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2008/09/22

Anthony Rappの一人ミュージカル「Without You」(ピッツバーグ)

良い舞台を見るとめちゃくちゃテンションが上がるのです。
現在、ニューヨーク滞在中。
ピッツバーグまで日帰りし、Anthony Rappの一人ミュージカル「Without you」を見てきました。
ご存知のとおり、アンソニー・ラップは「RENT」のオリジナルキャストのマークであり、映画版でも同じ役を演じてます。私は昨年の、アンソニー・ラップとアダム・パスカルが期間限定復活した「RENT」を見て、アンソニーのすごさを実感しました。ちょうどNY滞在にこの公演が重なったので、思い切ってピッツバーグまでいくことに。
(実は、このブログのタイトルも、RENTの歌詞からいただいているのです)

内容は、「Without you」というアンソニーが書いた自伝的エッセイを元に、RENTのオーディションから、RENT作者のジョナサン・ラーソンの死と、その後の初日の模様、そして、アンソニーのガンで亡くなったお母様とのふれあいの模様を、RENTの曲とアンソニーが作った曲でつづっていく、一人舞台です。

…泣きました。前半からずっと。
終演後の泣きはらした顔の私を見て、他の観客のアメリカ人女性に優しく微笑まれてしまったくらい(^^;。

RENTには死の影が強く付きまとい、だからこそ「no day but today」今を生きなければいけない、という強いメッセージがこめられている作品ですが、図らずも、ジョナサンと母親の死でそれを実体験してしまったアンソニー。

身近な人の死を文章にしたものは目にするけれど、その経験をそのまま自分で演じるというのは初めて見て。アンソニーはつらくないのだろうか、と思ったんですが、彼がこれからも生き続けるためにはこの舞台を作らなければいけなかったのかもしれません。
(ジョナサンの新作はもうできないわけで、RENTの楽曲に新しい生命を与えたい、という思いもあったのかも)


私もアンソニーと同じく(アンソニーがお母様をなくした年齢よりはずっと上だけれど)母を亡くしていて、死に向かっていく母親に対する彼の気持ちが痛いほどわかって…。

でも、亡くなった人の思いを抱きしめ、そして、前に向かっていこうとする、アンソニーの姿に非常に感銘を受けました。

(劇中、お母様とよく交わしていたという手のポーズをする場面があったのですが、カーテンコールで上に向かってその手のポーズをしたのを見たとき、この舞台はお母様に、そしてジョナサンに、ささげる舞台でもあったのだと思い、ここで号泣)

こう書くとすごく重い舞台のようですが(実際、かなりの方が泣いてらっしゃった)でも、アンソニーの重くならないキャラクターや適度なユーモアで、全体を通しての印象は決して暗いものではないです。

RENTの曲ももちろん、ストーリーにうまく絡める形で歌われてますが、神棚に祭り上げる感じじゃなくて、さりげなく使ってるところがとても良いですね。アンソニーの「ワンソンググローリー」もちらっと聞けて嬉しかった(^^)。

一人ミュージカルということで、どう演じるんだろうと思ってたんですが。アンソニーはピッツバーグで以前、「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」を演じていて、(ご本人が意識してるかどうかは別として)ヘドウィグの上演形式に通じるものは感じました。

今、思い出しましたが、そういえば、私、一人芝居苦手な人だったのでした(^^;。これは全然、一人芝居の私が苦手なところ(緩急をつけようとして、変に過剰になっちゃうところとか)がなかったですね。


英語が堪能なわけじゃないので、「あ、この台詞、きっとすごく大事…」と思うところが聞き取れない自分がとても悔しいのですが。
偶然のきっかけで、日本から見にいらした方とお会いできてお話できたのも、とても嬉しい経験でしたが、その方によると、原作にあたる本のほうが、さらに赤裸々に描かれてるようです。これを読めば、私が気になった台詞もわかるでしょうか。

アンソニーの、クリエイターとしてのセンスも、役者としてのパワーと実力もしっかりと伝わってくる舞台でした。今回はピッツバーグという地方でのトライアウト的要素がある公演で、これをブラッシュアップしていずれブロードウェイにもっていきたいという考えもあるようです。
日本の方も含め、ぜひ、多くの方に見ていただきたい、それだけの価値がある舞台だと思います。
私にとっては、多分、一生忘れられない舞台のひとつです。

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2008/09/16

劇団四季『トロイ戦争は起こらないだろう』拝見しました

あと3時間後に家を出てNYに向かうのに、まだ起きてます……(今、パッキングが終わったところ)。

しかし、出発前にどうしても書いておきたい。
劇団四季『トロイ戦争は起こらないだろう』、7日に拝見してきました。

ジロドゥ戯曲を見るのは、遠い昔に『オンディーヌ』を見たきりで、ほぼ初めて。
ジロドゥのホンの面白さにまさに圧倒される思いです。

トロイ戦争という昔の設定を借りて、戦争を留めようとするもの、知らず知らずのうちに戦争を肯定しているものなど、様々な人のあり方を実にリアルに描いています。戦争を避けようとしても、結局戦争へと向かわざるを得ない人間の業のようなものを強く感じさせる舞台です。

難解な作品かなと見る前は思ったのですが、特に1幕は本当に体感スピードが早く、台詞の応酬にすっかり舞台に引き込まれてあっという間に終わってしまった感じがします。
そして、幕切れのアバンギャルドなこと! 今見ても、いや、今だからこそ、とても斬新に感じます。

故・金森馨さんの装置は、一幕は巨大な銅像の脚元だけが見えているというもの。
人間の卑小さ、というか、人間の力ではどうしようもないものを端的に感じさせて、作品のテーマを豊かに伝えています
しかし、ジロドゥ戯曲は本当に面白いですね。台詞でこれほど雄弁に伝えられるものがあるのだというのを、久しぶりに実感した気がします。
ジロドゥ作品をもっといろいろな形で(四季はもちろん他のところでも)見てみたいとも思いました。

阿久津陽一郎さんのエクトール、武将だからこそ戦争を止めようとしながら、それでもある一瞬、戦争に加担してしまう。その相反するところをリアルに演じ、私の心に訴えかけました。

公演は9月20日まで。

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2008/09/12

Studio Life『マージナル』

スタジオライフの『マージナル』砂漠編、都市編、ダブルキャスト取り混ぜて(そして、本番とゲネなどで)拝見してきました。以下、レビューというより雑感。

萩尾望都先生の壮大なSF作品を舞台化。2999年、男子しか生まれなくなった地球の人々の、絶望と希望の話です。
砂漠編、都市編と二つの角度から作品に光を当てる試み。作品の全貌を知るためには、どちらか一方でなく、頑張って両方見たほうがいいようです。

(終幕などに触れてるので、隠します)

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レプリークBis VOL.12 発売中

昨日(11日)発売になったレプリークBis。

特集 「性を超える役者~male or female~」は、企画段階から関わらせていただきました。とても充実した構成になっていると思います……と、自画自賛ですが(笑)。
リンゼイ・ケンプさん、(『エリザベス一世~ラスト・ダンス』)、中村勘三郎さん(『赤坂大歌舞伎』)、Studio Life笠原浩夫さん×荒木健太朗さん×松本慎也さん(『マージナル』)、美輪明宏さん(『双頭の鷲』)、加納幸和さん(演出家インタビュー)…と、信じられないようなラインナップの方々に取材させていただきました。

エリザベート特集の中でエリザベート関連舞台として『双頭の鷲』木村彰吾さん、『愛と青春の宝塚』紫吹淳さん×湖月わたるさん、彩輝なおさん×貴城けいさんも担当させていただいてます。

よろしければ書店等で手に取ってご覧下さいね。

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2008/09/10

花組芝居「怪談牡丹燈籠」公演中

16日からNYに行くので、仕事が詰まっててなかなか更新できなくてスミマセン。

花組芝居「怪談牡丹燈籠」初日の9月3日と8日に拝見してきました。

有名な「カランコロン」の怪談話ではなく、円朝が15日間掛けて上演したという落語を2時間半に圧縮し、濃密なパワーで見せる舞台。

父親を殺された孝助が知らないうちに親の敵のところに奉公していたことから始まる、様々な因縁の糸が絡み合いもつれ合う様を見せる、ときには卑小でときには困ったチャンの人間たちの様々な生き様の見本市のような(?)舞台でした。

ラスト、すべてが収束していく感じはダイナミックで圧巻でした。

落語原作らしく、飛躍した感じのギャグも多く楽しい。(個人的なツボは…すごいネタバレですが、伴蔵が「(アントニオ猪木の元気ですかー!ならぬ)ゲンキン(現金)ですかー!」と叫ぶところ。時代劇なのに。下らないけど妙におかしい)

配役としては、20代から50代!まで(最長老、溝口健二さんが50歳になられたそう)いる劇団として、若い人の役は若手に、親の世代の役はベテラン陣に、としたこと。
主役、孝助は丸川敬之さん。いじらしいくらいのまっすぐで一生懸命さが役によく表れていました。
飯島平左衛門の水下きよしさんと相川新五兵衛の原川浩明さんは、共に大きさがあって役にピッタリだなと。
お国の八代進一さんは、大悪女の役で、こういう役は危なげないですね。

大井靖彦さんのお露は劇団に入ったばかりのころより今のほうが若くて可愛らしいと思う(笑)。お露の女中、お米の磯村智彦さんは今回の敢闘賞をあげたい(私からもらっても困るでしょうが)。
萩原新三郎の美斉津恵友さんは、「恐怖時代」のときも感じたのですが、こういう幼い感じの色気がある役ってすごく似合ってますよね。声に色気があるからかしら。
孝介に恋するお徳は堀越涼さん。原作で読んでた「健気で控えめな女の子」という人物像をいい意味でぶっ飛ばしてくれた役作りで、楽しかったです。

加納幸和さんがいかにも「世話物」っぽいお峰を見せるのが新鮮。供蔵の小林大介さんは、小悪党な感じが出てていいですね。達者な方だなあと思います。お国の愛人、源次郎の各務立基さんも、悪役と見せかけてそうでもない(?)、剣術がお下手だったりするところが、役柄に深みを持たせていて、なかなか面白かったです。

全体を取り仕切るのが、原作者三遊亭円朝の桂憲一さん。ときには物語に入って人物を演じたり、話を語ったり…という、ストーリーを引っ張る呼吸がうまくて、快い円朝さんでしたね。


最後に個人的な意見を言えば、『忠臣蔵』と続いて、年代対比の配役が続いたのですが、それを裏切る配役のものも見たいかなと。70歳の男性でも赤姫やっちゃうのが歌舞伎だし(^^)。まあ、多分、毎回ずっとそうではないと思いますし、次回の「泉鏡花の夜叉が池」では、ダブルキャストということで、どういうふうに見せてくれるかというのも楽しみです。

公演は9月15日まであうるすぽっと(東池袋)にて。その後、大阪、札幌(演鑑主催公演)があり。

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