« おおのの『太宰治のオンナの小説』 | トップページ | スペリング・ビー »

2009/07/14

スタジオライフ「LILIES」FEU千秋楽見てきました

Studio Lifeの代表作「LILIES」。トリプルキャスト公演のFEUチーム千秋楽を拝見しました。その日は私が学生時代からご縁がある、今は女優さんをしてらっしゃる方と連れ立って見に行ったので、個人的にはなかなか印象深い観劇となりました。
(その前に初日、TERREチームを拝見)

1952年カナダの刑務所を訪れるビロドー司教の前で突然繰り広げられる芝居。それは、40年前のビロドー少年、そして彼の同級生シモンとヴァリエの過去の姿を再現したもの。芝居を計画したのは今は囚人となっているシモンだった。
…というのがあらすじ。同性愛がキリスト教的に禁忌とされていた時代に、愛し合うシモンとヴァリエ、そして、シモンを横恋慕(?)するビロドー、シモンと結婚の約束をする女性リディアンヌ、夫に捨てられた現実を見つめられず想像の世界に生きるヴァリエの母親らが主な登場人物。9人の出演者が、見事な一つの宇宙を作っていました。

まさに純愛の物語ですが、同性同士の愛からこそ純愛を表現できるのだな~というのが見ている途中に考えたことで。(今の世の中、普通?の異性間では純愛は既に成立しないというか)それを繊細に、まさに薄氷を踏むような思いで創り上げるのはきっととてつもなくパワーがいることなんでしょうね。千秋楽のご挨拶でも「もっとやりたい」ということより、「もうこれが限界」とギリギリまで自分を追い込んで演じたことを感じさせる発言をした方が多かったのも印象的です。

囚人たちが3年間稽古したものをビロドーの前で演じるという劇中劇の形式を取っていますが、法の過ちによって刑務所入りした囚人たちが、この物語を演じることによって、自らを解放させているのだ、というダブルミーニングがあるんですよね、多分。(上演台本・演出の倉田淳さんとも終演後少しお話しさせていただいたのですが、「演じている囚人たちの、心の解放」というイメージも含めて演出されているようです)
そのメッセージが顕著に出るところは、ヴァリエが書いた手紙を、囚人たちが全員で読むところですね。特に全員が劇団員で演じたTERREチームに強く感じました。
(ちなみに、FEU千秋楽を一緒に見た女優さんは、この場面のリディアンヌの山本芳樹さんが心の奥にそっと包み込むように台詞を言っていたのが、印象に残ったと言ってました。←この方初見なのに、よく見てるなあ…)

一人一人の生き方、感情を丁寧に描くことで、運命的に悲劇へと走っていく様子がより明確になってきます。
印象に残ったところをあげると、やはり、シモンの新納慎也さん。初演、再演と見てるのですが、どこかヴァリエの物語のように受け止めていた「LILIES」を、初めてシモンの物語として受け止めさせてもらえた気がします。禁じられた愛に対する恐れと戸惑い、そして止められない思いを、余すところなく表現してました。「(ヴァリエとキスしたことが)そんなにいけないことなの?」と言われた後の、次の「多分」という台詞までの間に彼の愛と逡巡とが走馬灯(?)のように駆け巡ってるのが感じられて、なんかすごいと思っちゃいました。そして一人芝居でなく、きちんとヴァリエとの関係性を持って演じられているところが、新納さんの役者としての一段の成長を感じさせます(なんか偉そうな表現でスミマセン)。そして、素直な愛情をひたむきに表現していたヴァリエの松本慎也さん。なんというか、良いコンビだったと思います。

初日以来の観劇で、随分変わったなと感じたのが林勇輔さんのビロドー。頭をかきむしる彼のクセの中に、同性愛に対する禁忌から自分で無意識のうちに抑え付けている感情と折り合いがつかないでいる様子がつぶさに伝わってきました。
リディアンヌの山本芳樹さんは「男性が女性を演じている」というデコラティブさがある上で、愛する女性の切なさと悲しさが増していた気がします。(登場人物は皆「嘘をついている」…という設定ですが、リディアンヌってシモンに対する感情の部分はかなりストレートに出してますよね)

聖ミシェル神父の牧島進一さん。聖ミシェル神父の台詞って後々大きな意味を持つものが多いんですが、その意味をきちんと客席に届けてくれていた気がします。

役者さんが違うと、同じ役でも感じ方が随分違うなと思ったところもあって。ヴァリエに自分を殺すよう頼む母親の伯爵夫人のことを、FEUチームの関戸博一さんが演じると「お母さんったら、なんてひどいことを!」と感じるんですが、TERREチームの舟見和利さんを見ると「この人、もう限界だから仕方ないかも…」と思っちゃうんですよね。なんだか不思議です。「伯爵夫人」という役を演じることによって、なんとか精神の均衡を保っている母親のギリギリの部分を舟見さんは見せてくれていたと思うし、芝居の構造(囚人が役を演じること=母親が役を演じること、の入れ子の構造)を的確に表現されていたと思うのです。

|

« おおのの『太宰治のオンナの小説』 | トップページ | スペリング・ビー »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/34077/45631538

この記事へのトラックバック一覧です: スタジオライフ「LILIES」FEU千秋楽見てきました:

« おおのの『太宰治のオンナの小説』 | トップページ | スペリング・ビー »