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2007/09/08

Studio Life『決闘』

のっけから私事で恐縮だが、私は(前にもどこかに書いたけど)基本的にロー・テンションな人である。喜怒哀楽の表現が少ないというか、激情にかられて…とかいうことがあんまりないタイプ。逆に言うと、自分と正反対の、ある衝動に突き動かされているような人に対してどこか畏敬の念を持っていて、自分が芝居を見るのはそういう人と出会ってみたいからということも理由の一つなのかもしれない。

なんていうことを思ったりしたのは、スタジオライフ『決闘』でそういう衝動を感じる人と出合ったから。
(池袋・東京芸術劇場 小ホール1 公演は9月18日まで)
カナダ人作家ジョン・ラザラス&ジョア・ラザラス共著(執筆当時はご夫婦だったが、その後離婚してるそう)の本邦初上演『決闘』はフェンシングをしているときだけに生きる実感を感じている、高校生の男の子、ジョエルとエリックの物語。
周りを傷つけないでいられないほどに、どんどん研ぎ澄まされていくジョエル。そして、ジョエルに対して憧れの気持ちを抱きながら、また同時に恐れ不安な気持ちを持つエリックの関係が描かれている。

※14日に再度拝見したので、最後のほうにちょっと追記しました。

(書いてたら長くなってしまったので、折りたたみます)

昨日(7日)拝見したのはダブルキャストのうちFleuretチームで、荒木健太朗さんのジョエルには魂のほとばしりがあった。特に1幕の最後の同級生スケリーと剣で勝負をする場面。次第に気持ちが高揚し、タガが外れていく様子は狂気のようなものを感じさせて圧巻。激しいフェンシングシーンと共に、感情が立ち上っていくところに圧倒される。もう一つのSabreチームのジョエル、関戸博一さんの場合は、2幕初めのフェンシング部の顧問ソープ先生(藤原啓児さん)との激しいやりとりのところで、お互いの会話からだんだんにジョエルが変化していく様子が見てとれた。このあたりもお二人の役に対するアプローチの違いが感じられて面白いところ。

荒木さんは本当に爆発的なパワーを持ってる人だなあと思う。まだご自分ではそれを制御しきれてない感じも見受けられるけれど、それもこの役にはとてもプラスに作用してる気がする。関戸さんはストイックに役と見詰め合ったのだな、というのを感じさせる舞台。いつもながらの丁寧な役作りには好感が持てるが(今はゲネでしか拝見できてなくてこういうふうに書いていて申し訳ないが)関戸さんならきっともっと爆発できるんじゃないか……という期待もある。(←※14日に再見したので、文末に追記しました)

実際に舞台で見て感じたのだが、「ジョエルが突っ走っていって、エリックが翻弄されている関係」とは違うような気がする。女学生ルィーズとの関係や、ジョエルが研ぎ澄まされていく過程など、いろんなことの媒介になっているのは実はエリックで、エリックが引っ張っている部分が多い話なのではないかと思った。

……という話を、終演後にちょっとお話しする機会があった松本慎也さんに申し上げたら「?(あまり同意得られず)」という感じだったので、解釈としては間違ってるのかもしれない(汗)。ただまあ、私個人としての印象としては、松本さんのエリックに強い引力を感じたので。ジョエルが太陽としたらエリックが月、でも、その月の持っている引力が強いという感じ(…余計わかりにくい例えに…)。それは松本さんが本来持っている非常に芯が強い部分が役柄に反映しているのかな。でも、エリックにそういう力があるからこそ、ジョエルも増幅してああいうふうに研ぎ澄まされていってしまったのでは、という説得力も感じるのだけれど。特に、ジョエルとの最後の場面、松本さんのエリックの、本当にラストで見せた表情・演技には心動かされた。対して、三上俊さんのエリックは相当にナイーブで繊細。本当に触れたら壊れそうな危うさがあったと思う。

ジョエルとエリックの組み合わせやアプローチもチームによってまったく違うのも面白いところで、それぞれの役者たちが組み立てる関係性で芝居ができているのだろうな、と感じさせる。ただ、両チームとも感じたのは、二人の間にある危うい感情の動きがもうちょっと明確に見えてきたら、さらに深い作品になるのではないか、ということ。
でも、フェンシングをする肉体を通しての感情の交換は、(上にも書いた)ロー・テンション人間の私にも心の芯を揺さぶられるものがあった。劇中のソープ先生の言葉を借りれば「大人になるというのは折り合いがつけられるようになるということ」。既にいろんなことに折り合いをつけてしまった大人になっちゃってるらしい私には、この舞台で描かれている「激情」を見て、久しぶりにナマの感情に出会った気がしたのだった。

で、ちょっと余談。私はこの1年で5回松本さんに取材させていただいていて、私にとってはこの1年で一番取材回数が多い方が松本さんなのだ(何しろ、私がファンクラブの会報を担当させていただいている方でも、季刊で年4回取材なので、その方より松本さんのが多い)。という話を松本さんにしてお互いに驚き合ってみた(笑)。1年に5回舞台に出てて、しかもそれが全部主役っていう方はなかなかいらっしゃらないと思う。でも、それに奢らず、自分自身の芯を曲げずに、まっすぐに芝居に向かってらっしゃる方だなあと、お話させていただくと改めて感動する。


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14日に再見したので、ちょっと追記。
できたら各チームもう1度拝見できたらなと思ったのだけれど、Fチームは券が取れず14日のSチームのみ再見してきました。(前回Sチームを見たのはゲネだったので、やっと本番が拝見できたというか)
関戸さんのジョエルは、なんというか、可哀想な子だった。もしかしたらもっと他の生き方ができたかもしれないのに、どんどん自分の言葉で追い詰められていってしまうような。
荒木さんのような爆発するパワーはないけれども、ご自分の個性とか、ダブルキャストでやっている人の演技とかを見た上で、どうやってこの戯曲と自分なりに誠実に対峙していこうとするか。そういう役者としてのあり方も提示していたジョエルだったように思う。

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コメント

>らんまるさま
この間はご一緒できて楽しかったです(^^)。
「孤児のミューズたち」は普遍性がある戯曲でライフ以外でも見てみたいなと思ったのですが、「決闘」は、他にできる劇団がなかなか思い当たらないような作品でしたね。そういう意味では、倉田さんの海外戯曲に対する慧眼を感じます。

若さゆえの衝動や、心のゆらめきを繊細に描き出してくれて、私にとっても心に残る作品になりました。

投稿: kaoru(おおはら) | 2007/09/15 12:05

こんにちは!先日はお世話になりました

「決闘」は少人数制の舞台という点では「孤児のミューズたち」と同じですが、登場人物が大人ばかりだった「孤児ミュ」と比べて、4/5を「高校生」が占める非常に若々しい作品でしたね。汗を滴らせながらの大熱演に引き込まれ、大いに心を揺さぶられました。

耽美的な香りがする点では、非常にStudio Life が演るに相応しいと思いました。「ジアザーライフ」がシニアな劇団員様向けの講演なら、「決闘」のようなジュニア向けの公演パターンが出来ても面白いかも知れませんね。

ジュニア7の皆さんの「舞台人」としての著しい成長っぷりを拝見できて、とても嬉しかったです。アクロバティックなフェンシングで怪我をならさず、膨大な台詞でお声を潰さないまま、無事に千穐楽を迎えられますようにと、心から祈っています。

投稿: らんまる | 2007/09/14 11:39

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