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2006/09/09

新解釈の『夏の夜の夢』~内容・ラストに触れてます

前の記事で公開稽古に伺った旨を書きましたが、Studio Lifeの『夏の夜の夢』開幕初日と翌日のゲネ(ダブルキャスト初日)を拝見してきました。

とても楽しい舞台でした。弾ける舞台でありながら、最後にすーっと一点に集約した美しさが出せるのはスタジオライフ演出の倉田淳さんの手腕かと思います。恋人たち4人のダイナミックさはやはり男性が演じるものならでは、ですね(^^)。(ドレスを着ていながらもアクションがすごい(笑)、お怪我がありませんように……)
「シェイクスピアの言語のリズムの楽しさを、歌に変えて」…と公開稽古でおっしゃっていたとおり、歌が入ることで楽しさ倍増です。妖精たちが歌う眠り歌が頭をついて離れないんですけど……(笑)。

一番瞠目させられたのは、アマゾンの女王ヒポリタの造形です。
(前半だけ見た公開稽古のところでも書いたのですが)
今まで何本か見た『夏夢』の中では、ヒポリタと大公シーシアスとの婚礼については「既定のもの」という感じで、あんまり突っ込んだ考察がされてるものを見たことはありませんでした。
シーシアスの「害を加えて手に入れた」という台詞から、征服者である男性と結婚することになる女性である……という解釈(翻訳者の松岡和子さんがそうお考えになったようです)で、ヒポリタは白のドレスに足枷をはめた姿という非常に象徴的なスタイルで出てきます。
ハーミアの父親が「この娘は私のものですから、私の言うとおりにするのが当然」みたいな台詞を言うときの視線などから、父権(男性の権力というか)に屈せられようとするハーミアに対するシンパシーのようなものも感じられます。

征服者たるシーシアスを実は心の底では愛しているヒポリタ。ただ、敵対する国同士の間柄ということもあって、受け入れがたい思いがあり、自ら足枷の鍵を解かないままでいる(←自分で鍵を持っている…ということは、おそらく、足枷をつけられて無理やり連れてこられたのだけれど、ヒポリタを愛したシーシアスが鍵を渡したってことですよね)

恋人同士が元の仲に戻って、3組の結婚式を挙げたあとの余興の芝居を見ている間もその足枷ははめられたまま。
ここからは倉田さんの新演出で、余興のピラマスとシスビーの芝居に「ロミオとジュリエット」の設定が加わります。(クウィンスの最後の台詞も『ロミジュリ』の最後の台詞になってます)
その芝居を見て、「悲しい物語のようにならぬよう…」と、自ら足枷を解き、シーシアスとの愛に生きることをヒポリタは選ぶのです。

すごく意外な新解釈のようにも思えるのですが、パンフレットの倉田さんと松岡さんの対談を見ると、いくつかの台詞でそう解釈できるヒントがあるようです(このパンフの対談、非常に面白い。『じゃじゃ馬ならし』の最後の台詞の解釈についてなどが書いてあって、資料的にも価値があるものだと思います)。

ピラマスの芝居を見ているとき、ヒポリタが「つまらないわ」というとシーシアスが「所詮、芝居は影」というのですね。芝居は影=見ている人を反映しているもの、ということでもあると思う。
既に恋人と一緒になっている2組の恋人同士はピラマスとシスビーの悲恋を見てもそれほどの反応はないけれど、現在自分の恋に悩んでいるヒポリタの胸にはとても響いてくる。という様子がとても対照的に描かれていたし、台詞がないシーンですが、ヒポリタの舟見和利さんはその心理の変化を如実に描き出していました。

舟見さんは独特の佇まいと静かな美しさで、ヒポリタの感情の流れを丁寧に見せてくれて、好演だったと思います。(というか、男性が何故こんなに女性心理が分かるのかー?!(汗)  倉田さんの演出の賜物でしょうか…)
シーシアスの牧島進一さんも、ヒポリタに対する深い愛情と共に、男性の傲慢さのようなものも奥に覗かせていてよかったなと思う。

家に帰ってから『夏夢』の本をめくって確認したのですが(ただし、福田恒存訳版(^^;ゞ)、付け加わっている台詞が意外と少ないことに驚きました。まさに(原作から逸脱したものでなく)「新解釈」なのでしょうね。

2組の恋人同士の話に加えて、ヒポリタとシーシアスの恋にも焦点を当てたことで(あと、もちろん妖精王のオーベロンとティターニアも)、重層的な『夏夢』になっていました。
(それと、殆どの『夏夢』は最後の余興芝居は蛇足みたいになっちゃうことが多いのですが、最後まで集中して見られたのも珍しいです(^^;)

ヒポリタの話が長くなってしまいましたが、これが女性演出家(&女性翻訳家)の目で見た『夏の夜の夢』ということで、とても興味深かったです。

ヘレナって可愛いなあ、とか、魔法に掛かったライサンダーと離れ離れになった後も、ライサンダーの身を心配するハーミアは健気だなあ、とかいろいろ書きたいことがあるのですが、とりあえず最後に。
倉本徹さんのパックがとても素晴らしかった! パックが大騒ぎして走り回る、その後にふっと空気を収束させる技が本当に見事で、掌からふわっと何かが立ち上がるのが見えたような気さえしました。往年の劇団しゅうくりー夢の『ド・ラ・キュ・ラ』のドラキュラ役以来に見た、倉本さんの真骨頂のように思います。

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