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2006/04/27

「私感想」……ナイロン100℃「カラフルメリィでオハヨ」

終幕泣けて仕方がなかったです。周りで泣いてる人なんていなくて恥ずかしかったけど…。

『カラフルメリィでオハヨ』初見です。今度で3回目の再演だそう。前回再演時(97年)のチラシにケラさんが書いている文章を引用すると(ナイロンのホームページより)

「どんな作家にも一生に一本しか書けない“特別な台本”があると思います。劇団健康で「カラフルメリィでオハヨ」を初演したのが88年の8月、会場は下北沢のザ・スズナリでした。台本はもっぱら墨田区にひっそりと建つ、ある病院の一室で書きました。公演数カ月前に余命わずかの宣告を受けた父親につきそいながらの執筆でした」

とのことでした。このチラシで「なんか、私には受け止めきれないかも」という気持ちになって見に行くことはありませんでした。

今回のチケットを取ったときのチラシにはそこまでの説明はなかったのですが、上の文章の大雑把な記憶は残っていて。

舞台は脳梗塞のためにボケが生じている父親(山崎一)の亡くなる前後の家族の様子と、その父親と同一人物である少年?(みのすけ)が入院している病院を抜け出して海に向かう模様とを交互に描いています。
家族が現実で少年の世界が空想かというと必ずしもそうとも言い切れないようで、家族の世界も父親が窓がない病院で囲まれている様子と、家にいる様子と両方描かれているし、その家の中にみのすけ演じる少年が父親の子供としているけれども、その少年の姿は周りの人間たちからは見えてなかったりするし、一筋縄ではいかない感じです。

3時間という長尺の中で、だんだんその二つの世界が重なっていくように感じていくのです。
そして海に向かって目を輝かす少年の姿と、脳梗塞で亡くなろうとしている父親の姿のイメージが重なったとき。

それは(おそらくケラさん自身と重なっているであろう)息子(大倉孝二)が、死を前にした父親がせん妄の中で言っている言葉を、「今、父親はこういう世界を見ているんだな」と空想してるものではないかと思ったら……もう涙が止まりませんでした。
人間の命が止まろうとしているときに、こういう美しいものが見られたらいいなあ、という思いと。
そういうふうに父親のことを思える息子(というか、ケラさん)の優しさと。
そして、最後に、すべての人間は「致命傷」を既に負っている身なんだ、だからこそ、こうやって笑い飛ばして立っていようという自分たちに対する思いと。

いろんな思いが身にしみて、泣けました。

この作品を前回見ていたら自分がどう思ったかは分かりませんが、私の母が亡くなる前の様子に重なるものがあって(母は最後のほうに薬の副作用で何か不思議なものを見てるようなことを言ったりしてたので)……。人の死を受け止めてその後どう生きていくかは人様々だと思いますが、ケラさんの「生き方」は多分私とは全然違うけれど、その「強さ」(と言っていいかどうか)はとても刺激になったし、自分の身を振り返って考えさせられた。
「一生に一度の私戯曲」に対する、「私感想」でした。

大倉孝二さん、男の人の生き方が不器用なところが伝わってきて、とても魅力的でした。峯村リエさんの女性役はいつも変なパワーがあっていいなあ。
客演の小松和重さんは、病院で少年と一緒に脱走する患者の役で、表情が本当に無邪気でしたね。その無邪気さが、サモアリで倉森勝利さんと一緒にやっていたときの表情を思い出させて、それはまた別の意味で(こういう作品であるし)胸に詰まるものもありましたが……。

ナイロンのオープニングの映像はいつもカッコイイですが、今回は白い装置を透けるように見せていて、一瞬本当の人間? と錯覚させるものがあって、現実と空想の間を行ったり来たりしてる舞台の感覚をそのまま映像で見せててすごかったですね。

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» 『カラフルメリィでオハヨ〜いつもの軽い致命傷の朝』 [だから、ここに来た!]
○4月14日(金)・4月29日(土) ケラリーノ・サンドロビッチは、しばらく新作を書かないらしい。 海外の作品の演出(『ヴァージニア・ウルフなんて怖くない』とか)はするけれど、 ナイロンの本公演も再演が続くみたいです。 それで、再演の一弾が『カラフルメリィでオハヨ〜いつもの軽い致命傷の朝』。 これは、作者にとっても観客にとっても、 4回も上演されていることもあって、思い入れ深い作品。 私にとっても、ナイロン作品でも映像で�... [続きを読む]

受信: 2006/05/04 15:19

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