力がこもったミュージカル~扉座「ドリル魂」
扉座は新しい鉱脈を見つけたのではないか。
と思わせるような、日本のオリジナルミュージカルが生まれた。
扉座「ドリル魂」。
客席は工事現場見学会に行っているという設定。(前方2列は、舞台に合わせてヘルメットを被ったり防塵マスクをつけたりする)
工事現場で起きる様々な人間模様や事件が描かれる群像劇の中で「何かを作ろう」とする人間の力を信じたくなるような芝居。
以前、ロンドンで「Billy Elliot the musical(リトルダンサー)」を見たとき、むくつけき炭鉱の男たちが踊ってるのを見て「こういうのが違和感できるのって、イギリス人ならではだよなあ~」と思ったのだけれど、こういう文脈なら日本人の工事現場の人たちも全然違和感なく歌ったり踊ったりできるということは、自分にとっては発見だった。
違和感がなかったのは、芝居の高揚感と歌と踊りがしっかりマッチしているから。
空中パフォーマンスまで、芝居の中できっちりマッチさせているのは、初めて見ました。
初めは工事道具をつかった「Stomp」みたいな感じ? と思ったのだけれど、芝居の中にその工事道具と、歌とダンスがきっちり融和していることに驚いた。
扉座のベテラン、中原三千代さんも頭の上まで脚を上げてラインダンスしたり、タップを踊っていたのに、喝采(^_^)。
一つ惜しいなあと思うのが、宣伝文句で。「芝居でも、ミュージカルでも、サーカスでもない、本邦初の建築劇」というチラシの文句では何が行われるのか、検討がつかない(今回、いわゆる扉座のメインキャストの方々が出ないこともあり、「見るのパスしようか…」と一瞬思ったことを告白する)。
公演パンフレットを見ると、作・演出の横内謙介さんが「私がイメージする本物のミュージカルへのリスペクト故」(ミュージカルと名乗らなかった)とのことだが、これはもう、日本のオリジナルミュージカルの中の水準をはるかに越えてると思いますよ。
(やっぱり、芝居の部分がきっちりしているから、魅かれるものがあるんでしょうね)
「扉座初のミュージカル!」と素直に銘打ったほうが、いわゆるミュージカルのお客様にも見ていただいて、評価もより得られたと思うので、もったいない気がしてなりません…。
ともあれ、素直にお勧めできる公演だと思います。ミュージカル好きな方にもぜひ。
紀伊国屋ホール、4月30日まで。
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