを精一杯生きるしかないというメッセージがダイレクトに伝わるのと同時に、ロックの激しい音楽に頭の中をかきまわされて。

私はアンソニー&アダムが10年ぶりにブロードウェイの「RENT」に復帰した公演(2007年)のときもニューヨークで見ているのですが、個人的には今回のツアー版のほうが素晴らしいと思う。正直な感想としては、アンソニーとアダムは素晴らしいけれど、周りのキャストが彼らに比べてちと落ちる? というのも当時感じていたのです。今回は、オリジナルキャストの二人と既に7ヶ月間公演を重ねてきただけあって、二人との落差を感じることがなく、カンパニーとしての魅力も強く打ち出されていたので、このレベルの来日公演を見られることはまさに「奇跡!」と思ってしまいます。

初日はやはりファンの方が多かったせいか、冒頭のアダムとアンソニーが出てくるところから客席総立ちになるほど。
この後何回か見るので(今月の私はレント貧乏です!(笑))またおいおい書きたいと思いますが、まさに彼らのリアル・マーク、リアル・ロジャーの細かい感情のゆれ一つ一つに、「ああ、こうだったんだ…」と新たな発見がありました。
アンソニー演じるマークの、例えば、ミミが麻薬を売人からもらっているときの悲痛な表情だったり、LA VIE BOHEMEで弾ける表情だったり。I'M HERE …NOWHEREというのときのなんとも言えない苦味だったり。マークの心の振幅が、そのまま彼の人となりを表現していました。
アダム演じるロジャーの、最後の「奇跡」を起こすシーンの「ミミー!」という歌声(叫び?)に、奇跡を呼び起こすほどの力があることにも圧倒されました。

いろいろ書きたいことはあるのですが、最後に私が号泣したポイントを…。

2008年9月にピッツバーグまで行って、アンソニーの一人ミュージカルを見てきたのですが(そのときのブログはコチラ
、この作品の中でアンソニーのお母様が生前、アンソニーと二人で交わしていた手のポーズの話が出てきていて。具体的には中指、薬指を折り曲げて他の指は伸ばすポーズなのですが、ACT初日のカーテンコールで「Seasons of Love」を歌い終わった後、アンソニーは上を向き、天に向かってその手のポーズを取ったのですね。
ああ、この公演は、「RENT」の作者、亡きジョナサン・ラーソンに捧げる舞台でもあるのだ、と気づき、「東京でもジョナサンが作ったRENTはこんなに受け入れられてるよ!」とジョナサン(そして、アンソニーのお母様)に報告しているのかな、と思ったら……涙止まらず。

生と死は隣り合わせであり、だからこそ精一杯生きていかなければいけないのだ、という深いメッセージが胸に染み込みます。

何より嬉しいのが、この公演が8月いっぱいまで日本で見られるということ。この貴重で、贅沢な経験を体感しに、何度か劇場に足を運びたいと思います。

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2009/08/01

モダンスイマーズ「血縁~飛んで火に入る五兄弟~」

10周年記念公演のモダンスイマーズ。作・演出をされる蓬莱竜太さんの作品は何本か拝見してますが、モダンスイマーズを見るのは今回が初めて。
10周年記念ということで、劇団員5人で脚本を作ったとのこと。劇場での客入れも役者さんがされてました。

亡き親の言いつけを守り、建築業を営みながら、野放図(?)に、傍若無人に生きていく五兄弟の話。
彼らなりのある種の信念は通ってるようだけれど、世間迷惑なことも確かな人たち。周りの住民との軋轢もあって。
「あなたたち、おかしいでしょう?」というのは近所の人の台詞だけれど、何を持っておかしいか、おかしくないのか、なんていうことをふと考えたり、この五兄弟は(芝居にこだわり続ける、世間一般から見たら「おかしい」人たちの集まりである)劇団というもののメタファーでもあるのかしら、なんてことも思ったり。

途中のハワイに行くエピソードや、マイケル・ジャクソンの「スリラー」完全コピーダンス(あんなにアンサンブルダンサーがたくさん出てくるとは!)など、祝祭的な雰囲気もありました。

役者さんでは、淡い恋心を見せる長男役、西條義将さんや声に独特の響きがある津村知与支さん、何役も演じた古川悦史さん(ゲイの入社希望者役がなんだかやけにおかしい)。蓬莱竜太さんは舞台に出るのは久々だそうですが、ナイーブな雰囲気があって、他の兄弟をちょっと離れて見ている役どころも、作・演出という立場とうまくだぶっていて、なかなか面白かったです(どこか見た目が嵐の二宮和也さんに似てらっしゃるような感じ?)。

(7月31日観劇)


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