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2009/07/30

ラックシステム「お祝い」

前回のブログで書いた「COCO」は、女性のパンツルックをデザインすることで女性をスカートから解放したココ・シャネルの話だったのだが、昨日見た「お祝い」も、女性を解放した人の話。
「お祝い」は、戦前~戦後にかけて船場の若旦那が、女性が使いやすい生理用品の開発に奮闘する…という話。
「COCO」は、女性のシャネルが主役で、台本を書いたのは男性。
「お祝い」は男性が主役で、作者は女性(わかぎゑふさん)。

生理用品の開発をしたきっかけが、若旦那の妹が初潮を迎えた際にいじめられ、事故で死んでしまったから。「こんな不幸なことが起こらないように」と、一生懸命になる男性たちの姿は、優しく、温かい。
声高に何かを叫ぶのではなく、「こうなったらええやん」と語りかけるような口調のところが、わかぎさんの作品の素敵なところだ。

伏線の張り方も細かくて「ああっ」と笑わされたり(コーヒー入れるのが好きな人が、その特技が意外なところに…!とか)。一人一人のキャラクターがイキイキと描かれているのが魅力的だ。
若旦那と結婚するあきちゃん役の谷川未佳さんが、健気に生きている姿がなんとも可愛く、デビューの「ちゃちゃちゃ」を拝見している者としては「良い役者さんになったなー」と感心したし、若旦那役の上田宏さんも、変わり者だけれどまっすぐな気性の人の雰囲気が良く出ていた。千田訓子さんは女郎さんの役で、着物の着方も色っぽく、はすっぱに見える女性の裏側の部分や、あきちゃんに対する思いが実感に落ちていたと思う。
コング桑田さんは実直、桂憲一さんは上述のコーヒー入れる人のくだりが面白く、手堅い印象。

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2009/07/27

女優芸を見た!「COCO」in相模大野

ル テアトル銀座公演のチケットを取ってたのですが、仕事が重なって観に行けず、全国公演初日の相模大野まで行って見て来ました。

久々に女優芸を見た! という感じ。
昨年のブロードウェイの『GYPSY』でパティ・ル・ポンのママ役に圧倒されて「アメリカにはすごい女優さんがいるなぁ」と思ったのですが、鳳蘭さんのココ・シャネルもそれに匹敵するような圧倒感がありました。

冒頭の歌も大変迫力がありますが、「ツレちゃんだわ~」(鳳さんの愛称)とも思いました。例えば、「誰がために鐘は鳴る」とか「白夜わが愛」とか(古いですね(^^;ゞ)でも感じた鳳さんの個性、というのかな。
でも、芝居が始まり進んでいくにつれて、鳳さんでなくだんだんココ・シャネルにしか見えなくなってくるのです。

鳳蘭しか演じられないココ・シャネル! うーん、すごすぎる。
自分が時代を切り開いてきたという自信。気の強さもどこかチャーミング。そして挫折、復活……と見せていく中で、「ココ・シャネルってこういう人だったんだろうな…」という思わせられる。

共感する芝居も(例えば、前に書いた「スペリング・ビー」など)ありますが、これは、圧倒される芝居でした。

ココに心酔し共鳴していくノエルの湖月わたるさんも、(二人は同じ元宝塚星組トップスター)鳳さんを尊敬するところと役柄をうまくダブらせているようです。あんなに「漢」だったわたるさんが素直で可愛らしいノエルを演じられるなんて…というのも、なんかいいなあ、と思います。

アドリブもあり、大いに場を沸かせた岡幸二郎さん、頼りになる人柄とフランス人らしいエスプリを見せた鈴木綜馬さんなど、芸達者な皆さんがハーモニーを作り、シャネルのイメージをそのまま装置に仕上げている、松井るみさんの美術もとても素敵。
大人なミュージカルを堪能しました。


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2009/07/24

スペリング・ビー

温かく優しく、ケラケラ笑いながら、最後は一歩前に進んでみたいような気持ちにさせられる。

「スペリング・ビー」とはアメリカではテレビ中継があるくらいポピュラーな「英語つづり当てコンテスト」。パットナム郡という架空の郡のコンテストに、各校から選ばれてきた6人が参加して優勝者を決めるという模様を描く。劇場は体育館、私たち観客はコンテストを観に来た父兄や友人…ということになっている。これがなかなか臨場感があって、だんだん応援してるような気分になるのだ。

出演者は他に審査員と司会者と負けた人のケアをするカウンセラーという大人が3人だけ。そして、6人の子供たちを大人の役者が演じるのがポイント。1幕にはお客さんからの一般参加者もスペリング・ビー大会に参加して舞台に上がっている。

スペリング・ビーというものが日本ではなじみがないだけにどう感じるかな…と思ったのだけれど、進むうちにどんどん気にならなくなってくる。それは、一人ひとりのキャラクターや生きていく悩みや勇気というものが浮き彫りになってきて、そちらに気持ちが集中してくるからだろう。
途中カウンセラーが「この勝ち負けは重要じゃないんだ」と歌うのも象徴的だし、それが実感できるような舞台だった。

何より子供役6人のキャラクターが本当にイキイキと描かれていて、そのリアルさが面白くて、笑ってしまう。中でも梶原善さん! もちろん歌はうまくないけれど、そういうことを補って余りある演技力。他の子が答えてるときの落ち着きのない仕草とか、本当は3位なのに代表になってしまったコンプレックスと、でもなんとかなるさという明るい思いと……本当に愛おしい存在だった。そして、透明な歌声を聞かせて、可愛らしかった新妻聖子さんと、きちんと子供のキャラを押し出してきた藤井隆さん。こまっしゃくれた感じがキュートな風花舞さん、子供ももちろんもう一ついわゆる「ご馳走」でやってる役も抜群におかしい坂元健児さん、個性的な役作りとラストシーンが印象的な高田聖子さんと、皆さんとても魅力的な「子供たち」だ。

そして、それを見つめる大人たちの目も温かい。冷静に問題を読んでいる様子がやたらにおかしい、副校長の村井国夫さん。元スペリング・ビーの1位だったという司会者の安寿ミラさんも、元宝塚トップスターという「トップを知る人」と「元1位」というのがうまくリンクしている感じ。コメディセンスが冴えわたらせつつ、冒頭とラストに温かい余韻を滲ませていた。そして、強面なカウンセラーの今井清隆さんも、なかなか面白い。

ラストシーンになって、大人が子供の役を演じた意味が浮き上がってくる仕掛け。素敵なミュージカルでした。この夏のお勧め!

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2009/07/14

スタジオライフ「LILIES」FEU千秋楽見てきました

Studio Lifeの代表作「LILIES」。トリプルキャスト公演のFEUチーム千秋楽を拝見しました。その日は私が学生時代からご縁がある、今は女優さんをしてらっしゃる方と連れ立って見に行ったので、個人的にはなかなか印象深い観劇となりました。
(その前に初日、TERREチームを拝見)

1952年カナダの刑務所を訪れるビロドー司教の前で突然繰り広げられる芝居。それは、40年前のビロドー少年、そして彼の同級生シモンとヴァリエの過去の姿を再現したもの。芝居を計画したのは今は囚人となっているシモンだった。
…というのがあらすじ。同性愛がキリスト教的に禁忌とされていた時代に、愛し合うシモンとヴァリエ、そして、シモンを横恋慕(?)するビロドー、シモンと結婚の約束をする女性リディアンヌ、夫に捨てられた現実を見つめられず想像の世界に生きるヴァリエの母親らが主な登場人物。9人の出演者が、見事な一つの宇宙を作っていました。

まさに純愛の物語ですが、同性同士の愛からこそ純愛を表現できるのだな~というのが見ている途中に考えたことで。(今の世の中、普通?の異性間では純愛は既に成立しないというか)それを繊細に、まさに薄氷を踏むような思いで創り上げるのはきっととてつもなくパワーがいることなんでしょうね。千秋楽のご挨拶でも「もっとやりたい」ということより、「もうこれが限界」とギリギリまで自分を追い込んで演じたことを感じさせる発言をした方が多かったのも印象的です。

囚人たちが3年間稽古したものをビロドーの前で演じるという劇中劇の形式を取っていますが、法の過ちによって刑務所入りした囚人たちが、この物語を演じることによって、自らを解放させているのだ、というダブルミーニングがあるんですよね、多分。(上演台本・演出の倉田淳さんとも終演後少しお話しさせていただいたのですが、「演じている囚人たちの、心の解放」というイメージも含めて演出されているようです)
そのメッセージが顕著に出るところは、ヴァリエが書いた手紙を、囚人たちが全員で読むところですね。特に全員が劇団員で演じたTERREチームに強く感じました。
(ちなみに、FEU千秋楽を一緒に見た女優さんは、この場面のリディアンヌの山本芳樹さんが心の奥にそっと包み込むように台詞を言っていたのが、印象に残ったと言ってました。←この方初見なのに、よく見てるなあ…)

一人一人の生き方、感情を丁寧に描くことで、運命的に悲劇へと走っていく様子がより明確になってきます。
印象に残ったところをあげると、やはり、シモンの新納慎也さん。初演、再演と見てるのですが、どこかヴァリエの物語のように受け止めていた「LILIES」を、初めてシモンの物語として受け止めさせてもらえた気がします。禁じられた愛に対する恐れと戸惑い、そして止められない思いを、余すところなく表現してました。「(ヴァリエとキスしたことが)そんなにいけないことなの?」と言われた後の、次の「多分」という台詞までの間に彼の愛と逡巡とが走馬灯(?)のように駆け巡ってるのが感じられて、なんかすごいと思っちゃいました。そして一人芝居でなく、きちんとヴァリエとの関係性を持って演じられているところが、新納さんの役者としての一段の成長を感じさせます(なんか偉そうな表現でスミマセン)。そして、素直な愛情をひたむきに表現していたヴァリエの松本慎也さん。なんというか、良いコンビだったと思います。

初日以来の観劇で、随分変わったなと感じたのが林勇輔さんのビロドー。頭をかきむしる彼のクセの中に、同性愛に対する禁忌から自分で無意識のうちに抑え付けている感情と折り合いがつかないでいる様子がつぶさに伝わってきました。
リディアンヌの山本芳樹さんは「男性が女性を演じている」というデコラティブさがある上で、愛する女性の切なさと悲しさが増していた気がします。(登場人物は皆「嘘をついている」…という設定ですが、リディアンヌってシモンに対する感情の部分はかなりストレートに出してますよね)

聖ミシェル神父の牧島進一さん。聖ミシェル神父の台詞って後々大きな意味を持つものが多いんですが、その意味をきちんと客席に届けてくれていた気がします。

役者さんが違うと、同じ役でも感じ方が随分違うなと思ったところもあって。ヴァリエに自分を殺すよう頼む母親の伯爵夫人のことを、FEUチームの関戸博一さんが演じると「お母さんったら、なんてひどいことを!」と感じるんですが、TERREチームの舟見和利さんを見ると「この人、もう限界だから仕方ないかも…」と思っちゃうんですよね。なんだか不思議です。「伯爵夫人」という役を演じることによって、なんとか精神の均衡を保っている母親のギリギリの部分を舟見さんは見せてくれていたと思うし、芝居の構造(囚人が役を演じること=母親が役を演じること、の入れ子の構造)を的確に表現されていたと思うのです。

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2009/07/07

おおのの『太宰治のオンナの小説』

いろんなエモーションをかきたてる「朗読劇」でした。

花組芝居で加納幸和さんの元で演出助手をされている大野裕明さんのユニット「おおのの」。第一回公演は『ザ・漱石』でそこから続く「文豪シリーズ」で今回は太宰治を取り上げる。俳優座の芸歴61年のベテラン岩崎加根子さんを迎えての朗読劇。太宰治の親友が彼のことを振り返るという外枠をつけて、太宰治が女性一人語り形式で書いた小説『女生徒』、『おさん』、『葉桜と魔笛』を女優三人が順に語るという方式。

『女生徒』の瑞々しい感覚と後の太宰治の心中事件を本人が事前にそのまま書いてしまったような『おさん』の女心の切なさ(小林美江さん秀逸)。やはり圧巻なのは岩崎加根子さんの『葉桜と魔笛』。言葉の一つ一つに説得力があって、ぐいぐいと引き込まれていく。ラストの軍艦マーチのくだりでは、泣きそうになりました…。

語り手的な立場の「太宰治の親友」(すみません、劇中では名前言ってたけど忘れました…)役は丸川敬之さん。後に「この人ともっと仲良くしていれば、太宰も死ななくてもよかったかも」と遺された太宰の奥さんが言ったほどの人だそうで、そんな温かみが丸川さんの芝居からも伝わってきた。

「友達になりたくない」「暗い」というイメージ(これも劇中の台詞から)の太宰を、どこか優しい視点で見て編んでいっているのは大野さんならでは、か。

ジャズ・ピアニストの保坂修平の生演奏だけでなく、役者さんたちも皆さん劇中の音楽を担当。言葉のイメージをさらに深く押し広げていったと思う。口笛から鳥の声、波の音、列車の音まで一人でSEを口でこなしちゃう藤崎卓也さんにビックリ。(「ちふれ」のCMの口笛も藤崎さんがやってらっしゃるんだそう)

15分の休憩の後は、2部「おおのの♪大いに唄う」。…初め、このタイトルを見て「大野さんが大いに唄っちゃうのか??」と思ったら違った(笑)。出演者の皆さんによる歌。最後は24時間テレビのエンディングふうに(笑)客席も全員で歌って幕。

おおのの次回公演は五人芝居『走れダザイ』。この3作品を書いた太宰治を今度はどう描くのか? 太宰作品そのものを取り上げた今回と、太宰治という人間を取り上げる次回公演とのカップリングはなかなか良い趣向で、2010年1月の次回公演も楽しみです。

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