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2009/06/05

花組ヌーベル『盟三五大切』

(内容に触れてますので、これから観る方はご注意下さい)

衣裳が変われば見えてくる世界も変わるのだ。

花組ヌーベル『盟三五大切』は、花組芝居座長加納幸和さんが本公演ではできないような実験的な試みをしようとする公演の第2弾。四世鶴谷南北の名作『盟三五大切』を題材に取り、加納さんの脚本・演出。

前回公演『恐怖時代』は浴衣での公演だったが、今回は全員黒のスーツ姿。しかもステージには、舞台上にはお葬式の祭壇と(精進落とし用の)座卓がしつらえられている。開演前から流れているのは、お葬式の読経に聞こえるけれどちょっと不思議な感じの「音」は、韓国版読経?とか。

葬式に訪れる人の風景…から、歌舞伎調の芝居に入るときの違和感というか時空の飛び具合にはビックリする。やがてその違和感がなくなり、「黒のスーツでも歌舞伎」という不思議な世界に気持ちが落ち着いていくのが、どこか快感だ。

描かれているのは、巡る因果の中で、自分を裏切った小万への復讐心から大勢の人を殺めてしまう源五兵衛の姿。
血みどろのシーンを美的に描くのは加納さん流だけれど、現代の黒スーツ姿で演じているために、昔の「絵空事」がリアルに今の日本と重なってくる。
特に、源五兵衛が小万の切り落とした首と向かい合ってお茶漬けを食べる有名なシーン。ここでは「2分でごはん」を電子レンジでチンして食べることになって、「物を食べる」という日常性と、殺人の異常性との対比の冷ややかな衝撃がよりリアルなものになった。
(先日たまたま「なぜ、殺人事件の後で、犯人は現場でご飯やアイスを食べるのか?」ということについて、心理学的な考察をしたテレビ番組を見たので、より現代との鏡写しを鮮明に感じたのかも…)

源五兵衛の北沢洋さんのリアルな性根が役柄にはまっていて、出色。

以前、リーディング公演で『盟三五大切』を取り上げたときは小万は加納さんが演じていて、無意識に「今回も加納さんが小万?」と思って劇場に足を踏み入れたのだが、加納さんは小万の恋人、三五郎だった。加納さんが花組芝居の公演で男性を演じるのはとても珍しいのだが、独特の色気と悪の魅力があってとても素敵。
小万は小林大介さん。
全員が黒スーツで演じるということで、小林さんはヒゲを生やして黒スーツで女性役なのだ。こういうことをやると、「ヒゲのOL」とか「ヒゲのおいらん」とかギャグっぽい感じに見られがちなのだけれど、小万の持つ可愛らしさが次第に立ち上がってくるのが面白い。

他の方々は何役かを兼ねて演じていて、その一瞬の切り替わりが演劇的な快感になる。
源五兵衛の家来を演じる松原綾央さんは忠義一途さがよく出ていたし、谷山知宏さんは普段はキャラクター的な役が多い中で、スッとした雰囲気(サラッとした髪(笑)?)と響きの良い声でなかなかの二枚目さんぶりを今回は見せてくれた。山下禎啓さんが確かな味わい。

『盟三五大切』といえば、忠臣蔵+四谷怪談裏話的な部分もあって、今回の舞台は花組芝居の傑作『いろは四谷怪談』をちょっと思い出させる部分がある。『いろは四谷怪談』も鶴屋南北のお葬式シーンから始まっているバージョンもあったので。初日ゲストの八代進一さん(ゲストだけど、ずっと舞台上で死体役で寝てないといけないのは、案外大変そうだ)がアドリブ(?)で「歌舞伎の冒涜だ~!」と言ったのは、実は『いろは四谷怪談』のネタだったり。このあたりはコアなお楽しみということで。

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