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2008/03/24

森光子さんの「放浪記」

シアタークリエオープニングシリーズ第2弾、森光子さん主演の「放浪記」。3ヶ月公演も終盤のこの時期に見てきました。「放浪記」初見です。

“森光子さんの「放浪記」”というタイトルにしましたが、まさにそういう表現にふさわしい舞台です。

自分自身をさらけ出し表現しつくさなくては生きていけないという作家・林芙美子の業(「自分のゴミ箱をぶちまけて人に見せているような」というのは劇中の台詞ですが)を余すところなく演じていて、見ていて胸が痛くなるほど。でも、そのストレートな生き方はかわいらしくもあり、悲しくもあり、胸に迫ってきます。

カフェの女給をやっている芙美子の、明日からどう生きていいのかわからないほど切実なお金のなさ。この切迫したリアリティは、ちょっと今の時代の役者さんでは表現できないだろうな、と思いました。

劇中に、作者の菊田一夫本人の役が出てきますが、この作品には戦前から戦後の時代を生きてきたリアルな感覚を非常に感じます。時代が生んだ戯曲、ということも言えるかもしれません。森さんはそのリアルさを見事に体現しています。

時に恋人を取り合い、芙美子に裏切られたりしながらも、でも心のどこかで友情を持ち続ける女性の役を黒柳徹子さん。この役の終幕の本当にラストの台詞が今を耳にこだまします。
成功した、という高揚感で終わらないところが、菊田一夫らしい鋭い視線なのかもしれません。また、そこまでしても表現し続けなければいけない作家(そして、もしかしたら、演じ続けなければいけない役者)というものの究極の姿なのかもしれません。

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