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2007/12/05

『アドルフに告ぐ』上演記念トークイベント&製作発表

昨日12月4日、Studio Lifeの『アドルフに告ぐ』上演記念トークイベントと製作発表会にお邪魔してきました。
以下、感想などを交えつつ。

初めは「手塚治虫イズムを受け継ぐ者として」として、漫画家の萩尾望都先生と浦沢直樹先生、演出家の倉田淳さんの鼎談。

萩尾先生は和柄のチャイナドレスという素敵なお召し物で登場。浦沢先生はちょっとハード系な男前な雰囲気が漂う方でした。
印象に残ったところを書くと。
浦沢先生が子供の頃手塚先生の作品を読んで、縁側でずっとぼーっとしてしまうくらい衝撃を受けたとか。萩尾先生も同じような衝撃を受けて、漫画で描けないものはない、自分もこういうものが描きたいと思い漫画家を目指すようになったそうです。
浦沢先生、萩尾先生とも、手塚先生の作品で惹かれるところとして、人間の根源的な生きる意味を描いていることを挙げ、
萩尾先生「手塚先生以前は、善と悪はきっちり別れていたけれども、手塚先生は人間が善悪どちらも持っている存在であることを描いた。『アドルフに告ぐ』でも、小さい頃はユダヤ人の友達をかばうような良い子だったアドルフ・カウフマンが、次第にベストでないものを選択してしまう。でも、カウフマンもユダヤ人のカミルのように温かい家庭に育っていたら、カミルのような大人になっていたかもしれない。アドルフ・ヒトラーも…と思ったら、3人のアドルフが運命が違ったらそれぞれが違う3人であったかもしれないと思えて。そういう意味を込めての『アドルフに告ぐ』なんだなと思った」
浦沢先生「人間は心の中にモンスターを抱えているのかもしれない。凶暴性すらも人間性なのかと思わされてしまう」
というような話をされてました。
(→これって、『トーマの心臓』の心の中の良い種、悪い種の話につながりますね)

そこで、倉田さんが小さい頃読んだ手塚先生の短編で「収容所に入れられているユダヤ人が、毎日夜に聞こえてくるピアノの音に心癒されていた。ある日、そのピアノの演奏している人が誰かを密かに見に行ったら、それは昼間は自分たちを虐待している将校だった。人間というのはなんていうものなんだろうと、ユダヤ人はわななく…」という話を読んでとても衝撃を受けたという話を。そのへんの原体験が「死の泉」「パサジェルカ」につながっていったのかなと思いました。

「『アドルフに告ぐ』は週刊誌連載だったから、とてもタイトに描かれている作品。その行間の部分が舞台に表現できたらいいですね」という浦沢先生の期待の言葉。

萩尾先生「手塚先生はずっと一番力がいるカブラペンを使ってらした」
浦沢先生「下敷きにはアサヒグラフをいつも使ってたそうですよ」
とマニアなことをご存知のところもちょっと微笑ましかったりする鼎談でした。

(余談ですが、浦沢先生って高根研一さんと似てらっしゃるなと…心ひそかに思ってたんですけど(笑))

続いて製作発表。
の前に、鼎談用のテーブル椅子を片付けるのはLifeのフレッシュの人たち。そして、出演者24人が自分たちが使う椅子と足元台を自分たちで持って登場したのですが、フレッシュの人たちの飲み物とか椅子とかを片付けるタイミングやら、役者さんたちが椅子を持って登場するタイミングが見事にビシッと揃っててビックリしました。このへんも倉田さんの美意識の表れなのでしょうか。

司会は曽世海司さん。
主宰の河内喜一朗さんのご挨拶(僕たち団塊の世代の者にとっては手塚先生は長嶋さん、王さんと同じようなヒーローだった、その方の作品ができる喜びがある)、手塚治虫プロダクションよりのメッセージ(昨年『リボンの騎士』は女性だけで演じられて好評を博したが、今度は男性だけの劇団で)。に続いて、役者さんからのご挨拶。

山本芳樹さん(アドルフ・カウフマン役)…この役を演じきることで成長できるように。まだまだ大変なことがあるが、劇団員全員一丸になって乗り越えられない壁はないと思っている。
小野健太郎さん(アドルフ・カミル役)…手塚先生の大ファンで、手塚漫画で育った。タイトに描かれている作品の行間を埋めていくか、漫画で描かれてない部分を生身の人間がライブで描いていきたい。
荒木健太朗さん(アドルフ・カウフマン役)…ヒトラーの「我が闘争」を読んでみて、共感できる点は少ないが、当時のドイツ人はどうしたら幸せになれるか、ということを心から思ってこの作品に手を伸ばしたんだなと思う。お客様にも平和の素晴らしさを感じてもらえたらいなと思うし、良い年末が迎えられたらいいなと思います。(←という話の結論になったので、後ろに並ぶ劇団員の方々がウケてらした…(笑)。ちょっとほのぼのした雰囲気に)
松本慎也さん(アドルフ・カミル役)…ナチスの迫害についての資料を見て、もし僕も家族が迫害を受けたらそれを甘んじて受けることはできないなと思い、カミルに共感した。でも、それぞれの正義があるから、戦争が起きるのかもしれないし、根が深い問題だなと思います。
甲斐政彦さん(アドルフ・ヒトラー役)…20世紀最大の悪人。正直言って人として愛せない人物だが、役者としてはとてもやりがいがある役。悪が彼の中では正義だった、というふうに演じたい。
曽世海司さん(峠草平役)…劇中の人物でもあり、狂言回しの部分もある役。一人の人物が幅広いスタンスで臨むのが自分にとっては挑戦。この作品で手塚先生が峠に込めていたものを大事に演じたい。

そして、最後が倉田淳さんのご挨拶。
「壮大なドラマに目の前に高い山ができている感じ。
カウフマンというナチス幹部の子供である少年が、時代の中で翻弄されながらどのように成長していったか、どのように挫折のときを迎えていったかということを主軸に据えて話を進めていく。そして、アドルフ・カウフマンと友情を結んでいた、ユダヤ人のアドルフ・カミル。二人の運命を動かしていくもう一人のアドルフであるヒトラー。アドルフたちのつながりを横糸に、ヒトラーの出生の秘密にまつわる文書をめぐるサスペンスを縦糸に織り成していく舞台にしたいと思っています」
という話。さらに
「スタジオライフは男性だけで構成されている劇団で、由季江さん、エリザ、カミルのママなどもすべて彼らが演じます。奇をてらうような女役ではなくて、女性の心理も人間として普遍性があるところまで演じて、その中で細部を構築していく。相手役の言葉とか感情の中で、(関係性で)女性として成立できている。女性たちも活躍していってくれると思います」
という話をされたとき、三上俊さん、吉田隆太さん、篠田仁志さんなど女性役の劇団員の方々の表情が引き締まるのが伺えました(←と書いたのですが、配役変更になって、カミルのママは篠田さんから関戸博一さんに変更になったようです 12月17日追記)。
「皆で模索しながら、一つ一つを追体験させていただく中で感じることが、『アドルフに告ぐ』をやらせていただくことの一番の意味かと思う」

最後はフォトセッション。「ヒトラーの甲斐さん、顔が怖いので笑顔でお願いします」などと担当の方に言われつつ(笑)終了しました。
『アドルフに告ぐ』 公演は12月20日~30日。銀河劇場にて。

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