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2006/12/18

Studio Life「銀のキス」

Studio Lifeの「銀のキス」、7日初日と15日でダブルキャスト両チームを拝見してきました。
共に孤独な魂を抱える少女ゾーイと吸血鬼サイモンの話。
話の根底にあるものは「人は一人では生きていけない」というような思いで。以前に「トーマの心臓」のことを書いたときに、トーマが「人はなぜ一人では生きていけないようなものに、神様はおつくりになったの?」とお父さんに聞いた話を引用しましたが、今回の『銀のキス』も突き詰めれば、そういうことなんじゃないかなと思います。倉田淳さんが「人の孤独と、そして生きるということ」ということをテーマとしているからスタジオライフの舞台で繰り返し取り上げているのだろうし、お客さんはそれがあるからライフの舞台に心魅かれてるのじゃないかな、と思います。

「話したい、死について」とはとてもシンプルで奥が深い台詞ですね。

ゾーイの孤独の原因には、死が近づいているガン患者のお母さんの存在というのがあるのですが、このお母さんを演じた林勇輔さんが素晴らしかった。自分の命が限りあることを自覚しているけれども、それでもゾーイと夫を愛し、思いを託していく……。ラスト近くのゾーイとお母さんの場面はとても感動的でした。
人間は吸血鬼のように肉体の永遠性は持たないけれども、思いを託すことによって命は永遠のものになっていくのだなあと。光の中に溶けていく吸血鬼サイモンの思いもゾーイは受け継いでいく。舟見和利さんのゾーイは松本慎也さんよりはちょっと大人っぽい印象だったせいもあるかもしれませんが、ラスト近くサイモンを抱きしめるシーンでなぜか母性的なものも感じました。ちょっと不思議だけど、そういうのももしかしたらあるかも。

休憩挟んで二部ですが、内容的には、現代の話の真ん中にサイモンが吸血鬼になった300年前の話があって、概ね3部構成のような印象です。
サイモンは山本芳樹さんと曽世海児さん、非常に対照的な作りでそれぞれに吸血鬼の孤独を見せてくれたのが興味深かったです。山本さんはダンスを取り入れた動きで吸血鬼の変化を表していたし、曽世さんは長い回想場面で、台詞を的確に操る見事な表現力で聞かせてくれました。

サイモンと兄弟のクリストファーを初の大役で演じた荒木健太朗さんが個性を感じさせる演技で目を引きました。子供の振りをしているときと吸血鬼の本性を表すときの差がすごい。というのはいい意味で役者の狂気がある人なんでないかと。でも、その根底にあるサイモンを求める気持ちの切なさもよく伝わってきました。

サイモンとゾーイは公園で出会うという設定なのですが、舞台にシルバーのポールがいくつかランダムに並んで、それがどこか針葉樹を思わせるセットになって、シンプルだけどいろいろな見せ方ができるものになっていてなかなか良かったです。

終演後に下井顕太郎さんとちょっとご挨拶させていただきました(舞台は拝見してますが、話をするのは初めて)。先日取材で稽古場をお邪魔させていただいて「役者さんがスタッフワークをしてるから、芝居を演じてる役者さんだけでなく、小道具や装置を動かすことまで含めて、全てが芝居になってることに驚いた」というような話をしてたのですが、そこから、「今回初めて小道具担当になって、回想シーンに出てくる絵の額を僕が作ったんですけど、チームごとに絵を張り替えてるんですよ。でも、油絵ふうに加工した絵をそのまま貼り替えると、絵の周縁部が反り返っちゃって額縁にはまってるように見えない。から、その周縁部をおさえる縁を作って、額の内側部分を更にそれで上から押さえるようにしたんです……」という話を伺って、ビックリしました。確かに両チームでキャストが違うから、肖像画の絵も違うものになるわけだけど、そこまでやってるとは。客席からは分からないかもしれないけど(私も見た後に聞いたので、実物は見てない…)、でもその肖像画を目にする人の演技にも影響することもあるだろうし、一つ一つ本当にこだわって作ってるんだなあ……という、その丁寧な芝居つくりの一端を見た気がしました。そういう小道具作りも劇団の先輩から受け継いでいってるわけで、劇団であることの良さというか、これもまた「思いを受け継ぐ」ことなのかもしれません。

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