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2008/04/08

嘘から出た真の恋「トライアンフ・オブ・ラヴ」

先日取材させていただいた、ホリプロ「トライアンフ・オブ・ラヴ」拝見してきました。以下、個人的な感想を…。

コメディ作品なのですが、とても寓意に満ちた、考えさせられる部分が多い作品だなと思いました。
「トライアンフ・オブ・ラヴ」~愛の勝利、という題ですが、この作品に出てくるお姫様は自分の姿を男性に代えて、恋する王子様に近づき、その過程で邪魔をする王子様のおじさん、おばさんにも異性に化けて色仕掛けで陥落していくというような設定。

元はブロードウェイミュージカル(さらに原作はマリヴォーの古典喜劇)とのこと。女性が男性に化けている姿に対して、女性が恋をしてる演技をしたら、NYではそれだけで爆笑なのかもしれない。でも、日本では、男性の格好している人が舞台に出てたらその人はマジで男性と解釈しよう、という考えが刷り込まれているから、それは笑いより切なさが先に立つ気がするのですね。男性と思い込んでも仕方ないよね、可哀想だな…みたいな。

具体的にいうと、王子アージスのおば、ヘジオーネ(杜けあきさん)。コミカルな作品の中で、王女レオニードが化けた男性に恋をすることで、今まで隠していた女心があふれ出すという歌声に真実がこもっていました。その歌声が思いのほかシリアスなものだっただけに、逆にヘジオーネに感情移入してしまうというか。その空回りの恋心がとても哀しく思えて。

後で気づいたんですが、これって、シェイクスピアの「お気に召すまま」で男装したロザリンドに恋してしまう田舎娘の設定に似てますよね。前の蜷川幸雄さん演出のときに、このブサイクな田舎娘を演じていた山下禎啓さんが、高慢な娘が男装したロザリンドに出会って恋する切なさを知り、ロザリンドが男とわかった後に元からの恋人と結ばれるという短時間の変化を見事に演じていたのが思い出されました。

男装している女性(という架空の存在)に恋する、という切なさを、ギャグでなくしっかり描いたことは、演出の小池修一郎さんの美学かもしれません。そして、私は途中「最後にヘジオーネ可哀想っていう気持ちで(見てる自分が)終わったらいやだなあ」と思いながら見てたのですが、ラストは(「お気に召すまま」の田舎娘の変化と同じように)「結婚式で出会いがあるかも」とヘジオーネが前向きに恋に向かって生きていこうという変化を明るく、そして違和感なく見せてくれて、なんだかほっとして、心を温かくして観劇を終えることができたのでした。

杜けあきさん+小池修一郎さんというと、小池先生のデビュー作「ヴァレンチノ」そして「華麗なるギャツビー」とさまざまの名舞台を生んできたのが思い出されます。今回も、また思い出に残る舞台ができました。
(余談ですが、新旧、元宝塚雪組男役トップスターの共演だったのですね)

レオニード姫とアージスも、はじめは敵の立場であるレオニード姫が自分を隠して出会うという、偽りの出会いなのですが、でも、やがて二人の間には偽りを超えた愛情が生まれ、それが引き裂かれた国を救っていきます。

「偽りの中からも真実の愛が生まれる……」という作品の持っているテーマはとても奥深いものだと思いました。

主役レオニード姫の朝海ひかるさんは、きちんとそのテーマ性をとらえた上で、プラス、コミカルさとキュートさを存分に出して、エンターテイメント性が高い作品に仕上げてくれました。イキイキとして演じてらしたのが印象的。

王子様アージスの武田真治さんは、台詞の間合いで笑わせるところの、間の取り方がとてもお上手ですね。純粋でおぼこい青年のアージス役の中に自分を埋没させるのではなく、自分との距離感を的確にとらえ、理性的に役を解釈していらっしゃるのが伝わってくる気がします。

音楽もとても美しいですが、一度見ただけでは決して口ずさめないような(笑)難易度が高そうな曲に皆さん、果敢に挑戦してらっしゃいました。
出演者7人ですが、それぞれ個性的に演じて、密度の高い舞台となりました。劇団☆新感線の右近健一さんはいわゆるミュージカル作品に出るのは初めてかな?(いのうえひでのりさん演出の『TOMMY』は出てらしたけど)。右近さんでしかありえない、ある種の胡散臭さが、愛の美しさと対照的で、達者なtekkanさんと共に良いアクセントになっていた気がします。

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