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2007/10/23

倉田淳さんの原点を見た『WHITE』

Studio Life新人公演『WHITE』、新井薬師のウェストエンドスタジオにて見てきました(21日)。ダブルキャストのため、マチソワ2回連続の強行観劇(笑)。…腰に来ます(爆)。

実は私はStudio Lifeを見てる歴は結構長くて、一番最初に見たのが『Yasha ga pond』(夜叉が池)でした。泉鏡花の『夜叉が池』の場所をアジアに移し、心が通じない村人たちの会話が現地語になって聞き取れない…というなかなか面白い設定のものでした。それ以降、アジア物の『スラマッド・バギ・バンドン』『タイガーバーム・フィーバー』(←今確認できる資料が10年前の『トーマの心臓』初演以降の公演タイトルしかなくて、タイトル不正確です)など拝見しています。

『WHITE』の初演年は私が最初に見た『Yasha ga pond』より前らしいです(…パンフレットに書いてある、藤原啓児さんの初演当時の話によると)。「今、ライフが公演している舞台の内容とは違って、若者のパッションで駆け抜けるような舞台」というような前評判だったのですが、今回拝見してみて、非常に現在の倉田淳さんの作風に通じる、ある意味倉田さんの原点がそのまま残ってるような作品だなあ、との思いを強く持ちました。
(現在、スタジオライフで上演してるのは海外脚本作品か原作物の舞台化なので、まったくオリジナルの倉田作品を見られたという意味でも貴重だったかと)

学校が舞台。授業で立たされていた3人組の男の子たちがマドンナを追いかけて図書室に行くと、そこには周りに対して心を閉ざしていた三角くんがいた。しかし、図書棚からたまたま取り出した魔法の書「WHITE」をきっかけに時空が飛んで、「走れメロス」「森は生きている」「星の王子さま」の世界などに紛れ込んでしまう……というところが大まかなお話。
この時空が飛んで別の世界と現実がないまぜになっていくところ(←往年の夢の遊眠社とか劇団3○○ふう)、冒頭で体育教師が不良少女を怒るところのどんどん話が飛躍してまくしたてていくところ(←つかこうへいふう?)などは、まさに「ザ・80年代演劇」だなあ~というノスタルジックな感じの世界です。

ただ、そういう枠組みを超えて訴えかけてくるのは、話の構造が見えてくる後半になってから。時空が飛び、実際の本の世界とは違うように話がねじれていくのは、実はそれはすべて三角君の頭の中の世界だったから。
自分の殻に閉じこもり、なんとかそれを抜け出したいともがき苦しむ内面の揺れは今も倉田さんが舞台で描き続けているものです。そして、その解決の糸口を実際に他の3人組とかマドンナと触れ合うことでなく、物語世界の中で見つけるというのも非常に象徴的なことだなと。
(実は1回目に見たときに、「ラストの三角君はなんで人が変わってるんだろ? これって三角君の脳内で実際の出来事じゃないんでしょ?」と思って混乱しちゃったのですが(笑)、2回目見て、物語世界にワープしてるのは脳内じゃなくて三角君的には実体験なのだなということに気づきました。このあたりも非常に興味深い)


この作品の中にはバオバブという悪の化身のような存在(それは桜子先生という女性の姿を借りているが、男女両方の姿で現れる)と、マドンナという清らかな魂の象徴のような存在が出てきます。見ていくうちにこの二つの存在が、三角君の内面にどちらも持っているものであることを感じるのですが、これってまさしく、『トーマの心臓』で言うところの「自分の心の中の良い種と悪い種」ですよね。
そして、バオバブが「お前は俺の言うことだけを信じて、従っていればいいんだ!」というようなことを言う台詞。(『トーマの心臓』の中の「悪い種」の象徴的存在である)サイフリートがユーリに向かって言うのとまったく同じニュアンスの台詞であることに驚きました。
この『WHITE』という作品はライフが『トーマの心臓』をやるずっと前に書かれてる作品で、おそらくそのころは倉田さんは『トーマ』を読んでいたわけではないと推察します(『トーマ』は初演の前に人に勧められて読んだという話を聞いてますので)。とすると、倉田さんは『トーマ』と出会うべくして出会っていたのだなあ、ということにも気づいて、『トーマの心臓』マニアな私としてはなかなか感慨深いものがありました。

もちろん、若者たちがパッションで突っ走る前半部分も(新人公演という性質上)大事ですけれど、ラストの切なく叙情的に心情に訴えかけるところがライフ的には真骨頂な気がします。それをてらいなく思い切り良く(って適切な表現かどうかわかりませんが)表現しようとするから、「『WHITE』に出て初めてライフの一員になれる」といわれるのかな、などと思いました。

役者さんで印象に残った方を挙げるとすれば、透明感のある佇まいの中に男女両性を行き来できるような不思議な存在感をたたえた三上俊さん。バオバブ役で突然現れて私を驚かせた船戸慎士さん(配役表に載ってなかったのですもの(^^;ゞ。私が見た回と翌日の1回だけ出演されてたらしい)。バオバブ役が持っているべきアンドロギュヌス性とはちょっと違ったところですが、迫力ある舞台姿と力強さは非常にインパクトがありました。用務員&ハクションの荒木健太朗さんは、突然非現実のものが舞台に出現するという、その非現実感を十分に表現して、観客を物語世界に引っ張り込める力技がありました。劇中にオノヨーコの『グレープフルーツ・ジュース』の一節を読むくだりがあるのですが、それを聞いてるときの表情が好きでした。
3人組のリーダー正ちゃん、ダブルキャストの政宗さんと仲原裕之さんはそれぞれ違うキャラでいながら、新人たちを引っ張っていこうとするパワーがあって、劇団の先輩後輩という関係性がうまく芝居に反映してたなあと思います。新人の皆さんたちはまさにこれがスタートラインですが、毎回これだけの観客を前にこの回数演じられるという幸せを大事にして、これからも頑張っていってほしいなと思います。

(※ちょっと余談。今オノヨーコさんの『グレープフルーツ・ジュース』の本のことをネットで調べたのですが、この本のラストに書いてあることって、この芝居の結末部分と被ってるところがあるみたいですね。倉田さん自身この本にインスパイアされてる部分が大分あるのかな? まだ、『グレープフルーツ~』を読んでないのでその内容には触れませんが、この本ちょっと読んでみたくなった。文庫で出てるみたいです←さらに追記。『グレープフルーツ・ジュース』日本版が出たのは1993年らしい。ということは、『WHITE』の初演より後ですかね。『WHITE』の世界に合うから、いつかの再演のタイミングで『グレープフルーツ・ジュース』を取り上げたのかなあ)

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コメント

新米ライファーさま。はじめまして。コメントありがとうございます。
WHITEは熱いパッションがないと成立しない作品なんでしょうね。その中に倉田さんらしい叙情的な部分が見えるところが魅力的な作品なのではないかと思います。

船戸さんのバオバブは見られてよかったですよね! 突然出ていらしたのには驚きましたけれど(笑)。バオバブは今の若手の方でも「いつかやりたい」とおっしゃってたのを伺ったので、役者心を刺激するところがある役者なのでしょうね。
最近あまり更新してなくて申し訳ないですが(汗)よかったら、また遊びにいらして下さいね。

投稿: おおはら | 2007/11/19 18:48

初めまして。私は今回初めて「WHITE]を観ました。私自身は今40代ですが、いわゆる80年代の小劇場ブームの時は古典芸能系にどっぷり浸っていたので全く観劇していませんでした。「WHITE」という作品の中には、演技、アクション、ダンス、歌、パントマイムといった演劇上での技術面で一通り必要とされる要素が含まれていますが、20代ならではのエネルギーがないと絶対に作品として成立しない演目だと思いました。でもその目指すところ、主張するところは大原様のおっしゃるとおり劇団の代表作と同じものだと思いました。その事実を確認できたことでも大変有意義でしたが、もちろん船戸様のお美しい桜子先生を拝見できたのは大収穫でした。確か昔の会報で笠原様がバオバブをやりたいと言っていらしたような記憶がありますが、(お待ちしています!)先輩たちにとっても忘れがたい作品なのでしょうね。ぜひまた観劇記を書いてくださいませ。ではごめんください。

投稿: 新米ライファー | 2007/11/16 20:58

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